第4話 昔は色々あったんだ
人には色々な話せない過去があると思うんだ。 そして、そんな過去に出会った人達が深夜に訪ねて来る時もある。
幼少の頃ずっと一緒に育ち暮らしていた竜族の女の子がじつは魔竜で、災いの呪いにより世界を滅ぼそうとしてたが。
倒したら正気を取り戻して俺の部屋に忍び込んで来たり。
(妾はしばらく。お主の部屋の隠し部屋に住み着くゆえ。何かあったら早急に呼ぶのじゃぞ……旦那様よ)
(誰が旦那様だ。ディア、俺の実家から早く出てって……何でいつの間に物置がこんなに豪華な部屋に?)
父さんに連れられて繁栄の森に住むエルフ族を飢饉から救ったら救世主とか言われて、そこの族長の娘と勝手に許嫁関係にされて、家に帰って来いと言われたり。
(じゃあ、また来るわね。レイン……逃げられると思わないでね。絶対に繁栄の森に連れて帰るんだから。許嫁の私にこれ以上恥じを欠かせないでよ)
(……いや。あれは父さんと君の家族が勝手に決めた事で、それに俺は魔法使いとしてこれからの人生をだな)
(うるさいうるさい~! 何も聞こえない~! しばらく貴方の家の庭の離れで暮らすから覚悟が決まったら来なさいよね。じゃあね)
(あっ! 待て。シンシア! 俺の話を最後まで聞けー!)
小さい頃、普通の猫と思い飼っていたメス猫が本当は幻猫の生き残りで、10数年家族として暮らしたり。
(ニャフゥゥ! レイン~、これからまた一緒に暮らせるニャア~)
(離れろ。そして、騒ぐなスピン! シエルが起きてこの状況を見たら話がややこしくなるだろう)
(フニャフニャ。何を恥ずかしがってのニャア? 昔はお互い裸でベッドで抱き合ってたのにニャア~)
(それは俺が小さい頃で、君が子猫時の話だろう)
(黄金の様な大切な思いでニャア~、じゃあ。スピンはまたこの家で猫としてリビングに居座るから、お世話よろしくなのニャア~! レイン……変化ニャンニャア)
ボワン~!
(ンニャア~!)
(あっ! こら! どこに行く気だ。待て! スピンー!)
昔、秘密組織と言うものに憧れて母さんと父さんの目を盗んでは夜な夜な人助けを行い。
盗賊や人攫いから助けた人達を仲間にし、正義の集団『嵐の稲妻』として、義賊ごっこをして、助けた夢魔の女の子を中心に暗躍してみたり。
(レイン様が創設されました『嵐の稲妻』は今や世界のどこの国や地域に影響力を及ぼす程に勢力を伸ばしております。このままいけば世界はレイン様の物になる日もそう遠くありません)
(……そうなのか。ダリアの冗談も年々、スケールが大きくなっていくんだな)
(冗談ですか? いいえ。全て事実です。レイン様……そして、レイン様がこの王都にご帰還された事で『嵐の稲妻』の本部もレイン様のお部屋の地下空間に引っ越しする事になりました)
(引っ越し? またいつもの設定というやつか?)
(設定? いえ。全て事実です。それでは私はこれから地下施設の視察がございますのでいったん失礼致します……ご主人様)
ガコン……!
(あっ! 待てくれ。ダリア、どこに行くんだ……俺の部屋の床に階段? 中に人があんなに居るのは何なんだ?)
人には色々な知られたくない過去がある。そう。この俺、レイン・アッシュクラフトにも色々な過去がある。
一流冒険者の父さんと一流の魔法使いの母さんの悪影響を受けて育ち。さんざんやらかして来た黒歴史が。
◇
夜が明ければ朝が来る。そして、朝が来れば家族揃って朝食を食べるのが家のルールだ。
「…………(ジーッ)」
昨日から家で一緒に暮らし始めたシエルが俺の顔を静かに見つめている。
参ったな。シエルには部屋でのあの光景をまじまじと見られてしまった。どう弁明するべきか。
「キューイ!」「ウニャニャ~」
小さいリトルドラゴンに化けたディアと子猫に化けたスピンが俺の膝の上でくつろいでいる。
「あら? そんな子達家に居たかしら? それにその子猫って。昔、家で飼っていたスピンに似てるわね」
「ん? ああ、どこからか迷い込んで来たんじゃないか? ハハハ……」
「…………(ジーッ)」
くそぉ! 母さん。絶対何か気がついているだろう。シエルの目がだんだん鋭くなってきてるしな。
「ふ~ん………そういえば。昨日の深夜、魔竜と聖者と聖獣と夢魔の気配がしたんだけど。レイン。貴方、何か知っているかしら?」
「……いや何も知らない」
俺は背中から大量の汗を滝の量に流し、母さんに嘘の報告をする。
「キュ~ル!」「フニャニャ~」
そして、ディアとスピンは俺に身体を嬉しそうに擦り付け始めた。
「……随分と懐かれていますね。レイン様。その子達はどちらもメスてすよね?」
「あ、あぁ、どこから入って来たんだろうな? 不思議だな」
「……はい。不思議です。深夜に見た可愛らしい女の子達と同じ気配を漂わせている子量竜と子猫が居るなんて不思議です……(ジーッ)」
クハァ?! 俺を見るシエルの目が一段と鋭さをました。
「ねえ? レインは知っているかしら? エリシア聖教の歴代聖女は皆、『神秘眼』を持っている事を」
「……神秘眼? あの真実を見通す事が出来るとかいう魔法かい? 母さん」
「そうそう。そうなのよ~! だからね。さっきから私やシエルちゃんの眼から見える貴方の姿は凄い事になってるのよ。レイン君~」
「……(ジーッ)」
「凄い事?」
額に青筋を浮かべている母さんと無表情で俺の所に移動し始めるシエル。いったん今の俺はこの2人からどう見られているというのだろうか?
「うんうん。シエルちゃん説明してあげてくれるかしら」
「……はい。アリシアお義母様……『聖罰』」
シエルの掌から神々しい光が放たれると同時に……
「……黒髪竜族の女の子と猫耳美少女に身体を押し付けられている状態ですね。レイン様……今、全てを祓います。『終焉』」
「待て! シエル! その技は君の最上級の破邪魔法……ゴオオアァ!」
「キューア?……キャアアア!」ボワン~!
「ニャア?……フニャア!!」ボワン~!
シエルの容赦ない破邪魔法を喰らいリトルドラゴン姿のディアと子猫状態のスピンが元の人型へと姿を戻してしまった。
よりにもよって母さんとシエルの居る目の前でだ。
「痛たたなのじゃ」
「ニャア~、死ぬかと思ったニャア~」
「……魔竜と聖獣様? それにこれは契約の印の気配。浮気は許しませんよ。レイン様」
「レイン君~、君には色々と聞くことが出来たから質問タイムの開始だよ」
「シエル、か、母さん。これは違うんだ。これはディアとスピンが勝手に暴走してだな。シエル……何をしている? や、止めろ! ギャアアア!」
俺はぶちギレシエルさんに拘束され、取り調べを受ける事になったのだった。
「……やはりあの光景は真実だったのですね。旦那。様にはい依る方達はこのシエル・バレンタインがお相手します」
なんて事を言ってシエルは静かに闘志を燃やし始めた。




