10.5 西園寺博臣
西園寺博臣視点です。
俺の妹、小百合は学校に入学するすこしまえから、あの熱を出した日から変わった。
俺は西園寺家の跡取りとして厳しく育てられた。それに比べ小百合は甘やかされて育った。夕ご飯に用意されたものが気に入らないと言ったり、この前欲しいと言った服を買えば今はあっちが欲しいと言ったり我儘放題。その上、甘えん坊でどうしようもない妹だった。
お手伝いさんから幼稚園の様子を聞いたことがある。小百合は絵を描いていたらしいが、ぬいぐるみ遊びをしている子を見て自分もしたくなったらしい。他にもぬいぐるみはあったらしいが、その子のをどうしても欲しくなったらしく、力づくで奪ったのだそうだ。女の子を大泣きさせたらしい。しかし、小百合は賢いから絶対に人に手をあげたりはしないから、直接的には問題にならない。言葉で脅して奪うそうだ。それが一度や二度ではなくしょっちゅうで、同年代のこと遊ぶことはなく、孤立していると…
俺は妹を甘やかしすぎたのかもしれない。仕事命の両親からあまりかまってもらえない分、俺が一緒にいて我儘を聞いてしまっていたから。このままではまずい…
俺は小百合と距離をとることを決意した。
涙を流しながら倒れている小百合を見たときは驚いた。まさか、嫌われていると思っていたなんて…悪いことをしてしまった。
『お兄様、小百合は…いい子になるから…いい子になるから…』
それから小百合は我儘を言わなくなった。初めは信じられなくてそんなに高くない熱だったのに頭がおかしくなったのかと心配したがそういうわけではなかったらしい。
学校に、入り小百合も櫻凛会に入会した。櫻凛会での小百合は人との間に壁を作っているように見え、心配していた。クラスではうまくやっていけているのだろうか…
夕食の時間になり、小百合を呼びに行った。
寝ているのか…
小百合は机に突っ伏して寝ていた。えっ…机の上には帝王学についての本。パラパラとめくればところどころマーカーでアンダーラインが引かれている。小百合はまだ7歳こんな難しいのが読めるのか?それに、小学生がなぜ帝王学…
「小百合、小百合。」
そっと体をゆすった。小百合は目を覚ます。寝起きでぼーっとした様子で目をこすっている。学校では大人っぽく見えるがこういった様子からはまだ幼く年相応に見える。
「小百合、おまえこんな難しい本わかるのか?」
「…えっと。」
小百合は固まっている。俺に本のことを聞かれるとは思っていなかったのかな。こんな難しそうな本を読もうと思うほど悩んでいることがあるのだろうか。
「なんか、心配事あるのか?俺でよかったら聞くよ。」
しばらく、言おうかどうしようか迷っているみたいだったが小百合はしゃべりだした。
「…えっとね。私…リーダーシップ性が足りないのかなと思って…人間関係を円滑にする方法わかるかなって…」
えっと…人とコミュニケーションとるのに帝王学はいらないと思うぞ!おまえ、何目指してるんだ。小百合、真面目な顔で何言ってるんだ?やばい…笑いそう。必死に耐えたが小百合は拗ねてしまったみたいだ。頬を膨らませそっぽを向いている。
「ごめん、ごめん。小百合、人と仲良くするのに帝王学はいらないと思うぞ。」
俺は小百合の頭をポンポンと撫でた。こうするといつも機嫌を直す。
「じゃあどうすればいいんですの。」
俺から見て小百合に決定的に足りないのは…
「んー、もうちょっと歩み寄ってみたらいいんじゃないのかな。小百合は櫻凛会で見た感じだと人との間に壁作っちゃってるみたいに見えるから。あとはね、相手に優しく。思いやりを持って、ね。」
小百合は難しそうな顔をして考え込んでいる。小百合、これは普通のことだぞ…
「ありがとうございます、お兄様。小百合、ガンバリマス。」
おい…大丈夫か。笑顔がひきつってるよ。
「小百合、表情こわばってるよ。そうそう、夕食の時間だよ。ちょっと遅くなっちゃったね。お父様とお母様が待ってるから行こう。」
俺は小百合に手を差し出し、一緒に食堂へ向かった。向かってる途中、すごい真面目に的はずれなことを言っていた小百合の姿を思い出し笑いがこみ上げてきた。
小百合、友達たくさんできるといいな。がんばれよ。




