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海人!!  作者: 矢枝真稀
22/33

−−− 鳳翔祭後編!!「悔」

「玲・・・」

「更科くん・・・」

「「更科さん・・・」」

「あ、だ、大丈夫だから!!」



四人が不安げな顔を俺に向ける。心中悟られまいと、わざと明るく振る舞うが、琉依さんは、それを見逃さなかった。



「玲、何かあったな」

「・・・後で、話します」



それ以上は、言うつもりなどなかった。察して、琉依さんも何も聞かなかった。今は少しだけ、麻希の事を忘れよう・・・今は、ステージに集まっているお客さんに向かって、精一杯の笑顔を、見せる為に−−−。




『では、今年度女装コンテスト、栄えあるグランプリの発表です!!』



ステージ中央から五人、真ん中でポーズをとりながら、人込みに紛れた麻希の幻影を、探していた・・・。



『栄えあるグランプリは−−−』







→→→→→→→→→→→→







[麻希ちゃん−−]



「もしもし・・・?」

『鷹峰さん?麻希です・・・』



電話の先に、更科の幼なじみの、震える声・・・。



「どうか、したのか?」

『さっき、玲に告白しました・・・』

「えっ!?」



震える声はそのままに、彼女の発した言葉は、私の心を締め付ける・・・。



『フラレちゃった・・・ハハッ』

「・・・」

『玲には、好きな人がいる』

「・・・え?」

『私が言えるのは、それだけ・・・です』



ブツッ・・・ツー、ツー・・・



「あ、オイッ・・・!!」



電話は、切れていた・・・。彼女の震える声が、最後は・・・掠れていたように聞こえた。



「そうか、フラレ、たのか・・・」



見えざる不安が、私を包む。



「会長?」

「あ、ああ・・・なんでもない」



副会長に声をかけられ、私は現実に引き戻される。ステージ中央でポーズをキメていた更科の笑顔が、ぎこちない・・・無理して笑っている。そんな感じだ。



更科の決断・・・これでよかったのだろうか!?恋愛などした事の無い私には、わからない・・・。







不安ばかりが、付きまとう−−−。







→→→→→→→→→→→→







ステージで合流した更科さんに、心からの笑顔は無かった。明らかに、無理矢理造った笑顔・・・。



「鮎華?」

「えっあ、何?」

「ぼんやりしてたわよ」

「・・・ちょっと、ね」



沙夜姉には、見透かされてるだろう・・・私の心中を。田舎育ちの私は、都会に憧れ、垢抜けた更科さんに、惹かれた。強引に引き留めた私に嫌な顔一つしなかった更科さん・・・出会った時の柔らかい笑顔が忘れられなくて、ここまで来て−−−。



好きですって一言を、コンテストが終わった後に、言うつもりだった・・・。



けど−−−。










私の知らない過去・・・。明るく振る舞おうと、無理してる更科さんが・・・とても痛々しい。きっと、さっきの麻希さんと、何かあったんだ・・・。

そう考えたら、出来ないよ・・・。









告白なんて−−−。







→→→→→→→→→→→→







「・・・しな」




・・・・・・・・・




「・・・らしな」




・・・・・・




「更科っ!!」




・・・え?




「更科っ!!早く前に出らんか!」

「えっ、あ!」



会長の怒声で、慌てて前に進み出る・・・。



「頭を下げろ」

「あ、はい・・・」



いまいち状況が飲み込めないまま、言われたように頭を下げた。



「おめでとう!!更科玲・・・」

「は!?」



頭の上に、少し重い“何か”・・・。



『本年度女装コンテスト、グランプリに輝いた更科玲さんに、大きな拍手を!!』


なっ−−−!!



『では、グランプリに輝いた更科さんに、今の感想を一言伺いたいと思います!!』

「えっ、あの・・・」



マイクを向けられ、言葉に詰まる・・・周りを見回すと、会場はおろかステージに立つ全ての人が、俺の言葉を待っていた。そこで、ようやく自分の置かれた立場を確認した。




俺、グランプリ獲ったんだ・・・。



『更科さん?』

「あ、あぁすいません。正直、まだ実感が湧かないっていうか・・・」

『みたいですね〜!でも、すごいんですよ、会場内の得票数の約八割が、更科さんだったんです!!』

「なんて言えばいいんですかね・・・複雑です」




会場が、静寂から笑いに変わる・・・。一通りの質問を終え、暖かい拍手を背に受けて、俺はステージを降りた。この間だけ、少し心が晴れていたような・・・そんな錯覚に襲われたんだ。






まだ、心には麻希の存在が残っている。アイツの想いに気付いてやれず、俺は何をやっていたんだろう・・・。















心が、痛んだ・・・。

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