17話 魔術大祭④ レイドバトル
召喚術は基本的に自分が使役できるレベルの魔獣を召喚する。
だが自分が使役できるレベルまでしか召喚できないわけではない。
そして召喚された魔獣は、召喚者が死のうが、倒されるまで消えることがない。
『い、いったい何が起こった!?砂煙りで何も見えません』
『先ほどサヴィさんが行った詠唱、風を司る竜、つまり召喚されたのは•••••』
キエエェェェェェェェェェエ!!!!!
フィールドを超え、観客席中に大きな奇声が鳴り響く。
砂煙りが晴れて、魔獣はその姿を現した。
『ド、ドラゴンです!サヴィ選手が召喚したのは竜種です!』
竜種
元は大昔に実在した竜種が絶滅し、残った概念が魔獣となった。
その外見はフィクションなどに出てくるドラゴンそのもので、大きな翼を持ったトカゲのような姿をしている。
『ただいま確認が取れました。召喚された竜種によってフィールドにいた全ての選手が脱落です!』
『魔力量から考えるに、あの竜種は低級、レベルは8です』
低級レベル8は、基準とされる一年生のレベルでは勝つことが出来ない。
一年生の平均レベルで倒せる魔獣は低級レベル5だと言われている。
『さあ、竜種にやられたことで、またもや選手総入れ替えです』
Aクラスより、トリスタン。
Bクラスより、水守天守。
Cクラスより、影縫美代。
Dクラスより、音鳴もみじ。
「さあ相手は竜種です。A、B、Dクラスの皆さん、頑張ってくださいね」
美代は開始早々それだけ言って姿を消した。
影縫家は、暗殺を得意とする影狗家の分家の当たる。
その家では代々、影属性を得意とする魔術師が多く生まれる。
暗殺をするにあたって最初に覚える魔術が、影の中に潜り込む魔術、“影潜行”。
「シャドウダイヴ、影の中に逃げましたか」
Cクラスの作戦はシンプル。
1と2番手の選手はなるべく敵を削り、3番手のサヴィがドラゴンを召喚し、敵を殲滅する。
その間、美代が影に潜むことで全員脱落するのを待つ、完璧なプランである。
「これは、骨が折れそうですね。•••••協力するのも一つの手ですか」
トリスタンは考えた。この状況が続けば、確実にCクラスが勝利し、終了する。
「ということで、BとDクラスのお二人、我々は協力すべきだと思うのですが、いかがでしょう」
「異論はないわ」
「•••••私も、ありません」
普通は、協力しようが、竜種には勝てない。だが、この状況ではこれが最善だ。
「よろしい。では、レイドバトルと行きましょう」
『おーっと、ここでまさかの展開だ!召喚された竜種を相手にA、B、Dクラスが協力することに!』
『基準とされる一年生の実力では、レベル8には勝てないとされていますが、今年の生徒は出来がいい。もしかしたら、もしかするかもしれませんね』
「まずはあの翼をどうにかしましょう。風属性の竜種は羽で風を操るので。皆さんは、何が出来ますか?」
「私は———」
その瞬間、竜種はとてつもない魔力を口元へ貯め始める。
その魔力は圧縮され、とてつもない光を放つ。
「———!?まずい。皆さん伏せ———」
刹那、圧縮された魔力が大砲の如く放たれる。
その規模は避けることを許さず、大きな魔力に防御もままならない。
対処する術は無く、全員が———。
「水属性魔術、“水鏡”!」
魔力砲が当たる瞬間、目の前に水の盾が出現する。
その盾に阻まれ、魔力砲は全員を撃ち抜く事なく止まってしまった。
「全員大丈夫?なんとか間に合ったね」
「なるほど、水鏡ですか」
水鏡。水属性魔術の中級魔術で、特に中•遠距離からの攻撃を光の反射の如く、跳ね返す。
天守の水鏡は、竜種の魔力砲すらも、跳ね返した。
「すごい。これなら勝てるかも!」
「あの攻撃を相殺できるとは実に素晴らしい。勝つ見込みが出てきました」
「あ〜、期待させといてあれなんだけど、多分跳ね返せるのはあと4回ってとこ。それにあの風の斬撃は水鏡じゃ防げないから」
水鏡は中•遠距離攻撃に強いが、風魔術の斬撃には弱い。盾は盾でも水製なため、斬撃はすり抜けてしまう。
「なるほど、ではやはり最初は翼を落とすことが必要ですね。と、話してる暇は無さそうですね」
竜は、翼は羽ばたかせる。
辺りは強風が吹き出す。その風はだんだんと竜の翼に集まっていき、鋭く、荒れ狂う。
その風は刃となって、フィールド中に飛ばされた。
「切り裂け、“フェイルノート”!」
トリスタンは、いつのまにか矢を5本持ち、その全てを一度に撃った。
その矢は飛んでくる風の刃を切り裂いた。
「私は王より円卓の騎士トリスタンの名を授かった。それの恩恵は、このフェイルノート。必中、無駄のない弓。そこに私の魔術、呪言で矢に命令することで、必中必殺の弓矢の完成です」
呪言は、基本的には生物にしか効かない。だがトリスタンは、その名を授かったとき、矢にのみ呪言をかける事が出来るようになった。
先ほどの“切り裂け”という呪言により、その矢は吹き荒れる風を切り裂いた。
「対人戦では最強を自負できるんですが、竜種が相手となると攻撃力が少し劣ってしまう。仕留めるまでは出来ませんが、ダメージは与えられます」
「私は雷属性が得意です。でも、やっぱり竜種となると•••••。あ、でももしかしたら効くかもしれないのが一つだけ」
雷属性魔術、“エレクトロ”。雷属性の中級魔術で、かなりの攻撃力を誇る。
もみじが撃てる最大威力の攻撃魔術。
「エレクトロですか。確かに、それなら奴にもダメージを与えられるでしょう。で、何発撃てますか?」
「えっと、4発です」
「4発ですか、十分。では、防御は水守さん、補助と攻撃は私が、そして主攻撃は音鳴さんに。さあ、レイドバトルの開始です!」




