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第三章・第16話
【仮面のない空へ】
――それから、何年もの時が流れた。
かつて、
人々が“仮面”で生きていた世界は――
もう、ない。
街には、
素顔の笑顔があふれていた。
力の仮面も、
支配の仮面も、
もはや――存在しない。
そして――
今日は、祭りの日。
色とりどりの屋台。
笑い声。
太鼓の音。
子どもたちが、
走り回っている。
その顔には――
おもちゃの仮面。
ヒーロー、怪獣、動物。
力は、ない。
ただの“遊び”。
ひとりの少年が、
立ち止まって空を見上げた。
青い空。
どこまでも、高い。
少年は、そっと呟いた。
「……ありがとう」
隣にいた母親が、
不思議そうに聞く。
「……どうしたの?」
少年は、微笑んだ。
「……なんでもないよ」
また、走り出す。
そのとき――
空の向こう。
雲の間に、
ひとつの“影”があった。
誰にも見えない場所で――
Rは、そこに立っていた。
仮面のない、
本当の顔で。
少年の「ありがとう」が、
胸に、届いていた。
Rは、少し驚いて――
そして、笑った。
「……どういたしまして」
小さく、そう呟いて――
Rは、空に溶けた。
完




