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不死属性の生き方  作者: ひみゃらや山脈。
第三章 魔大陸編
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第三十話 インテリジェンスソード

 目が覚めると、自分がこの数日カトウに用意され、泊まっていた部屋で寝ていたことに気がついた。

 フトンに畳と、日本の香りに包まれて眠ることのできるこの部屋を非常に気に入っている。


「ふわあああ...ふぅ」


 大きなアクビが出てきた。

 意外にも気絶から目覚めたにしては気分爽快寝起きスッキリだ。

 ....倒れたときに打った頭は痛いんだけど。


「お。起きたかい」


 そう扉から聞こえた。

 そちらを見ると、カトウがお茶とミカンのようなものの乗ったお盆を手にもって立っていた。

 どうやらタイミング良く部屋に入ってきたらしい。


「ああ。気分爽快だよ」

「ははっ、悪い氣も良い氣もミサキに吸われてたからねえ。逆に健康になったかもしれないね」


 そう冗談を飛ばしてくる。

 なんとなく可笑しくなって俺も笑ってしまう。


「フフフ。出来れば頭を打たないように寝ながら血を吸わせたかったね」

「次があったらそうするといいよ。食べるかい?」


 そうお盆に乗ったお茶とミカンを勧めてくる。

 寝起きで喉が渇いていたので嬉しい心遣いだ。


「うん。あと出来れば血も貰えないかな」


 結構な量を吸わせたからか、血が欲しくて仕方がない。

 なぜかカトウは驚いた。


「男でもいいのかい?」


 そう意外そうな顔をしたカトウはなにを勘違いしたのか自分の血を要求していると思ったようだ。

 基本的に容姿は味には関係ないのだが、噛みついて血を吸う、という行程上、やはり女で美人な方が俺としては嬉しい。

 なにが悲しくて加齢臭のしそうなオッサンの首に噛みつかなければいかんのか。


「いや、俺の荷物にある血袋を取って欲しいって伝えたかったんだけど....」

「ああうん。だよね。ちょっと待っててくれるかな」


 なんだか少し傷ついたような顔をして血の入った水筒を取りに行った。

 なぜか罪悪感を感じてしまう。

 ....でもやっぱりオッサンの血は嫌だなあ....

 味は問題なかろうと嫌なものは嫌だ。


 そんな事を徒然と考えていると、ふと、枕元に置いてある刀が気になった。

 飾り気のない鞘に収まっているそれに何だか他人とは思えない感覚を覚える。

 刀に使う表現ではないと思うが。


 俺が血を注いだ刀は柄だとか鍔だとかがまだ付けられていない物だったのだが、この刀がそれだとなんとなく気づいた。

 オーラというかそんなのが出てる。禍々しいやつだ。


「何見てんのよ」


 幻聴まで聞こえてきた。


「あんまじろじろ見てんじゃないわよ」


 はっきりと聞こえてきた。


「あんたよ!ぶっさいくな面で私を見てるんじゃないわよ!ぶっ殺すぞ!」


 物騒な幻聴だ。


「むきぃいいいい!!!!自分で動くことの出来ないこの体が憎いっ!!!おいっ!○○野郎!!無視すんな!!!」


 頭のなかで伏せ字になるような言葉で罵られる。口の悪い幻聴だ。

 というか幻聴のボリュームが大きすぎて物理的に耳が痛い。コントローラどこー。


「無視か。そうか、無視か。いいよ、別に。くすん....」


 幻聴ちゃんのボリュームも落ちてきた。コントローラが無くてもなんとかなって大変結構だ。


 しばらくすると、カトウが戻ってきた。

 この頃になると、幻聴ちゃんも、あんたなんか主じゃない、とか、絶対に抜かれてなんかやらないんだから、とか小声でブツブツ呟くだけに収まっていた。

 怨念じみた声に耐えかねていたのでカトウの登場が嬉しい。


「いやあ、ごめん待たせたね。よく考えたら保管場所知らなくて結構探しちゃったよ」


 そう照れ笑いをするカトウ。

 そういえば教えてなかったな、と今更ながらに気付く。


「ああ、すまん」

「いや、いいよ。聞かないで取りに行った僕が悪かったよ」


 ほんとコイツは良いやつだ。

 俺は善人に恵まれているなあ。


「ところでミサキはなんで拗ねてるんだい?」


 ん?


「そうよ!聞いてよカトウ!コイツ私に対する態度がなってないわよ!武器と喋る口は持たないとでも思ってるのかしらね!」


 ぷんすかぷんすかと怒っている刀。

 そう、刀。

 どうやって発声してるのかとか疑問が浮くが、正直に言うとかなり不気味だ。

 武器だけに。


「....!ちょっとクソつまらないこと言ってるんじゃないわよ!」

「え、すまん。声に出てた?」

「私とあんたは深く繋がってるんだからあんたが自信持った思考なんかはこっちにも伝わってくるのよ!冗談のセンス壊れすぎよ!」


 なんだかこの村に来てから心を読まれっぱなしだ。


 カトウに説明を求める視線をむける。

 カトウは苦笑いをしていた。


「フランはミサキにちょっと規格外の量の血を注いだでしょう?血っていうのは魔力を濃く含んでるし、なにより、吸血鬼にとっての血液っていうのはもうその存在そのものだからね。剣精を呼び寄せて意志持つ剣、つまりはインテリジェンスソードになっちゃったんだよ」


 これがインテリジェンスソードとか冗談はよしてくれよ....

 俺の知ってるインテリジェンスソードは相棒な感じの憎めないやつだが、コイツはただの喧しい剣だ。喋れるメリットがない。


「あによ」


 顔がついていない刀のは表情なんか分からんが、まず間違いなく不機嫌だと判別できる声色でミサキは喧嘩を売ってくる。


「不良品を掴まされたなーって思ってたんだよ」

「なんですって!!」


「あ、ちなみにインテリジェンスソードに宿る剣精は魔力の提供者似た性質の精霊が呼ばれるって話だよ」


「どこがだよ!!嘘はよせ!!」

「そうよ!!どこがよ!!あんた目腐ってるんじゃないの!!」


 カトウはくつくつと笑うと、似てるじゃないか、と呟きやがる。

 いくら友とは言え、許せることと許せないことがある。


「だいたいこんな坊っちゃんに私が使えるものですか!」


 ミサキはそうほざく。


「あ?言ってくれるじゃねえか」


 俺はミサキを掴むと、表に出る。

 岩でもなんでも切って証明してやるよこのやろう。


「ああ、フラン!結構夜遅いからなるべく村から離れて試し切りしてね!」


 慌てたようにそう言うカトウに、俺は、わかった!と告げると全力で走って村を出た。

 吸血鬼の全力だ。ぎゅんぎゅん村を離れ、それほどたたずにルゥと出会った場所までやってきた。


「おう、こら。駄刀」

「誰が駄刀よカス吸血鬼」


 ....腹のたつやつだ。

 俺は大人なので叩き割りたい衝動をぐっと我慢する。


「今から俺がいかに強いのか教えてやるよ」

「へぇ~。言うじゃない。じゃあ使うと良いわよ」


 挑発するように鍔がカチカチと小刻みに揺れる。

 こんな事も出来るのかと内心少し驚きながらも、極力前に出さずにミサキを抜く。

 鞘から抜ときに少し突っかかったような感触があったものの、案外すんなりと抜けた。


「いったいわねえ!」


 文句を言うミサキを無視しつつ、その赤黒い刀身を高校の体育で習った型で手近にある雪の固まりに向かって振る。

 上段から降り下ろすだけの簡単な動作で振られたミサキはヒュウン!と風を切る音をたてるその一撃は目標にした雪を吹き飛ばした。


「どうだこのやろう!」


 今の一撃、相手がジャイアントタートルでもぶち殺せるものだったはずだ。


 柄が震えていることに気づいた。


「アハハハハハハハハハ!!!!!!!」


 雪が揺れるほどの爆笑をミサキが(からだ)を震わせながら発した。


「あは、ハハ....けほっ...!けほっ....!」


 どういう原理なのか咳き込むミサキ。


「あんた私を笑い殺す気なの?いや、そんな剣技だといずれ死ぬわね。あんたが。ぶふっ!」


 喋りながら吹き出す。腹が立つがここまで爆笑されたことがないので体が固まってしまった。


「私じゃなくて棍棒でも持ったほうが良いわよ。全然斬れてないじゃないの。たしかに今の一撃なら岩くらいなら切れるでしょうね。ぶっ細工に」


 ミサキは途端に真面目に語り出した。


「叩き切る剣なら扱えるでしょうけどね、私をそんな用途で使わないでくれないかしら。私は一応あなたの血で受肉できた身だけど、私にもプライドがあるの。優雅でない戦いに使われるなんてごめんだわ。それに力だけではどうにもならない相手だっているの。私は剣精としてそんな存在を沢山見てきたわ」


「そんな存在に殺された存在もね」




 ....かなり胸に響いた。

 フェリシアさんの姿が被って見えたのだ。


 俺はほぼ不死身だし単純な力もかなり持っている。

 だが、それは種族的な特徴だ。

 似たような存在もこの世界に存在するだろうなあ、とうっすら考えていたが、今まで出会った奴等には簡単に勝てたから調子に乗っていたのかもしれない。


 吸血鬼がこの世を征服していないことがなによりの証拠だろう。

 むしろフェリシアさんは、真祖でありながら敗北して引きこもっていた。


 俺も同じ道を辿るのか?

 そんなのは嫌だ。


 家族になったルゥ、レイ、レイナを、恩人でもあるフェリシアさんを。

 失うなんて嫌だ。


 それに恩を返すためにわざわざ魔大陸までやってきたんだ。道半ばで死ぬのは恥ずかしすぎる。


 今までが楽だったからといってこれからも楽とは限らないだろう。

 まだ完全に納得いっていないが、反省して悪いことはない。


「....すまん」

「ふん!謝ろうがなんだろうがスマートじゃないあんたに使われるのは嫌だからね!」


 完全にヘソを曲げているミサキ。


「まあ?ただの剣精だった私をこんな立派な身体に定着させてくれた恩はあるし?付き合ってはやるわよ」


 ツンデレかよ。まあ口には出さないが。


「剣精ってのがなんなのかは知らんが折角カトウが打ってくれた剣だしな。使ってやるよ」

「ああん?あんた素直じゃないわねえ。使ってください、でしょ?」

「あんま調子に乗ってるとここに刺して埋めるぞ」

「横暴!まったく横暴な使い手だわ!私も不幸ったら無いわね!」

「お前みたいな口の悪い剣精が憑いた俺のほうが不幸だ!」


 ぎゃあぎゃあ言い合いながら村に帰る俺たち。

 不思議とそんな言い争いも心地よかった。

そろそろフランちゃんにも苦労をさせようと思い、フラグを立てようとしたらなんか変な剣が出てきてしまいました。

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