表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
限界オタク聖女が敵の拗らせゾンビ男子を溺愛してみたら  作者: フオツグ
限界オタクと推しとお兄ちゃんと。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/92

限界オタクが人間の国に帰ってきたら

 聖ソレイユ王国、王都。

 そこは魔物の侵入を防ぐべく、高い壁に囲まれている。

 締まり切った門の前で、二人の屈強な兵士が目を光らせていた。

 門兵の目と鼻の先にゾンビの根城【墓場の森】がある。

 近づいてきたゾンビをときには追い払い、ときには討伐するのが、門兵の仕事であった。

 しかし、今日はいつもと違う。


「リブラ様とヴァルゴ殿はご無事だろうか……」


 昼頃、【星の守護者】リブラとヴァルゴの二名が、姉聖女イオリの奪還のため、【墓場の森】の中に入って行った。

 門兵は二人の帰りを今か今かと待っている。


「二人は聖ソレイユ王国屈指の実力者だ。必ず姉聖女様を奪還してくるさ」

「しかし、先日、妹聖女様と三人の【星の守護者】が奪還に失敗したばかりだろう」

「ヒナ様をお守りしながらでは本来の実力を発揮出来まい。今回はきっと上手くいく……」


 門兵二人が世間話をしていると、ぱきり、と枝を踏み締める音が森から聞こえてきた。

 ゾンビの襲撃かと、門兵二人は咄嗟に槍を構える。

 リブラとヴァルゴの顔が見えたとき、門兵二人は表情を明るくさせた。


「リブラ様! ヴァルゴ殿! よくぞご無事で!」


 門兵二人はリブラとヴァルゴに敬礼をする。

 ヴァルゴの横には姉聖女イオリの姿もあった。


「姉聖女様の奪還に成功されたのですね! 流石、リブラ様とヴァルゴ殿だ……!」


 門兵二人は優秀の【星の守護者】を褒め称えた。

 そして、リブラとヴァルゴ、姉聖女イオリの他に、もう一人の客がいることに気づいた。

 ノヴァだ。

 顔色も人相も悪いその男に、門兵の一人は眉を顰め、もう一人は不思議そうな顔をした。


「失礼。そちらの男は……?」


 眉を顰めた門兵が問いかける。


「門兵に話をしてきます。こちらでお待ち下さい、イオリ様。……ヴァルゴ、任せましたよ」

「わかったわん」


 リブラは他三人に待機を促し、門兵に近づいた。


「耳をこちらに」


 耳元に口を寄せ、何かを小声で話している。

 門兵は目を見開いた後、再び眉を顰めた。

 イオリやノヴァには何を話しているのか全く聞こえない。

 しかし、ノヴァのことについて話しているのは、門兵の表情から推測出来る。


「し、しかしですな。魔物を都内に入れるというのは……」

「責任は私が取ります」


 その会話だけ少しだけ声が大きく、内容が聞こえてきた。

 その後、直ぐに小声に戻り、会話が聞こえなくなった。


「……わかりました」


 門兵は渋々頷いた。

 リブラと門兵の内緒話が終わると、ゆっくりと門が開く。

 リブラが先頭に立ち、王都の中に入る。

 続けて、イオリとヴァルゴ、最後にノヴァが入った。

 ノヴァが王都に足を踏み入れた瞬間、門兵がノヴァの肩を掴み、地面に押さえつけた。


「ノヴァくん!?」

「姉聖女様、離れて下さい!」


 駆け寄ろうとするイオリの前に、門兵が立ちはだかる。

 それでもノヴァに近寄ろうともがくイオリを、ヴァルゴはやんわりと押さえ込んだ。


「近づくと怪我するわよ、姉聖女ちゃん」

「でも、ノヴァくんが……!」


 門兵はノヴァの背中に跨り、起き上がれないようにする。

 直ぐに応援の兵士が数名現れ、ノヴァを取り囲む。


「こいつはゾンビだ!」

「口を塞げ!」

「噛まれるなよ!」

「もっと応援を呼べ!」


 門兵は口々にそう言い、ノヴァの口に猿轡を噛ませる。

 その間、ノヴァは一切抵抗しなかった。


「ちょっと! 手荒な真似はしないでって言ったじゃないですか!」


 イオリはリブラに訴える。

 しかし、リブラは何も答えず、止める素振りすら見せない。

──まるで、最初からこうなることを知っていたような……。いや、こうなるように指示してた?


「姉聖女様、こいつは魔物ですよ。乱暴に扱ったって、バチは当たりません」


 門兵はへらへらと笑う。

 何も言わないリブラ。

 イオリを止めるヴァルゴ。

 抵抗しないノヴァ。

 そして、無抵抗のノヴァを大勢で取り押さえる兵士達。

 その全てに腹が立った。


「このっ……! いい加減にっ……しなさぁいっ!」


 イオリが叫ぶと、イオリの体から星が瞬き始める。

 その光はノヴァの傷を癒したときと同じものだった。


「これは……聖女ちゃんの力……!?」


 ヴァルゴが驚く。


「グウッ……目が……!」


 一部の門兵が眩しさに目を抑える。

──凄い。これ、フラッシュの効果あるんだ!


「じゃあ、もっと輝けー!」


 イオリがそう叫ぶと、星の輝きが増した。

 目を覆い、ノヴァを抑え込む動きが止まる。


「貴様……っ!」


 門兵がイオリに向かって、槍を構えた。

 その門兵をリブラが手で制する。

 門兵は動きを止める。


「……失礼しました、イオリ様」


 リブラが胸に手を当て、イオリに向かって頭を下げる。


「こちらで手違いがあったようです。申し訳ありません」

「リブラ様!」


 門兵が短い言葉でリブラに文句を言う。

 リブラは門兵に冷たい目を向けた。


「これでわかったでしょう。イオリ様の機嫌を損ねてはならないと」


 門兵は押し黙る。


「そのゾンビのことは、くれぐれも、くれぐれも丁重に扱いなさい」

「……わかりました、リブラ様」


 門兵が槍を収め、ノヴァを押さえつけている兵士達に退くように指示を出した。

 それを見届けると、イオリは聖女の光を引っ込めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ