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22話

「・・・ちょっとつけてみてもらえます?」


「カメムシの匂いがするか確認しようとしてる?」


「はい!」


「エマ・・・」


「はい?」


「いや、ほら」シュッと腕につけてくれたのを馴染むのを待ってから嗅いでみた。


「意外とリカルドのことが好きみたいです」


「かなり意外だな」


「では」私の手にもつけて馴染ませる。


リカルドに「嗅ぎますか?」と差し出すと


「強烈なカメムシだ」


と言われて本気で落ち込む。


「立ち直れないかもしれません・・リカルドにそんなにも嫌われていたなんて・・」涙が溢れそうになって慌ててハンカチを取り出す。


「ごめん!冗談が過ぎた。本当は嗅いだことのない可愛らしい香りがしたよ」


「う、嘘くさいです」溢れ出る涙を止められず、子供みたいにしゃくり上げてしまう。


「ほんとごめん、悪かった、もう二度とこういう冗談は言わない、約束する」


リカルドの声に焦りが滲んでいるけれど、私は子供の頃から1度感情が爆発してしまうと止まらなくなってしまうのだ。


「ひっく、うう〜」



「いったいどうしたんだ!?」


ドアがバタンと開いてセオドアとオスカーが飛び込んできた。


「冗談のつもりだったんだけど、エマをすごく傷つけてしまった・・」


「リカルドにっ、うぅっ、嫌われてたなんてっ・・ううっ」


「エマ、おいで」


涙でぼやける視界でセオドアが腕を広げているように見えて、泣きじゃくりながら近づくと、ぎゅっと抱きしめられたままソファに座らされた。


「何か甘い飲み物を持ってきて下さい」セオドアが誰かに言ったけれど、セオドアの胸に顔を埋めているのでわからない。


「エマがこんなに泣きじゃくるとは」オスカーのびっくりしたような声。


「だ、だってカメムシの匂いっ」


「なんのこと?」


「ひっ人によって、香りっが、か変わる、嫌いだとっ、嫌な匂いって」


「カメムシの匂いが嫌な匂いだとは限らないんじゃないか?」


上から降ってきたセオドアの言葉にしゃっくりも止まる。


「あ」


「よしよし」頭を撫でられた。


「わたくしとしたことが!」


「うん」


「カメムシさんになんて失礼なことを!」


「そうかもしれないね」


「そんなことで泣き止むのか、エマは」リカルド自らワゴンを押して入ってきた。


「あ、でも悲しかったのはリカルドに嫌われているとわかったからで・・」


「それは本当に冗談だっんた。すまない。エマにもカメムシにも失礼な冗談だった」


「リカルドが・・・」


「なんだ」


「カメムシに謝った」


「それがどうした?」


「今日はリカルドの色んなところが見られてなんとなく嬉しい」


「さっきまで号泣してたのにな」


「セオドアのおかげです」


セオドアを見つめると、またぎゅっと優しく抱きしめて


「エマが可愛くてたまらない」


と小さく囁いて、私に振動が伝わる。


「セオドアすごいな」

リカルドが感心したように言うので「何が?」と問いかけたら、


「見てご覧よ。セオドアの服もエマの顔もドロドロだ」


「いくらでも汚していいよ」


「セオドアは替えの服を用意するから着替えろ。エマはメイク室で直してもらってこい」


「は、はい」


「もっとこのままでいいのに」


「私もこのままでいい気がしてきました」


「ふふっ」


ドロドロのまま笑い合っていると、ドンッと大きい音がして、オスカーが部屋から出ていった。


「放っておけ」



□  □


化粧を直して戻ると、着替えを済ませたセオドアと、機嫌は直ったのかわからないオスカーと、真剣な顔をしたリカルドがお茶を飲んている。


「さっきのエマも可愛かったけど、今のエマも綺麗だ」セオドアが褒めてくれて嬉しくて口が緩む。


「オスカーとセオドアにも試してみるか?」


試してみたい好奇心と人に嫌われているかもしれないという恐怖感で躊躇っていると、


「試してみたい」とオスカーが言った。


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