限界オタクが【星の守護者】達を解析してみたら
「【星の守護者】会議に向けて、【星の守護者】を一人ずつ解析していくととしましょう」
リブラは聖書を懐から取り出した。
ページを捲り、ページの隙間に挟んでいたらしい、十二枚の写真をテーブルの上に並べた。
写真には十二人の【星の守護者】の顔が写っている。
「おお……!」
その写真を見て、ノヴァは歓声を上げた。
「これ、錬金術で作られた写真機で撮った奴だろ!?」
「はい」
「凄え……! 初めて見た……! 目で見てるようにはっきり写るもんなんだな……!」
ノヴァは目を輝かせて、写真をまじまじと眺めている。
イオリは温かい目でノヴァを見つめた。
リブラも同様、写真技術に触れてはしゃぐノヴァを見て、ほっこりしている様子だ。
リブラはこほん、と一つ咳払いをする。
「……話をしても?」
「あっ……。悪い。話してくれ」
リブラはまず最初に、ベリエの顔写真を指差した。
「最初に、【牡羊座の守護者】ベリエ王子」
写真の中のベリエは顔は自信に満ち溢れている。
「この国の第一王子だな。オレでも顔を知ってる」
ノヴァの言葉にイオリも頷いた。
「ベリエ王子は完全にヒナ様派です。第一王子として、ゾンビを国内に留めておくことへ難色を示すでしょう」
「そりゃそうだ」
「しかし、【星の守護者】内で発言力はほぼありません」
「え、そうなの?」
ノヴァは驚きの声を上げた。
ベリエはこの国の王子だ。
彼の声は無視出来ないと思っていた。
「第一王子とはいえ、【星の守護者】の中ではまだ新米ですからね。彼の説得は後回しで良いでしょう。ノヴァの優秀さがはっきり示れば、国の次期トップとして、認めざるを得ません」
「優秀って……そんな大袈裟な」
はは、とノヴァは呆れて笑った。
「優秀です。【墓場の森】は目下、目の上のコブ」
「目の下なのか上なのか」
「【墓場の森】を安全に通り抜けられれば、魔王軍領地の進軍が非常に楽になります」
「それはそうだろうけど……」
「そんなに上手く行くかぁ?」とノヴァは疑う。
リブラは次の【星の守護者】について話し出した。
「【牡牛座の守護者】トロー。彼は会議に出席することはありません。気にしなくて良いでしょう」
「【星の守護者】がそんなことで良いの……? これも星の神様のご意志なんだろうか……」
ノヴァは至極真面目そうな顔でそう言う。
そんな訳あるか、とでも言うようにリブラはため息をついた。
「ってか、トロー様の写真はねえの? 写真こんなにいっぱいあんのに」
「トローの写真は手に入れることが出来ませんでした」
「ふうん……」
リブラは続いて、ジェミニとポルックスの顔写真を指差した。
「【双子座の守護者】ジェミニとポルックス。二人は若い魔導師です。感情的になりやすく、他の者を理性的に説得する力は弱い」
「へえ、意外だ。双子座の二人は天才魔導師なんだろ? 優秀だと思ってた」
「天才魔導師と呼ばれてはいますが、彼らは【星の守護者】の中で人生経験が最も少ない。故に、彼らの意見は軽く見られています」
「可哀想だな……。若いってだけで意見を聞いて貰えないなんて」
「二人の場合、『若い』と言うよりも、『幼い』と言った方が正しいかもしれません」
「……あー……」
ノヴァは何処か納得しているようだった。
「二人はヒナ様派でしたが、現在距離を置いている様子。彼らの間で何があったのか……」
「ノヴァくんと戦ったとき、ヒナの我儘っぷりを見ちゃったもんですから。少し怖がってるのかもしれませんね」
好意を持っていた相手からヒステリックに怒られたら、誰だって怖い。
「怖がっている……。そう言われるとしっくりきますね」
リブラは「なるほど」と頷く。
「しかし、彼らはイオリ様がノヴァに傾倒しているのを目撃しているので、反対はしてくるでしょう」
次にリブラは、優しく微笑んでいる垂れ目の男の写真を指差した。
「【蟹座の守護者】キャンサー。作家です」
「作家!? 作家が魔物と戦えんの!?」
ノヴァが驚いて声を上げる。
「キャンサー先生は〝自称〟作家だから……」
イオリが申し訳なさそうに答える。
「自称ってことは本業があるんだな?」
「ないよ」
「ないの!?」
ノヴァはまたも声を張り上げる。
その反応を見て、イオリは「ふっふっふ」と笑った。
「良い反応してくれるね、ノヴァくん。何だか、推しゲームを布教している気分になってきたよ」
「おしげーむ……?」
「あ、ごめん。こっちの話……」
──またオタクの悪いところが出ちゃった。発言には気をつけないと。今後、ヒナとも顔を合わせることになるんだし……。
オタクのような発言をしたら、またヒナに馬鹿にされてしまう。
イオリは気を引き締めた。
「キャンサー殿はおそらく、中立派です」
「おそらく」
「読めない方なので」
「うん……。今の話で何となく理解出来た……」
ノヴァは疲れたようにそう言った。
気を取り直して、リブラはレオの写真を指差した。
「【獅子座の守護者】レオ。騎士団長を務めています。情に厚い男ですが、冷静な一面もあります。リーダーシップがあり、人を従わせる力がある」
ノヴァは相槌を打ちながら聞く。
彼の人となりは、【墓場の森】で戦ったときに大体把握出来ている。
国民を思い、騎士として王子に従う。
聖女にだって強く言える男だ。
「ヒナ様派ですが、最近はヒナ様を制御する役に回っている様子です」
「それもノヴァくん戦での一件で、でしょうね……」
イオリは自分の妹が迷惑をかけて申し訳ない気分になった。




