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いつものように宴会をしていた。
楽しそうな我が子たちの顔を見ながら飲むお酒はやっぱり美味しいねぇ…なんて思いながらこの光景を楽しんでいると、泣きそうな顔をした子が目の前に現れた。
「どうしたの?なにがあったの?」
「………どうか………」
立ち上がり、頬を撫でると涙がほろり…と一つ零れた。
「どうか助けてください」
「いーよ」
うれし涙も零れた。
「ありがとう、ございます…」
「どうしたらいいかな?」
「世界の崩壊を……」
世界の消滅が嫌なのかな?
「消滅するのが嫌なら新しい世界と移し替えて──」
「私は!私は貴方様から頂いたあの世界がいいのです!」
どうしよう。困っちゃう。
世界の消滅を失くす方法なんて私でも知らない。
寿命は覆せないんだ。
それが世界の理。
「どうかっ……」
精々、新しい世界に移し替えることしかできない。
「このままでは亡くなってしまう」
「なにが?」
「私の……私の友が……」
「新しい世界に持って行けばいいじゃん」
「できません」
「もしかして、精霊?」
コクンと頷いた我が子にまたまた困ってしまう。
だって世界に縛られている精霊は世界の移動が出来ない。
それは世界にとって自然なこと。
世界と共に生まれ出た精霊は世界が消滅する時、同じく消滅する。
「お願いします!どうかっ、どうかっ、」
うーん。
困ったなぁ…
どうにかすることなんて出来ない。
「お母様っ」
でも、そうだね。
こんなに悲しんでる。
「やってみるね」
「ああっ…!ありがとうございます!」
悲しみに暮れて欲しくない。
それならやってみよう。
出来るかどうかは分からないけれど。
「居場所は用意致します」
「うん?」
居場所ってなんのこと?なんて顔を傾げてみるけれど、既に目の前から消えていた。
いつもの場所に座り、考えた。
世界の消滅をなくす方法を。
新たな世界を創り、そこに精霊を移動させることは可能か。
答えは否。
世界そのものに囚われている精霊は世界と同義。
だから唯一、人間が行う召喚方法でも精霊は他世界に行けない。
世界の消滅そのものを失くす、または伸ばす方法はあるか。
答えは否。
世界も生き物だ。
寿命あるものは必ず死す。
それが世界でも。
ならば延命しかない。
世界には魔力が籠っている。
私の魔力が。
だが、塗り替えることは出来ず、また、私が魔力を新たに流したところで実りがあるだけで、世界そのものは潤わない。
一体どうすれば世界の消滅を防げるのだろうか。
そんな風に数日は考え込んでいた。
ジャポンッッ!
『ん?』
私は今、いつもの場所で座っていたはずなのに、どうしてだか海の中のような場所にいる。
真っ暗闇の中、水が体に絡みつく気持ち良さだけ感じる。
息をすると、ゴボゴボという音に変わる。
体が沈むように、底へ落ちていく。
グンッ!
体が勢いよく、引かれた。
『居場所の準備が整いました』
子の声を聞きながら泳ぐように体を動かしていると、小さな灯りを見つけたから躊躇なく手を伸ばすと光が強くなり、思わず目を瞑った。
そして──
「本当に……」
「神託はあったのか……」
「聖女様がいらっしゃってくださった!」
パチッ、と目を開けると大勢の人間が私を囲うようにいた。
「神様の友などと…狂言かと思っていたが…」
その言葉に今居る世界を見てみると、助けを求めた子の世界だった。
もしかしてあの子の言う“居場所”って人間の元のこと?
「失礼」
人だかりの中、私の前に現れた男は我が子の加護を持っていた。
「世界の危機に訪れてくださった聖女様に感謝を」
そう言い、跪いた男には似合わない姿だと思った。
緑の髪に瞳は快活そうに笑う姿が似合うと咄嗟に思った。
「“居場所”は既に整えてございます」
やはりあの子がしたことなんだと納得した。
「あなたはあの子の友達?」
「ディオニュソスのことならそうです」
この男もあの子の友達なんだ。
最近はあまり顔を出さなかったのは、友達がたくさん出来たからなんだね。
家族以外で関わりを持つ子は少ないから嬉しいな。
世界を楽しんでくれてるんだね。
「お手を」
手を掴むと立ち上がらせてくれた男はどこかに案内しようとしているのか、室内から出て行こうとする。
現状を把握する前に世界を感じてみたけれど…やはり消滅に近く、数十年足らずでなくなるだろうと確信した。
「ふふ」
「どうされました?」
わざわざ居場所を作らなくてもいいのに。
せめて出来ることをしようと行動したんだと思うと、笑みが溢れる。
ほんと、我が子は可愛くて仕方ない。
カツカツと靴音が響く廊下を歩いていると外の景色が見えた。
昼なのに薄暗く、砂埃が舞い視界を悪くしていて、土はひび割れ、きっと今生きる人間には花なんて馴染みがないんだろう、花が咲いている場所は僅かだ。
まさしく消滅前の世界の姿。
どうしたら世界を延命出来るのだろうか。
出来たとしても、こんな終わりを待つだけの世界に住みたくなるものなのか。
延命したところで世界が艶めく訳でも……ああ、私の魔力を敷き詰めたらいい。
そうだった。
世界は変わらないが、命なら芽吹く。
「花は好き?」
男に聞くと楽しそうな目をした。
やはりこの男には快活そうな顔が似合う。
「一度でいいから花畑を見てみたいです」
キラキラと輝く、その瞳こそ花畑より価値がある。
「聖女様!?」
窓から飛び降りた私は地面に足をついた。
素足で。
上からは聖女様と私を呼んでいるだろう声が複数するけれど、構わず大きく息を吸った。
「すーーーー………」
パチン!
両手を胸の前で合わせ、ゆっくりと息を吐き出す。
もう一度、息を思いきり吸い込んだ。
ドンッッッ!!!
地面に手を付けると、地響きが聞こえてくる。
大地が喜んでいるのを感じる。
手のひらから、足の先から魔力を世界に流し、まるで生まれたばかりの姿に生まれ変えていく。
徐々に、徐々に、
広がる。
やがて見えぬ大地へと。
花、開く。
土が潤い、空気が澄んでいく。
ザッと足音が聞こえそちらを向くと、子の加護を持った男がゆっくりと近付いてきた。
その姿を見て、イタズラをしたくなった私は男の足に絡みつくように草をポンッと生やした。
驚きに変わった表情を見て、まだまだというように草を生やしていく。
そして男が望んでいた花を。
一面に生み出した。
花々が咲き乱れ、男を囲う。
花の香しい匂いに釣られたのか、大勢の人間が建物から出てくる。
「うそ、だ……」
息を呑む音がした。
「これは………」
あと少し。
あと少しで大地が潤う。
木々が生えてきた。
空気が変わっていく。
ああ、やはり。
潤う世界は美しい。
けれど、これは表面だけに過ぎない。
世界の終わりが見える。
やはり魔力だけでは世界そのものは潤わない。
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