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ペルーシュ凹む

 ペルーシュさんを連れて行くと、ちょうどフィリーチェ嬢が部屋から出てきたところだった。 

 エーディスさんはもう戻っていたらしく見当たらない。

 ペルーシュさんを前に押し出すと、こちらに気づいたのかフィリーチェ嬢が振り向く。


「……!」


 驚きからか目がまんまるになり、言葉を失っている。


「フィ、フィリーチェ。……久しぶり」

「……」


 ペルーシュさん、決死の挨拶。

 フィリーチェ嬢は、暫く黙っていたが、おもむろに腕を組み言い放つ。


「あら、どちら様でしたかしら?わたくしの知り合いにこーんな地味な方いたかしら?」

「フィリーチェ……」

「わたくし、失礼いたしますわ」


 踵を返すと足早に歩み去ってしまう。


 ガックリ肩を落とすペルーシュさん。

 いやいや、これは、絶対覚えてるでしょ!脈ありかは別として……。


「やっぱり、地味な俺のことなんて忘れてるんだな……」

「何言ってんですか。絶対覚えてますよ。会ったこともなかった人に地味なんて言わないでしょうが」

「じゃあ、なんで覚えてないふりを……?」

「それはわかりませんけど。あんまり迎えとやらが遅いから怒ってるんじゃないですか?」

「そうなのかなぁ……」

「とにかく、エーディスさんに探り入れてみますから。そしたら作戦会議しましょう」

「ありがとう……」




 早速帰りに聞こうと思ったら、先にエーディスさんに聞かれた。


「ペルーシュと何してたの?」

「え?ああ、ちょっと相談事を……」

「相談?」

「えーと、まあ、大したことじゃないですよ」

「ふぅん……」


 ごまかすと、納得行かない顔をしたものの追求はされなかった。

 話題を変えるついでにズバリ聞く。


「フィリーチェ嬢とはどうなんですか?」

「どうもしない。スレンピックの準備はどうだとか、最近天気が良いとかそんなことしか話してないよ。まあ、けっこう話せるようにはなってきたけど」

「ふむ……。エーディスさん的にはフィリーチェ嬢、どうですか」

「どうって……どうもしないよ」

「とびきり可愛いじゃないですか」

「まあ、美人だとは思うけど」

「好きではない、と」

「向こうも別に俺のこと特別好きには思えないけどね」


 嘆息しながら言うエーディスさん。

 フィリーチェ嬢、謎いけど、エーディスさんの言葉を信じるならばまだなんとか振り向かせることは可能なような気がする。


「フィリーチェ嬢、何なんだろうなぁ」

「……もしかして君、あの子好きなの?」

「へ?いや、とっても可愛いから愛でたいとは思いますけど、恋愛の意味で好きとかそういうわけではないですよ」

「ふぅん……」




 家に帰ると、私は夕飯の支度をし、エーディスさんはシオンの訓練。

 団体演技のステップがなかなかうまくできないので練習しているみたい。

 日中は一緒に練習することが多いので、個別の練習はどうしてもこの時間になってしまう。

 シオンの負担にもなるからあまり長くはしてないようだけど、あまり時間がないからちょっと焦っているようにも感じられる。


 その後は夕飯を食べて、いつもどおり文字と発音のレッスンに付き合ってくれる。

 こちらはだいぶ進歩した。

 かんたんな日常会話は少しできるようになったし、子ども向けの本くらいなら読めるようになった。

 努力は素晴らしいね。

 まあ、あっちに戻ったら一生使わなくなる知識になると思うと複雑だけどね……。

 でも、こっちにいる間は少しでも役に立ちたいから頑張ろう。




 次の日、そわそわしてるペルーシュさんに報告する。


「頑張ればまた挽回は可能かと思われます!」

「ほんと?」

「はい!てなわけで、頑張ってアピールしましょう!」



 と、言ってペルーシュさんのやる気を出したものの、次の日、彼はまた凹んでいた。


「えーと、どうかしました?」

「だめだ……会ってもくれない。俺が地味だからかな……」


 詳しく聞くと、バウルム侯爵家まで出向いて取次を願ったものの、追い返されたらしい。


「先にアポ取っていけば会ってくれるんじゃないですか?急に行くからだめだったとか」

「そ、そうか。じゃあそうしてみる!ありがとう」


 そして次の日もやっぱり凹んでいた。


「駄目だあ……完全に断られた……」

「ええ……」

「連絡を取ったらそのような方は存じあげませんって言われた……」


 それは凹む……。

 どう声をかけていいものか悩んだものの、意外とそれで吹っ切れたようで、拳を握りしめペルーシュさんは宣言する。


「きっとまたエーディス副長に会いに来るから、そのときにもう一回声かけてみる!」

「が、頑張ってください!」


 精一杯のエールを送るしかなかった。




 そして、その日がやってきた。


 フィリーチェ嬢が現れた!

 ペルーシュさんにアイコンタクトを送る。

 ペルーシュさん、めっちゃ緊張の面持ちで、一歩踏み出す。


「エーディス様!」


 そのペルーシュさんを華麗にスルーしてエーディスさんのもとへ駆け寄るフィリーチェ嬢。

 くずおれるペルーシュさんの背中を哀愁が漂う……。ごめん、もうかける言葉が見つからないよ……。



 フィリーチェ嬢はもじもじとためらいを見せつつも、本題に切り込んだ。


「ご、ごきげんよう、エーディス様。

 ……あの、実は折り入ってお願いしたいことがあるのです」

「……なんでしょうか?」

「来週の王宮での舞踏会、わたくしのエスコートをお願いできませんか!?」


 ペルーシュさんがすごい顔で振り返っています……!

 見ていられないので、彼にそっと背中を向けフィリーチェ嬢とエーディスさんの様子に注目する。


「……申し訳ございません、少しお時間を頂いても?

 その日、俺は近衛の仕事がありますので、確認を取らなければ。

 どちらにしてもエスコートするだけでダンスなどはできませんが……」


 フィリーチェ嬢が、はっとして、困ったように眉尻を下げる。


「そ、そうでしたか。ご無理を言って申し訳ありません……い、一応、エスコートして頂けるか聞いていただけますと有難いですわ」

「分かりました」

「そ、それではまた伺いますわね!」


 凹むペルーシュさんの脇を通り過ぎさーっと帰ってしまう。


 これは、凹むよね……。

 エスコートする相手って親兄弟以外の人だと婚約者とかそういう関係の人が多いって聞くし。

 自分を差し置いて他の男性にエスコートを頼まれてしまったペルーシュさんの落ち込みようは半端なかった。

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