第22話
「アーシェントレギオン、勢ぞろいね……。すごい人数」
「スモーキーズはまだ姿を見せていないようだけど……」
クーデリカを案じ、危険を承知で現場を訪れた二人――ルナとフェリスは、瓦礫の陰に身を潜めて状況を見守っていた。
その視線の先では、約束の時間になっても現れないスモーキーズを待ち構えている数十人が殺気立っている。
「クーちゃんいる?どんな様子?」
「遠くからだと分かりづらいけど……たぶん、ミランダさんの隣にいるのがそうだと思う」
「どうするんだろ?やっぱり裏切っちゃうのかな……?」
「あの話を聞く限り、本心で裏切るとは思えない。……かといって、ガウちゃんを見殺しにもできないだろうし」
二人の間に重苦しい沈黙が流れる。それを振り払うように、フェリスが声を潜めて毒づいた。
「こんな時に我らがリューネはなにしてるの!ルナ、連絡あった? 」
「クーちゃんの話を聞いて、ガウちゃんを探しに行くって言ったきり音沙汰なしだよ」
「あれから丸二日だよ?ずっと探し回ってるってこと?」
「決闘の時間と場所は、あの時クーちゃんから聞いてたから、ガウちゃんを見つけていればここに来るはずなんだけど……」
「……まだ来てないってことは、見つからなかったのかな」
「そうなると、クーちゃんやっぱり……」
「悪いことを考えるのはよそう。今は、リューネを信じるしかないよ」
暗い会話を交わす二人の視界に、ついに粗暴な集団が現れた。
「しっ! スモーキーズが来たよ! 見つからないようにしないと」
フェリスが一段と身をかがめ、注意を促した。
「いや~、すまんすまん。遅れてしもうたわ。かんにんやで」
数十人の荒くれ者を従え、悠然と現れたジェディー。遅れたことに悪びれもせず、ミランダ率いるアーシェントレギオンの面々と対峙した。
「ふん。怖気づいて逃げ出したかと思っていたぞ。お前たちの寿命を少しでも延ばしたかったか?」
ミランダは不遜な謝罪を冷たくあしらい、挑発で返す。
「いや~、あの“三極”の一角と殺りあうんや。いろいろ作戦考えなあかんかったからなぁ~」
「ほう……。どうやらうちの学園以外のやつも混じってるみたいだが、その作戦とやらは外から仲間をかき集めるということか?雑魚が何人集まろうと所詮は烏合の衆だ」
「いや~。気づいたんか~。さすがやね。レギオンのボスは威勢だけでなく目も良いみたいや」
「まあ、作戦は一つやないけどな。まあ楽しみにしといてえや」
のらりくらりとかわすジェディーの口元が、不気味に吊り上がる。
「その作戦とやらを使う前に倒れるなよ。楽しみが減る」
舌戦が繰り広げられる中、ジェディーはわざとらしく白旗を上げるような仕草を見せた。
「まあええわ。口喧嘩はあんたの勝ちにしといたる。……それより、負けたほうは勝ったほうの傘下に入る。もしくは解散。それで間違いあらへんな?」
「……」
「後で『聞いてへんかった』はなしやで。まあ、天下のレギオンさんが、そんなぬるい真似はせんやろうけどな」
「お前たちこそ、約束は守れよ」
睨み合い、数秒の静寂……。両者が陣営に戻ろうと背を向けようとした、その瞬間――。
「――ほな、やろかぁっ!!」
言い切ると同時に、ジェディーが不意打ちの拳を放つ。
しかし、ミランダはその一撃を予期していたかのように、流麗な動きで氷の壁を展開し、正面から受け止めた。
「やるやん。今のを防ぐとは、なかなかやるやんか」
「お前の薄汚い考えなど、すべてお見通しだ」
二人はお互いの陣営まで飛び下がり、改めて攻撃態勢を整える。そして、自らが率いる夜会のメンバーたちに向けて檄を飛ばした。
「ええかお前ら! こいつら倒して成り上がりや! 全員、やってまえ――っ!!」
「アーシェントレギオン! 我らの力を見せつけろ!!」
両陣営から地鳴りのような怒号が響き渡り、狂犬たちが一斉に駆け出す。
トップ同士の応酬を皮切りに、学園を揺るがす一大決闘の火蓋が切って落とされた。




