16
あれ?まだ4日しか経ってないんだけどな?
「聖女様」
「うん」
カーラとシェフィールドが訪ねてきました。
変わらず広場のような場所に居る私を。
「全く読めませんわ」
「俺も」
「うん?」
ラグに座ってたから二人にちょいちょいと手をやると、ラグに座った。
「字が分かりませんの」
「翻訳魔法はないの?」
「そんな高度なの俺らは扱えない」
どうやら私の手紙が読めなかったらしい。
「ちょっと待ってね」
魔法陣を付与すればいいだけなんだけど、今は細やかなことがしにくくなってるから小さな紙を取り出して魔法陣を描いていく。
「はい、これに魔力流して」
二人に渡すと魔力を綺麗に流してくれる。
「………読めますわ」
「すげぇな、ほんと」
どうやら手紙を持参してたみたい。
「邪魔してはいけませんね」
「ありがと」
二人が帰っていき、室内は元の静かな気配に戻った。
カーラがフルーツを置いていったから剥いて食べる。
「ん、美味しい」
やっぱり世界は美味しいのが一番。
魔法陣は地道に完成形に近づいている。
だが、問題が起きた。
このままでは契約が結ばれない。
世界ではなく、土地に住まう人間たちとの契約になってしまう。
魂に反応するような魔法陣になっている。
世界には核がない。
魂やカケラのような核が存在しないんだ。
いや?あるかもしれない。
知らないだけで、あるのかも。
キョロキョロと室内を見渡すと窓が見えた。
カーテンが開いてある窓に近付き地面に降りると上から声が聞こえてくる。
素足になって世界を感じる。
どこかにあるかもしれない。
世界の核が。
もしかしたら寿命の核が。
どこ?
どこにあるの。
一体どこに………
「セラフィーナ」
久しぶりに名前を呼ばれた。
そちらを向くと心配そうな表情をしているコンラッドが居た。
「眠っていないと報告を受けた」
「そうなんだ」
「世界の消滅の前にお前が死ぬ」
「私は死なないよ」
「頼むから寝てくれ…食事もするんだ…」
足先から世界を感じているけれど、核のようなモノはまだ見つからない。
「神殿に戻せば寝てくれるか」
「寝ないよ」
「…」
「今の私に必要なことじゃない」
「必要だろう!」
ガシッと腕を掴まれた。
金の瞳が揺れている。
「分かった…消滅が迫っているのは分かった」
出会った日以来だと思った。
頬を撫でられたのは。
「尽力しているのも理解した」
泣きそうな顔だと感じた。
「だが体を大切にしてくれ」
私はなにを言おうとしたんだろう。
人間じゃないから眠らなくても大丈夫だと伝えるつもり?
そんなこと言っても通じないのに?
「セラフィーナ……」
なにを言ったところで信じてもらえないのに?
無駄な言葉を吐こうとしているの?
「ない」
「なにがだ」
「核はなかった」
世界に核はなかった。
それならば違う方法で縛らなければならない。
「お前には一体なにが見えている」
私も気になるよ。
コンラッドには私がどう見えているの?
「どうして我にはお前の視線の先が見えない…」
私はいつだって真実しか伝えていない。
「曇った心でいつまでも見てるから」
「…」
「私を見てたらそんなことにはなっていない」
「…」
人間には理解が出来ない。訳じゃない。
シェフィールドもカーラも信じてくれている。
「教えてくれ」
「私は伝え続けている」
「ならば素直に受け取ろう、だからもう一度教えてはくれぬか」
「素直に受け取るのは私を信じているからではないんだね」
「…神様が現れて証明がなされた」
「私を見てないね?」
一歩、引いた。
そして足に力を入れて、飛んだ。
広場があるバルコニーまで。
下を覗くと、傾いているコンラッドが目に入り、部屋へと戻った。
あの日から忘れずに手紙を届けている。
手紙を送ると必ず返事が返ってくる。
心温かになる手紙は大切に保管してる。
精霊がくれた花かんむりも大切に保管して、ラグに置いた。
いつまで経っても枯れない花を見ては、この花のように寿命のない世界を創ろうと奮起した。
「預言者様、本日は夜会の予定がございます」
「ドレスは手持ちのを着る、時間になるまで邪魔しないで」
「…かしこまりました」
どうしたら魔法陣は世界を認識してくれるか。
これが今の疑問だ。
世界の見方を変えなければならない。
世界とはなにか。
それは魔力の塊だと私は答える。
私の魔力と力で生まれ出る世界は魔力が敷き詰めてある。だから世界の魔力が薄れていくと消滅する。
ならばなぜ魔力で満たしただけでは世界は存続しないのか。
「お時間です」
時間があっという間に過ぎていく。
初めて創ったドレスを取り出し、魔法ではなく力によって一瞬で着替える。
扉の方を向くと驚いている人間の顔が複数あった。
広場から出ると前を歩いていく人間に着いて行く。
ああ、時間がない。
蕾だった花が咲いている。
窓から見ると花が嬉しそうにそよいでいる。
時間が足らない。
「綺麗だ」
窓から目を離すとコンラッドが居た。
「肘に手を」
軽く手を添えると両扉が開いた。
そして歓声が上がった。
どこか期待しているような、なにかを望まれているような視線が振り注ぐ。
段差の前で立ち止まったコンラッドは肘にあった手を持ち、誘導するように私を段差の上に2つあるうちの一つの椅子に座らせた。
「静まれ」
コンラッドも座ると声を張り上げた。
「我の運命であり予言の者の存在は確たるものとなった」
酒を取り出し煽る。
「…神が嘆いている世界の消滅を我々の力で消し去ろうぞ」
椅子の上に足を上げ、抱えるように座りもう一口酒を飲んで喉を潤した。
「今、我らは団結し協力しあう時!」
世界を一人の人間と認識してしまえば契約は簡単なのに。
「力を見せ、神に幸福を与えよう!」
扉が開いた時よりも歓声が上がる。
いつまでも続きそうな歓喜の声に顔をしかめる。
「眠らなくとも平気なのか?」
耳元で囁かれた声はとても単純だった。
心底不思議そうに聞かれた。
そんな声は初めてで、つい顔を上げた。
「食事をせずとも生きられる体なのか?」
その目はなぜか、私を真っ直ぐ見つめていると思える視線だった。




