第34話 零《レイ》の断罪
《テレンシア美術館 地下神殿》
ここはテレンシア王国の初代聖女エリシア様が造られた地下神殿だ。ここへはマモンの『異空』の力で庭園から飛んで来た。
「第一の命令を下す。アスモールにかけた。呪いを解け。悪魔ホルマよ」
「レイン様。この悪魔ってまさか……」
「アスモール。少し静かにしていてくれ。直ぐに終わる」
目の前に神父服に身を包んだ悪魔ホルマが傷だらけの状態で倒れていた。
「ギィィ……それよりもここはどこなのです? そして、貴様は誰なので……ぎゃあああ!!」
「余計な事を喋れば。リヴァイに寿命を削られるぞ。ホルマ、言われた事だけを実行しろ」
「………(この力はは明らかに上位魔神の力。この男。複数体の上位魔神の力を私に使っているという事か? そんな馬鹿な)」
「〖事があるとは〗か?……聴こえているぞ。お前の心の言葉」
「キヒィ?! そんな心の声まで見透かされている?」
「もう一度言う。第一の命令だ。アスモールにかけた呪いを解け。悪魔ホルマよ」
俺はホルマへと近付き強めの口調で告げる。
「(こ、こいつ。本物だ! 500年前にいた奴等と同じ力を使ってやが……)ぎゃあああ! 私の寿命が100年消えたあぁ?」
「無駄な思考をするからだ。これ以上寿命をサターンに取られ取られたくければ。第一の命令を実行しろ」
「ギィィ……畏まりました。『解除』」
ホルマが『解除』と唱えた後、アスモールの身体が金色に輝きだした。
「これは……レイン様。なんだか心の中にあった嫌なモヤモヤがスゥーっと消えていきます」
「ああ、俺も確認したよ。アスモール……呪いが解けて良かった……後で『嵐の稲妻』の皆でお祝いをしよう。第二の命令だ。リーフ王女の髪飾りを返してやれ。ホルマ」
「あら? ここはどこかしら?」
俺がホルマにそう告げた瞬間。サターンの『異空』で飛ばされたリーフ王女が現れた。
「む、無理です! これは神父として王城へと忍び込み。やっと手に入れた王族縁の力な…ぐぎゃああ!!」
「それを餌にリーフを好きにするだと? 流石、悪魔。考える事がゲスだな……良いから返してやれ。それはリーフ王女の後継の証であり思いでの品だ」
俺は新たに発動した『暴風雨』でホルマの身体を攻撃した。
少年少女への人体改造。奴隷売買。テレンシア王国周辺諸国への薬物流通。盗賊行為。美術品の窃盗等々、上げればきりがない程に目の前の悪魔神父は優しそうな見た目とは裏腹に犯罪行為を散々してきている。
あれ程の犯罪歴。ベルフェが調べあげた紙を渡され見た時は度肝を抜いたものだ。
俺はそんな奴には容赦なき鉄槌を下すと昔から決めている。それが悪魔だろう。
「は、はい……お、お返しします。盗んでしまい申し訳ありませんでした。リーフ王女様……(くそっ! この男はどうなっているんだ? 何故、私の魔法が発動しない?)」
「あ、ありがとう……(何この人。まるで悪魔見たいな見た目じゃない?!)」
「第三の命令だ。貴様がテレンシア美術館に潜り込んで偽物とすり替えた《エリシアの指輪》を聖女シエルに渡せ。そうすれば貴様を解放してやる」
「ギィィ!! い、嫌です。嫌だ! これはもう私の…俺の物だ。これを使って今度はもっと高性能なキメラを量産し。何れはこの世界を手に入れ……」
ズズズ……!
「……ここは白い場所? 皆さん。ここに居らしたのですね」
シモンズの『隔離』の力で待機させていたシエルが俺達の前に現れた。
……やはり聖女には魔神達の『異能』も時間が経てば経つ程効果が薄くなっていく様だな。
「シ、シエルシャマァァ! よ、良かった! どうかこの私、エリシア教会所属の聖人候補たるホルマンをお助け下さい! 聖女のお力で弱気私をどうか。どうかあぁ!! この悪魔めに天罰をお与え下さい!」
「……ホルマン様。黒いコートの方が悪魔? それはいったい?」
悪魔ホルマはシエルが現れるなり助けを求める叫び声を上げ始めた。
「こいつ。ぬけぬけとレイ……レイ様に向かってなんて事を……」
「良い。アスモール……この程度想定内だ。『姿見』」
俺は右指でパチンっと指を鳴らした。するとエリシアの地下神殿はそれに反応して、ホルマンが行って来た悪事の記憶を映し出した。
〖ギヒヒヒ! これでお前もキメラになれるぞ〗
「嫌あぁ! 嫌あぁ!」
〖気持ち悪い姿だ。失敗作がぁ〗
〖隣国中心に薬物を流行らせろ。どれだけの不幸が起こってもしらんがな〗
〖金を集めろ。盗んでもな。全ては俺……いや。今日から糞教会の神父になるならば言葉遣いも多少は気を遣うか……私の為に全てを盗め! ギヒヒヒ!〗
「何だこれは? 何故、俺の過去が映し出されているんだ?」
「……この記憶はホルマン様の?」
「あれっ! 王城に盗みを働いてるじゃない」
「研究所の皆にあんな酷い事をしていたなんて許さない!」
「美しき乙女聖女シエル。これがその男……いや偽りの悪魔ホルマの正体だ」
「……ホルマン様が偽りの悪魔?」
「ああ、今夜のテレンシア美術館での一連な流れもコイツが仕組んだ事、魔神アザゼルを唆し。アザゼルが造り上げた肉体に憑依する為のな」
「ち、ぢかうのです。シエル様。私は敬虔なるエリシア信徒でございま……ぐぎゃあ?!」
「貴様はエリシア地下神殿の『暴風雨鎮魂歌』を発動したこの場所で度重なる嘘を吐いたな。ホルマよ。『粛清』……零の名をもって告げる。貴様は輪廻の狭間に潰えて消えろ。偽りの悪魔ホルマよ」
「ギィィイィ!! くそおぉ! 素顔も見せぬない卑怯者が何を言ってやが……」
ドスッ!
俺は悪魔ホルマの目の前まで移動すると魔力で造り上げた黒色の剣でホルマの心臓を貫いた。
「その前にエリシアの指輪は返して貰うぞ。これは彼女の物だからな」
「カヘェ?……いつの間に私…俺の目の前に現れて?……ギィィイィ!! それにその剣は悪を裁く断罪の剣?! 何故、お前がそれを操れる?…ギィィ……消える俺という存在そのものが消えていくうぅ……」
完全に悪魔の姿へと変貌していたホルマの身体がスゥーっと消えていく。
「……ホルマン様が悪魔で……消えていく」
「奴はエリシア教会を利用し君を手に入れようとしていた。《エリシアの指輪》を使ってな。本来この指輪は魔力を他者への回復させる為に初代聖女エリシア様が考案したものだ。それを魔力の暴走を引き起こす為に昔の悪人達は使っていたとはな。これ君に返そう。聖女シエル」
俺は浄化した《エリシアの指輪》をシエルへと手渡した。
「……ありがとうございます……あ、あの貴方はいったい?」
「俺か? 俺は君を護る者。レイだ……アスモール。君の呪いは大丈夫そうか?」
「はい。レイ…様。なんだが身体が軽いです」
「そうか。ならば帰るとしよう。ホームへな……ではな聖女シエルにリーフ王女よ。今宵の暴風雨はここまで……去らばだっ! フハハハハ!」
「か、カッコいいです! レイン様ー!」
俺はアスモールを抱き抱えるとエリシア地下神殿の結界を解き。皆を再びテレンシア美術館の庭園へと移動させ、夜空へと飛び上がり美術館を後にしたのだった。
「なんなのあれ? でたらめな力は?」
「……零様。カッコいいお方でしたね」
「はい? シエル。貴女、何を言ってるの?!」
などと去りし俺を見ながらシエルは顔を赤らめていたと後々、リーフ王女に教えられた。




