表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
限界オタク聖女が敵の拗らせゾンビ男子を溺愛してみたら  作者: フオツグ
限界オタクと推しとメインキャラと。
38/84

限界オタクが【星の守護者】達をもっと解析してみたら

 リブラはヴァルゴの写真を手に取った。


「【乙女座の守護者】ヴァルゴは──」

「アナタ達の味方よん。【天秤座の守護者】リブラちゃんも勿論ね」


 リブラの後ろから手が伸びてきて、リブラの手から自分の顔写真を奪った。

 その後、ひょっこりとヴァルゴが顔を出した。


「ヴァルゴ姉! 来てたんですか!」


 イオリはヴァルゴの顔を見て、表情を明るくさせた。


「久しぶりねん、イオリちゃん、ゾンビちゃん」


 ヴァルゴはバチン、とウインクをした。


「議論の運び方はリブラちゃんに任せるわ。アタシ、会議とかそういうの苦手だし」


 そう言いながら、ヴァルゴは空いている椅子に腰掛けた。


「ヴァルゴと仲良くしているようで何よりです」


 リブラは満足そうに頷く。


「ヴァルゴをイオリ様の食事係にして正解でした。女性同士の方が話せることもあるでしょうし」

「女……性……?」


 ノヴァはヴァルゴを疑いの目で見た。


「あら。何か問題でも?」

「い、いや……」


 ヴァルゴの笑顔の圧に、ノヴァはさっと顔を背けた。


「話を続けましょう」


 リブラは顔に傷のある男の写真をとんとん、と指で叩いた。


「【蠍座の守護者】スコルピオン。元盗賊団のボスで、現在は受刑者」

「受刑者!? そんな奴も【星の守護者】に選ばれんのかよ……」

「星の神にとって、罪人も誠実な人間も、同じものなのでしょう」


 リブラは呆れたように言った。


「スコルピオンは【蠍座の守護者】に選ばれたことで、特別措置を取られています。従属契約を交わすことで、監獄の外に出ることを許可されました」


 イオリはふと思い出す。

【よぞミル】のストーリーで従属契約の話が出て来るのは、スコルピオンが初登場したときだ。

 おそらく、従属契約という設定は、スコルピオンから生まれたものなのだろう。


「スコルピオンは犯罪者ということもあり、発言力はありません。とはいえ、奴は狡猾な犯罪者。言葉巧みに人の心を操ろうとします。くれぐれも、奴の言葉に耳を貸さないように」

「……お前、もしかして、そいつのこと嫌いなのか?」

「犯罪者は嫌いです」


 リブラはばっさりと言い放った。

 リブラの実の両親は犯罪者であった。

 リブラは彼らを嫌悪し、告発をしている。

 犯罪者の憎んでいるのは当然だ。


「こいつはどちらの聖女ともあまり接点がないので、中立と言えば中立です」


 リブラはそう言って、次の【星の守護者】の写真を指差した。

 写真に写っているのは、弓を持った男だ。

 被写体は後ろを向いていて、表情は見えない。


「【射手座の守護者】サジタリウス。彼も中立派の一人です。……というのも、彼は無類の女性好きでして。全ての女性の味方、というスタンスを取っています」

「じょ、女性好き……。自称・作家だったり、受刑者だったり、【星の守護者】って何でもありだな……」


 ノヴァは【星の守護者】に夢を見ていたようだ。

 信仰心が強く、責任感がある者達の集まりだとでも思っていたんだろう。

 ノヴァの中での高潔な【星の守護者】のイメージが、ガラガラと崩れていっているのが伝わってくる。


「サジタリウスは空に浮かぶ風船のような性格なので、評決を取る際は多数派の一人になるでしょう」

「風船……?」


 次に、リブラは白衣を着た男の写真を指差した。


「【水瓶座の守護者】アクアーリオ。彼は……そうですね。どちらの味方をするかわかりません。非常に気紛れで」

「どんな人なんだ?」

「博士気質な人って感じかな。」


 リブラの代わりにイオリが答えた。


「イオリは話したことあんの?」

「うん。錬金術を教えて貰ったんだ」


 イオリはこの世界に召喚された直後、アクアーリオに錬金術を教わりに行った。

──「馬鹿め」「こんなことも出来ないのか」とか鼻で笑われたっけ……。

 イオリはそのときのことが遠い昔のように感じられ、懐かしく思った。


「大丈夫でしたか? アクアーリオ博士は大変口が悪いでしょう」


 リブラが心配そうに言う。


「まあ……喜ぶと口数が多くなるタイプの人だと知っていたので」

「なら、良いのですが……。何を言われてもあまり気にしないで下さい。誰に対してもああいう物言いをする方なので」


 イオリは頷いた。

 最後にリブラは前髪の長い男の写真を指差した。


「【魚座の守護者】ポワソン。ヒナ様派ですね。臆病で、サジタリウス殿と違うベクトルで流されやすい性格です」

「違うベクトルって?」

「気が弱いのです。強気に押せば、意見が通ります」

「なるほど……」


 これで、牡羊座から魚座までの【星の守護者】の解析を一通り終えた。


「えーと、これまでの話をまとめると……」


 妹聖女・ヒナ派は牡羊座、双子座の二人、獅子座、魚座の計五名。

 姉聖女・イオリ派は乙女座、天秤座の二名。

 中立派は蟹座、蠍座、射手座、水瓶座の四名。

 不明なのは牡牛座。


「……ってところか。上手く中立派を説得出来れば、ってところだな。……ん? そういえば、シュタインボック様は?」


 最古の【星の守護者】、伝説の人、【山羊座の守護者】シュタインボック。

 無論、ノヴァもその名は聞いたことがあった。

 今の話の中に、彼の名前だけ出ていなかった。

 リブラは「フゥー」と息を吐く。


「……【山羊座の守護者】シュタインボック様は、【星の守護者】で一番発言力を持つ存在です」

「つまり、オレ達の行く末は──」


 リブラは眼鏡のつるを掴んで言った。


「シュタインボック様の一声で決まるでしょう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ