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海人!!  作者: 矢枝真稀
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−−− 鳳翔祭最終日!!後編:「不安」

歓声が一度静寂に包まれ、私はポツリ・・・言葉を漏らす。



「綺麗・・・」



女の私ですら、息を呑む程に・・・玲の姿は美しかった。元々中性的な顔立ちで、肩幅もそんなに広くはない。小さい頃は、よく女の子に間違えられてたっけ?



「更科くん、本当の女性みたい!」

「あぁ、あいつが本当に女だったら、完璧惚れたかも・・・」



感嘆の言葉を漏らす、優と水城くん。それほどまでに、玲の姿は綺麗・・・。



「あ・・・」



ステージ中央まで足を進めた玲と、目が合う。何か吹っ切れたような玲の表情は、柔らかくて、ウィンクされて、私も小さく手を振った。ほんの数秒間が、とても長く感じる・・・。




→→→→→→→→→→→→




「化けたか・・・」



特別席に座った私の前で、優雅と気品を併せ持ったような女性・・・いや、男性か。更科、完全に吹っ切れたな・・・。たきつけたのは私だが、まさかここまで・・・。



「しかし・・・な」



会場内は喧騒を忘れ、ただ更科の姿に息を呑む・・・。

これは本当に、優勝するかもしれない。

優勝しろと言ったのは私だが・・・これは少し、私の計画が狂ってしまう。

罰を考えていたのは、少しでも更科の側に居たいという私の我が儘。会場の誰一人として、私の意図を知る者はいない。もし、更科が優勝出来なかったら、彼には一日私の仕事の手伝いをやってもらうつもり。会長室という場所を利用して、二人っきりで過ごす・・・そこで、告白。彼なら、もし断られるとしても、彼は無下に避けたりしないだろう。




今は、彼の・・・いや、彼女の容姿をその瞳に収め、ただ、審査結果を待つだけだ。







→→→→→→→→→→→→







さて、ふむ・・・玲め、完全に女になったか、しかし・・・



「男にしておくのが勿体ないな」

「そうね」



隣で賛同する沙夜梨は、頷きながら微笑む。ドレスアップした姿は当時と変わらず綺麗だ。高校時代、引っ切りなしに告白されてたのも頷けるわね。まぁ、私も例外なく告白されてたけどな。



「しかし、沙夜梨も玲のような男が好きなのか?」

「う〜ん、どうかしらねぇ。まぁうちの妹はそうかもしれないけどね」

「次女のほうか?」

「フフッ、鋭いわねぇ」



悪戯な笑みを浮かべ、視線を彼女の妹達に向ける。あどけない姿の残る三女(鮎美)と大人らしさを身につけた次女(鮎華)。特に次女は化けたな。何と言うか・・・



「玲に惚れたみたいだな」

「あら、やっぱりわかるかしら。本人は気付いてないみたいだけど」



やはり・・・な。



「それにしても、琉依にあんな素敵な従兄弟がいたなんてねぇ」

「ふむ、自慢の従兄弟だ」


目を細め、モニター越しに従兄弟を見る。アンコールに応え、再度ステージに上がる玲は、照れ臭そうに頬を淡く紅潮させていた。






→→→→→→→→→→→→







「あ〜終わった!!」



女装コンテスト決勝戦を終えた私・・・あ、違う!俺っ!!危ねぇ、自分を見失うとこだった!!



「お、お疲れ様!!」

「お、おぉ・・・」



控室を出てすぐに、声をかけて来たのは鮎華だった。突然と自分の気持ちが交錯して、思わず吃ってしまう。



「更科さん、本当に綺麗ですよ!!」

「鮎華こそ、マジで惚れそうなくらい綺麗だよ」



半分本気、半分冗談に言った言葉は、鮎華の頬を真っ赤に染めた。ついでに言った本人も、恥ずかしさで頬が真っ赤になっていくのを感じている。



「更科さんも、今はチャイナ姿だけど、すっごいカッコイイです!!」



そう、チャイナ姿なのだ。

初日、和服。

二日目、欧米風ストレートファッション。

最終日、チャイナ・・・。

和・洋・中のこのスタイル!!どうよ!?・・・って俺のメイクやらセットをしてくれた執行部の安久津さん(女性)が言ったけど、あんたの感性がどうよ!?おかげで紅いロングチャイナ服に合わせる為に、強制的に腕と足の毛を全部剃りやがって!!(超強力ガムテープ使用)あ、もちろんチャイナ服にはスリットが入ってました。



「アハハ、ありがと!」

「更科さん、まだ時間もあるみたいだから、みんなで近くの喫茶店みたいな所行きません?」


冗談とも本気とも思える鮎華の言葉に、俺は愛想よく笑った。審査結果が出るまでしばらく時間がある。結果が出るまでは着替える事が出来ないので、チャイナ姿のまま、俺・鮎華・鮎美・沙夜梨さん・琉依さんの5人で、九条さんがウェイトレスをやっている喫茶店プレハブへと向かう。




→→→→→→→→→→→→







ん、あれって玲だよね。それから隣で歩いてるのって、さっき特別コンテストに出てた女の子だ。後ろの女の子達(年上?)も、コンテストに出てた人だ。しかも美人ばっかり!!!なんか玲、すっごい楽しそう・・・。ま、まさか!?



「ゆ、優。喫茶店行かない!?ね、行こうっ!!」

「ど、どうしたの麻希!?」


嫌な予感がする・・・。玲の楽しそうな顔を見た時、私は不安になった。












私は一度、自ら玲の手を離した。離れてみて、彼への想いを認識した。私はまだ、玲の事が好き・・・。

けど・・・。













その彼の手を、誰かにもっていかれる気がしたんだ。













不安が、私を包みこんだ。

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