−−− 鳳翔祭最終日!!後編「億劫」
喫茶店に入った私は、玲の視界とは死角になる玲達の席の斜め後ろに座る。そこから玲を観察する事にした。
「いらっしゃいませ!あら、麻希ちゃん!!それに優ちゃんも!!」
「え?あ、九条先輩!」
懐かしい顔が、ウェイトレス姿で私達を迎えてくれた。
「更科くんも来てるわよ、呼びましょうか?」
「あ、い、いえ!大丈夫です!!」
鋭いのか鈍いのか、ほんとに九条先輩はわからない人・・・。私はアイスコーヒー、優はミルクティーを注文し、視線を玲へと向ける。
「ははぁ・・・」
「え、な、何?」
「麻希が急に喫茶店に行こうなんて言うから、何かと思えば・・・更科くんの事ね」
「う・・・」
さすがにばれたか。で、でも気になるんだもん!!
「更科くんの隣に座ってる女の子、あれって絶対更科くんに気があるわね」
「な、なんでわかるの!?」
「気がないならあんなに近づかないでしょ!」
た、確かに・・・。なんかすごい距離が近い。ち、ちょっと、離れなさいよ!!
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「ねぇ、なんかすごい見られてるわよ。更科くん」
「え?・・・あ!」
振り返った先には、すっごい形相をした麻希がいた。そういえば、鮎華・・・ちょっと近い。あ、麻希が視線を逸らした。なんなんだ、あいつ?
「麻希?どうした?」
「あ、あ〜ら玲!偶然ねぇ!?」
声をかけると、あからさまに不自然な態度。しかも俺じゃなくて、隣・対面に座る女性(海凪三姉妹と琉依さん)ばっかり見ている。
「お、なんだ。玲の元カノさんじゃないか」
「「「えっ!?」」」
琉依さんの言葉に、全員が凍りついた・・・。あ、あんた!みんなの前で何言ってるんだー!!!!
「あ、る、琉依さん!?玲の従姉妹の・・・」
そういや、琉依さんと麻希って、何度か面識あったっけ。それにしても・・・
「ち、ちょっと琉依さん!いきなり変な事言わないで下さいよ!!」
「事実を言ったまでだが」
「そりゃ事実ですけど、少しは周りの事も気にして下さい!!」
「周り・・・?」
そうだ。周りをよく見て見よう・・・客席は全部で30弱。その席の大半はお客さんで埋まっている。そのお客さんのほとんどが、さっきの琉依さんの爆弾発言で、こっちに視線を向けていた。
「あ、あ・・・」
「お、オイ!麻希!?」
すごい勢いで飛び出して行った麻希。気が付けば、俺の足も彼女を追いかけていた。
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綺麗な、人だった・・・。更科さんの、元彼女。確か、麻希さん・・・だっけ。そっかぁやっぱり、彼女いたんだ。元カノって言っても、あの瞳・・・まだ、更科さんの事が、好きなんだ。
「鮎姉?」
「鮎華?」
「あ、ご、ごめん・・・何?」
ぼーっとしてた私に、心配そうに声をかける沙夜梨姉と鮎美。慌てて大丈夫って言ったけど、本当は、心臓が爆発しそうなくらい、ドキドキしてる・・・嫌な意味で。
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「麻希っ!!」
人目も気にせず、俺は麻希の腕を掴んだ。抵抗は、しなかった・・・。
「ごめん、琉依さんも悪気があって言った訳じゃないんだ」
「・・・玲は」
「どう・・・した?」
泣いていた・・・こいつの涙を見るのは、まだ二回目。いつも笑顔で、涙なんか見せない麻希。そんな印象があったから、俺は動揺した。
「玲、まだ・・・私の事、好き?」
「それは・・・」
言葉に、詰まった・・・。即答出来ない俺に、追い打ちをかける麻希の言葉。
「私は、今でも玲が好きだから・・・」
「・・・」
掴んだ手を、俺は離していた・・・。未練があるなら、その手を、離す事はなかったのに・・・。
「それが、答えなんだ・・・」
「・・・ごめん」
「謝んないで!一度手を離したのは、私だから・・・」
涙は、頬を伝い・・・地面に落ちる。その涙を拭い、麻希は−−−
「なっ!?」
「これが最後の我が儘だから」
不意打ちの、キスだった−−−。
「もう、帰るねっ!!」
「麻希・・・」
「辛気臭い顔しないでよ!これからはホントの親友だからさ!!」
引き留める事なんて出来ない・・・。無理矢理造った笑顔。
「(ごめん・・・)」
振り返る事無く、麻希は足早に人ゴミの中へと掻き消された。見えなくなってもなお、俺は麻希の姿を目で追っていた。右手にはまだ、麻希の腕の温かさ・・・唇には、彼女の柔らかい感覚が、残っていた・・・。
『審査結果が出ますので、コンテストに出場された方は、ステージへとお集まりくださ〜い!!』
一度受けた、心の傷。もう、癒えたとばかり思ってた。麻希が離した俺の手を、今度は自分で、離した。後悔していない・・・なんて言えば嘘になるだろう。浮かぬ気持ちで、ステージへと向かう。司会者の甲高い声・・・それすらも、今は耳障りに感じていた。




