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限界オタク聖女が敵の拗らせゾンビ男子を溺愛してみたら  作者: フオツグ
限界オタクと推しとメインキャラと。

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限界オタクが妹聖女の罪を咎めてみたら

「……フゥー……」


 リブラは深くため息をついた後、言った。


「ヒナ様は、その実姉の貯蓄していた金を盗んだようですが?」

「……え?」


──ヒナが……私のお金を盗んだ!?

 イオリはバッと、ヒナに目を向けた。

 ヒナは目の端を吊り上げ、叫ぶ。


「ちょっと! 言いがかりはよしてよ! 証拠もないのに、聖女の私を責めるなんて、そんなことして良いと思ってんの!?」


 まあまあ、と騎士団長レオがヒナを宥める。


「金を盗んだとは穏やかじゃないな、リブラ殿。根拠もなく言ってる訳じゃないよな?」

「勿論です」


 レオの言葉に、リブラは頷いた。

 リブラはイオリに顔を向ける。


「イオリ様、貴女は謹慎中、ヴァルゴに、イオリ様の部屋の引き出しに入っている、貯金箱を持ってくるように頼みましたね」

「は、はい! ポーションを作って売って、貯めていたお金です」

「残念ながら、イオリ様の貯金箱は現在見つかっておりません」

「え!? 見つかってない……!?」


 イオリがヴァルゴを見ると、ヴァルゴは無言で頷く。

 事実だ、ということだろう。


「私じゃないわ! そこのゾンビが盗んだんでしょ! お姉ちゃんを攫うときに!」


 ヒナはヒステリックに叫ぶ。


「実際、お姉ちゃんの部屋は《《荒らされてた》》んだし!」

「部屋が……荒らされてた……!?」


 イオリは驚きの声を上げた。

──何それ、初耳なんだけど!?


「どうかされましたか? イオリ様」

「あ、あの! 私は窓際でノヴァく──そこのゾンビの子に攫われたので、部屋の中を荒らす必要も、時間もなかったです! ね、ノヴァくん」

「あ、ああ……」


 ノヴァは困惑したような顔で頷く。


「嘘よ、嘘! 二人は口裏を合わせてるのよ! まさか、魔物とお姉ちゃんの話を信じるつもり!?」


 ヒナは尚も食い下がった。

 リブラは「フゥー」と息をつき、眼鏡の位置を正す。


「ヒナ様──何故、イオリ様の部屋が荒らされていることを知っているのですか?」

「……へ?」


 ヒナはぽかん、と口を開けた。


「イオリ様が攫われたことはヒナ様にお伝えしましたが、部屋が荒らされていることは伝えていないはずです。ヒナ様に余計な不安を与えないように、とそれを知る者達に箝口令を敷きましたから」

「だ、誰かから聞いたのよ! ジェミニ、ポルックス……そう! レオ団長とか!」

「ほう? 一体、誰でしょう。私の判断に背いた者は。説教をしなくてはなりませんね……」


 リブラはちらりと双子に目を向ける。


「ぼ、僕じゃないです!」

「僕も違います! 部屋が荒らされてたのも今初めて知りましたし……」


 ジェミニとポルックスが首を横に振って否定する。

 リブラはじっと二人を見つめる。

 二人は手を掴み合い、震え上がった。

 リブラは二人の顔を見て、頷いた。


「信じましょう。では、レオ騎士団長?」


 レオは首を横に振った。


「俺じゃない。俺はリブラ殿の判断は正しいと思った」


 同じ聖女、それも、実の姉が攫われたのだ。

 ヒナの心中は穏やかではないだろう。

 攫われた現場に、姉と魔物が争ったような形跡があると知ったら……。

 次は自分の番だと思い、混乱するだろう。


「自分で言うのも何だが、俺は口が硬い方なんだ」

「そうでしょうね。レオ騎士団長は冷静に物事を考えられるお方だ」

「姉聖女様が誘拐された直後から、姉聖女様の部屋は施錠している。部屋が荒らされていることは、一部の【星の守護者】しか知らないはずだ」


 レオが言うのは、一部の【星の守護者】とは以下の三名だという。

 姉聖女が部屋にいないことを報告した、第一発見者のリブラ。

 姉聖女の部屋を捜査した騎士団長・レオ。

 二人に意見を求められたシュタインボック。

 三人は、イオリが誘拐されたことをヒナに伝え、部屋が荒らされていたことは口外しないことを決めた。


「じゃあ、ヒナが知ることが出来たのは……」


──犯人ということ。

 皆、その考えに至ったのだろう。

 しん、と会議室の中が静まり返る。


「そ、そんな……。ヒナ、まさかそこまで……?」


 イオリは信じられない、という目でヒナの顔を見る。


「嘘よ! 嘘よ、嘘よ!」


 ヒナは甲高い声で叫びながら、イオリを睨みつける。


「貯金なんて嘘なんでしょ! そんなもの最初からなかったのよ! お姉ちゃんは昔からそう! 自分に都合の良い嘘をつくの!」

「そ、そうだ。ヒナ様が盗みを働くなんてあり得ない! 貯金なんて初めからしてなかったか、ゾンビか他の誰かが盗んだんだろう」


 ベリエがヒナを庇う。

 リブラはベリエに尋ねた。


「では、部屋が荒らされたことを知っていたのは?」

「何処からか漏れたんだろう。誰かがお前達の話を聞いていて、それをヒナ様に伝えたとか。リブラ殿の説教が怖くて、名乗り出られないのだ」


【蠍座の守護者】スコルピオンは嘲笑う。


「ま、筋は通ってんなァ」


 元盗賊のスコルピオンに擁護されたことに、ベリエは複雑そうな顔をした。


「お前はやけに姉聖女の肩を持つな?【天秤座の守護者】リブラ。お前は平等のはずじゃなかったのか?」

「正しい者には誠実に、間違いを犯した者には間違いを正す。当然のことです」


 リブラは淡々とした口調で言う。


「間違い……間違いか」


 ベリエは顔を片手で覆い、ふ、ふ、と肩で笑う。


「だったら、姉聖女はどうなんだ?」


 ベリエはイオリを指差した。


「どう、とは?」

「姉聖女は元いた世界でも、ヒナ様に嫌がらせをしていた。それはお前の言う〝間違い〟ではないのか?」


 リブラは「フゥー」とため息をついた。


「……私は数日、イオリ様を注意深く観察していました」


──そうなの!?

 イオリは驚いた。

 確かにここ数日、リブラはコーヒーブレイクをしに家に戻って来ていた。

 しかしそれは、自分ではなく、ノヴァに会いに来ていると思っていた。


「イオリ様がヒナ様に嫌がらせをしていた、という話は、事実と異なると考えています」

「ヒナ様が嘘をついていると言いたいのか」


 ベリエが眉根を寄せて言う。

 リブラは平然とした顔で言った。


「そうではありません。ヒナ様は非常に危なっかしい方です。姉であるイオリ様が、ヒナ様を注意したくなるのも頷けます。私も頻繁にヒナ様へお説教をしますから」


 ヒナはリブラから、気まずそうに顔を逸らす。


「ヒナ様には、イオリ様の真意がわからないのでしょう。ただ、叱られたという印象だけが残り、嫌がらせをされたと思ってしまったのでしょう」


 リブラは声のトーンを下げる。


「何故、叱られたのか、その理由を考えずに」


 ベリエは黙り込む。


「ベリエ様こそ、何故ヒナ様の言い分ばかりを信じるのですか? イオリ様の声にも、耳を傾けるべきでは」


 ベリエは下を向いて、低い声で言った。


「……お前達は知らないんだろう。見知らぬ土地にいきなり連れてこられ、不安で泣いていたヒナ様のことを」

「ヒナ様が夜な夜な泣いていたことは、報告を受けています」

「なら、何故! ヒナの話を信じない!?」


 ベリエは拳でテーブルを叩く。


「私は誓ったのだ。私はヒナの力になると。私はヒナの味方だと! 私はこの国の王子だ。この世界に来たばかりで、後ろ盾のないヒナを、支えることが出来る」

「ベリエ様……」

「ヒナは、姉聖女が怖くて仕方ないという! 魔物に傾倒した姉が、いつ自分に牙を向くか……! 姉は、魔王側のスパイで、自分を攫いに戻ってきたのではないかと怯えている!」


 ベリエはバッと顔を上げた。


「姉聖女は追い出すべきだ! 皆もそう思うだろう!?」


 ベリエは他の【星の守護者】に意見を求めた。


「まあ、あり得ない話ではないね。姉聖女ちゃんは魔物に洗脳されていて、王国を内側から壊していくつもりなのかも……」


【射手座の守護者】サジタリウスが冗談めかして言う。

「そうだろう!」とベリエは大きく頷いた。


「では、ゾンビを王国に侵入させるのは、向こうの作戦だったということですかぁ……!? 大変ですぅ! 国を壊される前に、ゾンビを追い出さないといけませぇん……!」


【魚座の守護者】ポワソンが慌て始める。

 ほら、と言うように、ベリエはリブラを見て笑った。

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