第三話 可愛い妹(魔王)を守るため、【改稿】を使って襲いかかる勇者を奈落へ落とします!
ー異世界 ウェストリア 魔王城 魔王の部屋ー
『裂斬!聖剣エクスカリバー!』
攻撃はクリーンヒット。勇者ハルトの聖剣が魔王ゼノの体を右肩から斜めに切り裂いた。
「ぐっ……ぐあああああ! 」
「や……やったか? 」
「お……おのれ勇者よ我はまだまだやられる訳にはいかないのだ」
ポチッ
魔王ゼノが手元からスイッチを取り出して、ボタンを押すとの足場が上にあがり天井へ消えていった。
同時に魔王の部屋の奥に階段が現れた。
これを登ってこいと言うことか。
「まて! 魔王! 全ては世界平和の為に! 」
勇者ハルトはゼノを追うために魔王の部屋奥の階段を進んだ。
~風見町 ライズマンション 702号室 桜家 あげはの部屋 23時~
「ゼノちゃん、ちよっと待ってね! 」
あげははゼノの話を聞く為に、
急いで自分の髪も乾かし化粧水を付けた。
ゼノは行儀正しくちょこんと対面してすわり、あげはの使っているドライヤーやら化粧水などを不思議そうな顔をして見ていた。
「はい! ゼノちゃん! どうぞ! 」
あげははゼノに声をかける。
「あ、うん……あげはお姉ちゃん。じゃあ改めて確認なんじゃが、我は魔王ゼノじゃ。我は魔族達と平和に過ごしていたのじゃ。しかし、急に勇者が我の魔王城に攻めてきたのじゃ。勇者たちは『世界平和のために! 』と声を掲げて我らの部下を次々と……残っているのは我1人」
「そうなんだ……」
(『世界平和のために! 』?なんか聞いたことある言葉だわ)
「ただ平凡と生きる我々は生きてるだけで悪いのかの? あげはお姉ちゃんも魔族……嫌い? 」
ゼノが首を傾げて少し上目遣いであげはを見つめた。
「そんな事ないよ。ゼノちゃんは悪くない! あと可愛い! 良い匂い! それに勇者は理由もなく攻めるのは良くないよ! 魔族達も仲良く平和に暮らせてるんだからそれで良いじゃない! 」
「あげはお姉ちゃんもそう思うよね。昔読んだ本では魔王は最悪の根源なんてかかれてて、でも我ら魔族は1度たりともこちらから人間の街を襲った事ない!ドラゴンキラー、バンパイア、ゴブリン、スライム達……毎回毎回、勇者やらハンターの方が魔族の領域に入って沢山の仲間を『経験値集め』と言う名目で倒していった」
「勇者が魔王を倒すのは普通のことだと思ってたけど、魔王を倒す理由が《世界平和》だけじゃダメなんだね。だって悪いこと何もしてないんだから」
「そうじゃ。我らは何もしていない。そしてその勇者が時期にあの部屋を見つけて、もう少しでこちらに来てしまう……我を助けて欲しいのじゃ」
「……ゼノちゃん、なんか私それ聞いた事ある話なの。ちなみにその勇者の名前は? 」
「勇者ハルトと言ってたのじゃ、200階まである魔王城の中で次々と仲間たちを倒していったのじゃ」
「えっハルト? 」
「うむ。伝説聖剣エクスカリバーを持っていたのじゃ」
聞き覚えのある勇者の名前と彼が使っている武器を思い出した。
(それって私が作った小説の話と似ているというかもしかして同じ? )
「ゼノちゃん……すこし見てほしいものがあるの」
あげはは立ち上がり机の上にあったノートパソコンを開きスリープ状態を解除する。
「あげはお姉ちゃん……なにこれ? 」
「これはね、パソコンって言うの」
「ぱそこんとな? なにか魔法具の1つかの? 」
「魔法具じゃないけど、まあなんでもできる奴だね。いま私はこの機械を使って小説を書いているんだけど、私の小説にも勇者ハルトって言う人が出てくるの」
「そうなのか? 偶然じゃの」
「私が今このお話の最新話を作ったんだけど、ちょっと内容をゼノちゃんに見せてあげるね」
あげはがpcのなろうに投稿している自分の小説の最新話をゼノ見せる。
「うーん……読めない字が多いのじゃ」
「あ、そっかごめんね!えっとお姉ちゃんがこのお話をまとめるとね、このお話では勇者ハルトが魔王を倒す為にドラゴンや魔王ゼノをエクスカリバーで右肩から左脇へズバーって切り、魔王にトドメをさせたかなって思ったら、魔王が実は秘密の部屋のスイッチを押して秘密の部屋に入るところなの」
「魔王ゼノ……それ……我が経験したことと同じことが起きているのじゃ」
「やっぱり……」
あげはは確信したように頷き呟く。
「たぶんゼノちゃんは私が書いた小説の魔王ゼノ。おそらく私の小説の物語がそのままゼノちゃん達の異世界で起きているんだと思う」
「あげはお姉ちゃんはまるで神様みたい。それじゃ、あげはお姉ちゃんが……みんなを? 魔族を倒そうとしたの? 」
「うーん。間違ってはいないんだけど、違ってもいるし……」
「あげはお姉ちゃん……この後我はどうなるの? 」
「私の作ったお話ではこの後魔王を倒してハッピーエンドかな?」
「あげはお姉ちゃんも勇者の仲間なの? ぐすん」
「大丈夫だよゼノちゃん。私がゼノちゃんを救ってみせる。だって投稿した小説は改稿できるの」
「かいこう?」
「そう、改稿。簡単に言うと投稿したお話を正しく書き直す。というイメージなんだけどね」
「どゆこと? 」
「つまり、ゼノちゃんが勇者にやられない様にするの!こうやって……」
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改稿後
『裂斬!聖剣エクスカリバー!』
「甘い!! 」
ポチッ
魔王ゼノが素早くハルトの攻撃を避けた後、手元からスイッチを取り出して、ボタンを押した。
「さらばだ、また1階からやり直すが良い」
その途端!
ハルトの足場が抜け落ちた。
「うわぁあああ!!!! 」
ハルトは魔王城1階に戻されてしまった。
頑張れハルト200階まで再び登るんだ!
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「よし、これで保存っと」
ポチっ
あげはは保存ボタンをおした。
「これで勇者ハルトは1階フロアから最上階までやり直す必要があるわ。すこしは時間は稼げたんじゃないかしら。」
「ありがとうなのじゃ! あげはお姉ちゃんは凄いのじゃ! 我はこれで勇者の剣で深手を追わずに済んだのじゃ!」
「いえいえ、私が作った小説なんだから。お役に立てて良かったよ」
「ふわぁ……安心したら眠くなってきたのじゃ。あげはお姉ちゃん一緒に寝よ? 我はそのベットに横になるのじゃ、あげはお姉ちゃんも一緒に寝るのじゃ! 」
「と言う事は2人で一緒に寝るって事かな? 」
「ダメ?お願いなのじゃあああ! 1人だと不安なのじゃ!」
ずきゅううううん
【ダメ? 】& 【お願い】のダブルパンチがあげはの脳天を襲う。妹のワードバズーカの破壊力恐るべし……
あげはは出来るだけ平常心を保つように……
「じゃあ、一緒に寝よっか? 」
「わーいなのじゃ! 」
そう言ってゼノはあげはのベットに横になる
「あげはお姉ちゃん!ここに来るのじゃ!」ぽんぽん
ゼノが小さな手でベットを叩く。
(この笑顔……守ってあげたい)
そしてあげはも部屋の電気を豆電球に変えてゼノの横になり一緒の布団をかぶる。
「お姉ちゃんの身体、あったかいのじゃ! 」
「うん……ゼノちゃんも温かいよ。じゃあおやすみなさい」
「あ、待って! あげはお姉ちゃん! 」
そういうとゼノは小さな両手であげはのほっぺを触る。そして触り顔を近づけて……
チュっ
(……キスされた!! )
「おやすみのキスは常識なのじゃ! 」
ずっきゅううううううううん!!
(ハアハア……可愛いくて悶えそう)
「んっ……あげはお姉ちゃん。はやくぅ」
「えっ」
「次はあげはお姉ちゃんがする番じゃ! 」
「ええっ! 」
(今度は私の番って……)
まさか私の作った小説のキャラが目の前に現れるなんて思わなかった。
しかもこんな可愛い妹になって。
艶やかな長い赤い髪、小さくてふわふわな手の感触、お花のような甘い香り、一緒にいるだけでドキドキしてしまう私がいる。
チュっ
「どうかな? ゼノちゃん」
あげはのくちびるががゼノのおでこに当たる。
「ありがとうなのじゃ! じゃっおやすみなのじゃ! 」
そう言ってゼノは目を瞑り眠りについた。
(寝るの早っ! )
はあ……それでも勇者から可愛い妹を救えたのはよかった。
でもこのままじゃ私の作った、小説が完結しない。勇者が魔王を倒せなくて世界が救えない。あと1話で魔王を倒す予定だったのに、こんな可愛い妹になってやってくるなんて。魔王を救って勇者も世界を救えるみんなハッピーな世界を作れるのかな。
スピィースピィー
(……ゼノちゃんの寝息! なんで可愛いの!ハアハア)
その前に私が悶え死にそうだけど。