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戦士の娘

「鳥……?」


 空を見上げたシャムの言葉にアサドも空を見上げる。次の瞬間すぐさまアサドは署長に耳打ちした。


「奇襲?」


 署長はそう言うとすぐさま懐から電話を取り出す。アサドはそれを見るとシャムを見つめた。


「あれは鳥じゃない。小型の無人偵察機だ。特殊部隊の作戦行動時にその行動を把握するために飛ばす奴だ」


「なんでそんなものが」


 シャムの言葉に何も言わずにアサドは走り始める。


「シャム。お前は戦う必要はない。とりあえず小学校まで走れ」


「嫌だよ……またいなくなっちゃうの?また一人になっちゃうの」


 そう言って立ち止まる。アサドは手にした端末を操作しながらシャムの肩に手を伸ばした。


「確かにお前は騎士だ……戦うことができる。だがそれだけで終わってほしくない……それにお前を森で見つけたときから私の娘なんだ。娘に戦って欲しい親がいるものか」


「でも……」


「早くいけ!敵は近いぞ」


 『敵』という言葉にシャムは目覚めたように走り出す。そのまま一気に畑を抜け、田んぼを通り過ぎて小学校への道を急いだ。あちこちの家から署長やアサドからの連絡を受けたというように人々も同じく小学校への道を急いでいた。


「シャム!敵が来たのか?」 


 なかに一人長身の少女がシャムの前に現れた。その腰には剣が下げられている。


「グンダリ……何をする気?」


「敵をやっつけてやるんだ……お前の親父さんに教えてもらった方法で」


「無理だよ……敵は鉄砲を持っているんだよ……剣くらいじゃお話にならないよ」


 立ち止まったシャムをじっと見下ろすグンダリ。


「臆病だな、シャムは……どうせ何もしなくても殺されるんだ。一泡吹かせてやる」


 グンダリはそのまま人々と逆に村の入口に向けて走り出した。シャムはそれを追って後に続いた。


「お前ら何をやっている?」


「先生!」


 突然小学校の教師に声をかけられたシャムとグンダリは立ち止まった。教師の手には銃が握られている。まわりを見れば男達が銃を持って南の街道めがけて走っている様があちこちで見られた。


「先生……それは?」


「村の男衆はアサドさんに訓練されてきたからな。こういう時が来るんじゃないかと……お前達は小学校に集まれ」


 それだけ言うと教師はそのまま走り去った。シャムとグンダリは何もできないというようにその場に立ち尽くしていた。


「行くか……」


「グンダリ。やっぱり私達じゃ足でまといになるからね」


 仕方がないというように二人は小学校に向かう道を急いだ。


 遠くに銃声が響いていた。


「始まったね……」


「ああ」


 二人はぼんやりと不安そうに周りを見回しながら歩いている女子供達と一緒に小学校にたどり着いた。


「入ってくるかな……敵」


「大丈夫。お父さんは強いから」


 グンダリの言葉にシャムは即答した。幼児の鳴き声や不安そうに呟き合う女性達の声が小学校の校庭に響いていた。そのはるか向こうでは激しくなる銃声が響いている。


「ここなら大丈夫だね……でもなんでこんな何もない村を襲うんだろう」


 グンダリの言葉にシャムはぴくりと眉を動かした。


 シャムには覚えがあった。彼女の義父アサドが退役時にこの村の奥に運んだアサルト・モジュール。古代兵器のコピーとして先帝遼武が心血を注いで作り上げた『クローム・ナイト』。それが眠っていることはアサドとシャム、それに村長など一部の大人しか知らない話だった。


「でも大丈夫だよ……きっとなんとかなる」


 シャムの言葉にグンダリが頷いた。

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