18話 ダン爺さん
「ここかー」
メモに書かれた住所につくと、古ぼけた一軒家があった。
扉を叩いてみるが反応はない。
「たのもー」
池田がいきなり扉を開けて入っていく。
フリーダムだな!
ホントこの世界に来てから性格が変わっちゃったな!
などと思いながら俺も中に入っていく。
「誰もいない……」
「だねー」
中に入るが、テーブルや日用品が置かれている棚があるだけで人の気配はない。
だが、よく聴くと、何かを叩く音が奥の扉からしているのに気が付いた。
「奥か……」
「よし行こう」
池田も気づいたのか扉を開ける。
そこは地下へと続く階段があった。
昼間なのに光が差し込まないそこは真っ暗である。
俺は昨日市場で買った照明の魔道具を取り出す。
魔力を注ぎ込むと、周囲をほのかに照らし出した。
「それ便利だね! あたしも欲しい!」
凄く物欲しそうにしてるけど、お前バットに魔力全振りしてるからむりだって。
試しに予備を渡してみるが、当然魔道具は発動しない。
「じゃあ降りるか」
「うん……」
魔道具が発動しなかったのがちょっとショックだったのか、テンションが少し下がり気味に返事がかえってきた。
階段を降りていくと、音はドンドン大きくなっていく。
階段が終わると扉があり、それを開く。
扉の先の部屋は明るかった。
十分な明かりが確保されており、壁際には様々な武器や防具類が置かれている。
「まさか物取りがやってくるとはな。どうやら死にたいらしい」
声のほうへと振り返ると、いかにも頑固者といったお爺さんがハンマー片手にこちらを睨みつけていた。
近くには作りかけの武器らしきものがある。
「あ、すいません。ノックをしたんですが返事がなくて……」
「返事がないから盗みに入ったってことか?」
完全に悪い印象持たれたなー。
うん、鎖帷子は諦めよう。
「鎖帷子を作ってください」
横で空気を読まない池田がお願いしていく。
「……名前も知らん奴に頼まれる筋合いはないな」
「池田 真理です!」
「鬼塚 天理と言います」
「ふむ、2人とも珍しい名前じゃな」
素直に自己紹介したのが功を奏したのか、若干対応が柔らかくなった気がする。
「鎖帷子なんて他でも作ってくれる。儂がわざわざ仕事をする必要もないな」
はい、交渉決裂しました。
「昨日魔族と戦ったらボコボコにされて、貰った服がもう一着ダメになっちゃったんだ。だから頑丈な防具が欲しくなった!」
しかし諦めない池田は交渉を続ける。
「魔族だと……よく生きて逃げ帰れたものだな」
「え……倒したよ?」
爺さんはそれを聞いて怒鳴りつける。
「嘘はやめろ! 自分を売り込むにしても話を盛りすぎだ!」
「あー、一応冒険者ギルドに確認してもらえば、とりあえずは真実だってことは証明してくれると思う」
俺は一応助け船をだしてみる。
「魔族を倒す程の実力者だっていうならよ……」
爺さんは一つの鎧を持ってきて床に置く。
「こいつは俺の自慢の一品よ。物理防御も魔法防御も相当なレベルだ。こいつにかすり傷でも付けられれば信じてやるぜ」
「はぁ、別に他の職人に頼みますんで、もう帰って――」
俺が面倒になって帰ろうとすると『ボコッ』という音が隣から聞こえて、俺と爺さんがそちらへと振り返る。
そこには……池田のバットが鎧に深々とめり込んで陥没させている姿があった。
それをみた爺さんが体をプルプルと震わせている。
「お……お……お代はお幾らでしょうか……」
自慢の一品をダメにされて怒っているのだろう。
とりあえず弁償する方向で話を進める。
もちろんお金は池田の財布から使うつもりだ。
「ガハハハハ! まさかその鎧を一発でつぶしちまうとはな! どうやら魔族を倒したってのも、まんざら嘘じゃねーようだ」
あれ、なんか機嫌がよくない?
「気に入ったぜ嬢ちゃん! 是非あんたらの装備を作らせてくれ!」
「やったー!」
爺さんが嬉しそうに言えば、池田も作ってくれると分かって喜び飛び跳ねている。
どうやら爺さんは池田と波長が合う人種のようだ。




