無邪気な太子
少年が元気よく芝生の上で飛び跳ねている。その様子を満足げに眺めているのが花山院直永だった。
「康永…見ろ。遼弁殿は誠にこの東海がお気に入りのようだ」
日差しの強いテラスの中、籐で出来た椅子に座り満足げにブランデーを傾ける直永に、軍服を着た厳つい表情の花山院康永は苦笑いを浮かべていた。
「確かに子供は元気に跳ね回るのが良いとは思いますが……弁殿を引き受けたのは何のおつもりなのですか?」
冴えない表情の弟の康永の様子に直永はにやりと笑って子犬と戯れている少年遼弁を指さした。
「弁殿は遼霊様の次男。献様にもしものことがあれば皇位継承権は第三位ということになる」
「カグラーヌバ、ゴンザレスの跡を襲うおつもりですか……確かに弁殿には後ろ盾が必要ですが……南都はどう言ってますか?」
「南都がどう動こうが知ったことか!とりあえず央都に恩を売ってそのまま霊様の次を狙えればいい」
「随分と気が長い話ですな」
乗り切れないでいる康永の言葉に直永は苦笑いを浮かべる。
「なあに。酒色に溺れて節制のできない霊様はそれ程長くはないだろう。そうなればすぐにでもゴンザレスを追い落とせる」
「主君を諌めるのではなく貶めるとは……あまり感心できる話ではありませんな」
「まあ言うな。今の遼南はそういう状況なんだ」
そう言う直永に向かって少年がボールを投げる。笑顔の直永はそのボールを掴むとさらに遠くへと投げ返した。
「このままスクスクと育って頂ければ良い」
満足げに直永は頷いた。




