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1.転生は唐突に

  水宮春はどこにでもいるごく普通の26歳のOLである。

いや、この場合はだったの方が正しいかも知れない。

なぜなら彼女はもうこの世の人間では無いからである。


 

 春は真っ暗な世界で目が覚め、そして先ほどまでの事を思い出した。

確かいつも通う図書館からの帰り道で、トラックに轢かれた。そして今いる場所から推察にするに自分は確実に死んでいる。

 「マジかよ」春はそうポツリと呟き、その場所から立った。

このままでもいいが、それでは何も変わらないと判断したからである。



 「にしても、死んだら確か天国か地獄に行くんだよな。まあ流石に地獄に行くことは無いと思うけど……」

そう呟きながら彼女は暗闇の中を進む。

右も左も全く分からない状況だが、彼女は前へとただ進んでいた。

 ある程度歩き続けたとき、彼女はようやく一筋の光を見つけた。

光を見つけた瞬間、彼女は思いっきり駆けだし、そしてその中に飛び込んだ。



 光の中は先ほどと違って白一色だった。

死後の世界って一色だけなのかと春はどこか感心しながらまた歩いて行こうとする。

すると急に声をかけられた。



 「水宮春さんですね」

 「そう……ですけど……」

唐突に現れた謎の女性に驚きを隠せない春。

そんな春を安心させるかの様に女性は続けた。

 「あ、そんなに恐がらなくていいですよ。私、悪い人では無いので」

 「はぁ……」

いや、どう考えても怪しすぎるでしょ、と心の中でツッコミながら春は返事した。

女性は春にお構いなしに話を続ける。



 「水宮春さん。恐らく自覚してるとは思いますが、アナタは死にました」

 「……やっぱり?」

 「はい。私生と死を司る女神ですもの。その位知ってますよ」

 「改めて言われるとショックだな…」

 「で、春さん。アナタ転生に興味ありませんか?」

 いきなり宗教勧誘の様に言って来た女神に驚きが隠せない春。

驚いたままの春に女神は続けた。



 「水宮春さん。本来ならアナタはあと50年は生きられる命でした。しかし、こちらの不都合でどうやら死んでしまった様です。そこでお詫びとして記憶持ったまま転生できますよ」

 「……ホントにラノベの世界みたいな事ってあり得るんだな…」

 「ここも十二分にラノベですけどね」

 「言うんじゃないよ」

 「さらに今ならアナタの好きな願いを叶えることが出来るんですよ!」

 「ええ!? じゃあ、何も気にせず本が読みたいです!」

その言葉に春は飛びついた。



 水宮春はごく普通のOLでだった。職場は客観的に見てもかなりホワイトだったし、人間関係とかでも悩むことは無かった。

 しかし、たった一つだけごく普通とは言えないところがあったのだ。



 それは自他共に認める「読書マニア」である。物心ついたときから本に触れ、暇さえあれば読書という筋金入りの読書好きだ。

 温厚で優しいと言われる春だが、読書をすると人が変わり、邪魔をする者がいるなら誰に対しても容赦が無いのだ。

そのためその事をよく知ってる人間は春と積極的に関わろうとはしないのだった。



 「何も気にせず読書ですか……」

 「はい。睡眠毎日三食の食事、時々起こる人付き合いの中のめんどくさい出来事全部抜きにしてとにかく読書に集中したいんです」

 「……分かりました」

先ほどとは違い、春に押され気味になる女神だが、何とか進めようとした。



 「では……なりたい種族とかありますか?」

 「魔女に興味があります。魔法を使ってみたいし、魔導書とかも読んでみたいんです」

 「容姿とかのご希望はありますか? 私個人の意見としたらアナタはかなり可愛い方に入りますが……」

 「小顔でシミとか毛穴とか気にせず、髪は水色のボブカット、体型は少女体系でお願いしますが、足や指はスラリと長い感じでお願いします」

 「ずいぶんと細かいな、オイ」

少々悪態をつきながら女神は転生の手続きを進めた。

 「……分かりました。それでは老いや飢え、病気にならない魔女、容姿は先ほどの条件、そして読書に集中できる世界に転生でよろしいですね?」

 「はい!」

 「分かりました。それでは新たな人生を」

女神は春にそう言い、新たな世界に転送した。


 春が次に目覚めたのは穏やかな草原だった。

「そうか~私ホントに転生したんだ。ってイケナイ! 私図書館探さないと! よ~し、悠々自適に読書ライフよ!」

そういき込んで、彼女は前に進み出した。

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