表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
限界オタク聖女が敵の拗らせゾンビ男子を溺愛してみたら  作者: フオツグ
限界オタクと推しとメインキャラと。
39/84

限界オタクが【星の守護者】会議に出席してみたら

【星の守護者】会議当日。

 イオリ、ノヴァ、リブラの三人は、【星の守護者】達の住まう寮──【明星寮】に来ていた。

 明星寮は【星の守護者】のための住処である。

 メインストーリーでは、聖女降臨祭の後に案内される場所だ。

 他に住居のある【星の守護者】達も入寮することとなる。

【星の守護者】会議が行われるのは、明星寮にある会議室である。

 明星寮の廊下を歩きながら、イオリは深呼吸をした。


「緊張する……」


 イオリは脈打つ胸の鼓動を敏感に感じて、胸を抑える。

 ノヴァも同様だ。


「ご安心を。イオリ様が王国を追い出されることは決してありません」

「なんでそう言い切れんだよ」


 ノヴァがリブラに悪態をつく。


「イオリ様は異世界から招待された者。我々の都合で呼び出され、頼れる家族も異世界にいる状況で放り出されることなど、あってはならないでしょう。非人道的、身勝手にも程があります」

「そんな常識が通用する相手だと良いけどな……。向こうには同じく、異世界から来た妹聖女様がいるだろ。もし彼女が嫌がったら……」

「イオリ様の追放とヒナ様の要望に応えることは、必ずしも一致しません」

「それはそうなんだけどさ……」

「イオリ様と同様、ヒナ様も追放されることはありません。……例え、罪人であろうと」


──罪人……?

 リブラの含みのある言葉が、イオリは引っかかった。


「イオリ様、ノヴァ、二人は聞かれたことだけ答えるように。全て私に任せなさい」


 イオリとノヴァは頷いた。


 □


 会議室には【星の守護者】が集まっていた。

【牡羊座の守護者】ベリエ。聖ソレイユ王国の第一王子。

【牡牛座の守護者】トロー、不在。

【双子座の守護者】ジェミニとポルックス。若き天才魔導師。

【蟹座の守護者】キャンサー。自称・作家。

【獅子座の守護者】レオ。流星騎士団団長。

【乙女座の守護者】ヴァルゴ。舞踏家。

【天秤座の守護者】リブラ。大神官。

【蠍座の守護者】スコルピオン。元盗賊団のボス。

【射手座の守護者】サジタリウス。弓術師。

【山羊座の守護者】シュタインボック。最古の【星の守護者】。葬儀屋。

【水瓶座の守護者】アクアーリオ。錬金術師。

【魚座の守護者】ポワソン。占星術師。

 流石、女性向けゲームのメインキャラクター達だ。

 全員漏れなく、イケメンである。

 イケメンが集う会議室は圧巻──その一言に尽きる。

 勿論、【星の聖女】の一人、妹聖女・ヒナもいた。

 ヒナはむすっとした顔でベリエの隣に座っている。


「イオリ様はこちらへ」


 イオリはリブラに促され、リブラの隣の席につく。

 ノヴァはリブラとイオリの後ろに立った。

 ゾンビが同じテーブルにつくのは嫌だろうから、とノヴァが配慮したのだ。

 リブラは良い顔をしなかったが、ノヴァが説得していた。

 ノヴァのその行動に、【星の守護者】達は文句を言わなかった。

 全員がいることを確認して、リブラは口を開いた。


「【星の守護者】の皆様、本日は突然の召集に応じて頂き、感謝します。今回は聖女様方の今後について、意見を出し合いたいと思います」

「話し合いなど不要だ」


 最初に声を上げたのはベリエだった。


「姉聖女は我々の敵だ。即刻、国を追放すべきだ!」


【牡羊座の守護者】聖ソレイユ王国第一王子のベリエ。

 彼はヒナを盲目的なまでに慕っている。


「それは出来ません、ベリエ様」


 リブラがばっさりとそう言った。


「何故だ。王子の私が言っているのだぞ」

「イオリ様は異世界からの招待客。我々は聖女様方を保護する義務があります」

「本物の聖女はヒナ様だ。イオリ様は偽物だろう? 保護する義務はない」


 リブラは「フゥー」とため息をつく。


「べリエ様の教育係には、自分の職務を果たすよう言わねばなりませんね」

「……何?」

「聖女様に本物も偽物もありません。聖女召喚の儀でこの世界に招かれた者は、総じて保護する義務があります。そのことを教育係から教わっていないようですので、注意をと」

「なっ……!」


 ベリエは怒りで顔を真っ赤にさせた。


「リブラ殿、あまりベリエ様を怒らせないでくれ。議論にならないだろ?」


【獅子座の守護者】流星騎士団の団長・レオが口を挟む。


「怒らせているつもりはありません。私は思ったことを正直に言っただけです」

「まあ、うん……あんたはそういう人だよな……」


 レオは呆れて笑うしかなかった。

 リブラとレオが問答している間に、ベリエは茹だった頭が冷えたようだ。


「……聖女を保護する義務があることは理解している」


 ベリエは落ち着きを取り戻して、そう言った。


「だが、姉聖女は魔物の味方をしているだろう。今後、王国に多大なる不利益を与えるに違いない。私は聖ソレイユ王国の第一王子として、国民の不安の芽は摘んでおかなければならないのだ」


 ベリエはリブラの顔を真っ直ぐと見た。


「大神官リブラ、お前も国のために魔物を殲滅して来たからわかるだろう」


 リブラは眼鏡のつるの部分を掴み、眼鏡の位置を正す。


「……イオリ様が魔物に傾倒しているのは、我々の責任でもあります」


 べリエは眉を顰める。


「……我々の責任だと?」

「見知らぬ土地に無理やり連れて来られ、聖女を気にかけるべき【星の守護者】達も、妹聖女・ヒナ様につきっきり。姉聖女・イオリ様の悪い噂を諌めることも、咎めることもなかった」


 べリエが顔を背けた。

 同じヒナ派の、【双子座の守護者】ジェミニとポルックスも天井を向いて、目を泳がせる。


「魔物に優しくされ、心を奪われてしまうのも無理はない。それでも……全て、イオリ様の責任であると?」

「それは……」


 べリエが言い淀む。


「だ、だが、魔物は危険な存在だ。それは姉聖女も理解しているはず。魔物の味方をするなんてあり得ない」

「聖女様の元いた世界に魔物は存在しておらず、居住している国は戦争も紛争もしてないと聞いています。魔物も、戦争も、危険性を十全に理解出来ると?」

「り、理解出来るだろう! この世界の魔物とよく似た創作物もあるそうだし、戦争だって、全くない訳ではない。それに、同じ異世界から来たヒナ様は、十分に理解している」

「たった三人の護衛だけで【墓場の森】に行ったヒナ様が、危険性を理解しているとは思えませんが……」


 リブラは眼鏡の位置を正しながら冷酷に言う。


「ひゃはは! 危険だとわかって行ったんなら、相当な馬鹿ってこったな!」


【蠍座の守護者】スコルピオンが大口を開けて笑う。


「実姉を救うためだ! 少しぐらい、周りが見えなくなっても仕方ないだろう!」


 べリエは笑うスコルピオンを咎める。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ