雁木真理子の幸福な生活
元ネタ一覧
雁木真理子 ガンギマリ
手御仲透 テオナナカトル
酒井能美恵 酒呑み
スティーブ・オーウェン STEVE-O
雁木真理子は天蓋カーテン付きのベッドの中でまどろんでいたが、ザ・スターリンの『解剖室』が目覚ましの代わりに鳴ってようよう目を醒ました。飾り窓からは春の陽が差し込んでいる。
雁木真理子。十四歳。
雁木財閥は今や全世界にも名を知らしめる怪物グループである。表向きは多角的な輸出業を営んでいるが、本業は各国首脳陣へ違法薬物をオスプレイで密輸する事だった。雁木真理子はそのご令嬢である。今は未だ中学二年生だが、いずれどこかの企業の社長職に就く事を約束されている。
「ああ、今朝も爽やかな朝ですわ」真理子は窓外の雲一つない澄んだ空を見て呟く。長い睫毛が陽光にきらりと光り頬に影を落とす。ベッドから降り、小箪笥の一番上の引き出しを開き、自家栽培しているストロベリー・クッシュを取り出して高級和紙で巻いてジッポで火をつけて肺腑まで吸い込んだ。ぷはあ。朝の大麻は至高ですわ。アサだけに。普段は爺やが選んだ特注の水煙草で吸う真理子であったが、最近は少しく反抗期の気味もあってか、手ずから巻いた大麻をジッポで火を点けて吸うなどと云う些か野蛮な方法を取るようにもなった。
吸いさしを灰皿へ始末してリヴィングへ行くと既にコックの手御仲透が朝食を用意していた。
「おはようございます、お嬢様」手御仲は慇懃に頭を下げ、「モーニングはマジック・マッシュルームのオムレツとマジック・マッシュルームのポタージュです」
「結構。今朝もありがとうね手御仲」
「光栄でございます」
優雅に朝食をとった後、部屋へ戻り方まで伸ばした髪を梳いて身支度を整えてから防犯ブザーと南京錠が十個ずつ付属している学校鞄を手にし、自分の背丈の倍はある門を開けて家を出た。
四月。今年から名門と名高い聖ガッデム中学校の二年生である。桜並木がいつもりよ輝いて見えるのは新しい季節に期待で胸が膨らんでいるせいか、それとも違法キノコの幻覚かは判然としなかったが、それでも礼節を喪わずシャンとした足取りで学校へ向かう。
後方からじゃらじゃら、という金属音が聞えたので振り向くと酒井能美恵がジム・ビーム700mlを片手にこちらへ手を振っていた。酒井の鞄にはチェーンが大量に巻き付けてあるのでじゃらじゃらと音が鳴り、それで彼女だと判るのだった。
「あら、酒井さんも今朝は早いのね」
「ええ、丸二日ほど寝てしまったから今朝は早く起きてしまったわ」そう云いながらジム・ビームを喇叭飲みする。「くっ、はあ。朝から呑む安酒もなかなか悪くないですわね」
「でも体調管理には気を配らないといけません事よ?」
「そうなの、この頃は少し体重が増えたような気がいたしますわ。マンチかしら」
他愛のない会話を交わしていると学校に到着した。キリスト教系の学校ゆえ校門前には十字架へ磔刑にされたイエス像が等身大サイズで鎮座しており、定時に巡視官が松坂牛から採取した血を像の頭からぶっ掛けるのである。
「本日からコノ教室の担任にナリマシタ、スティーブ・オーウェンです。ヨロシクお願いしマス」
担任の挨拶と生徒一人一人の自己紹介を終えると、スティーブ氏は




