第4.2: ルーンの準備
【ルーンとチェリーのハンガー】
戦闘後、ルーンのフレームは自身のハンガーへと搬送された。
フレームはゆっくりとハンガーの中央へと移動され、やがてその周囲に、室内のプラットフォームが形成されていった。
プラットフォームがフレームの周囲に固定されると、シェリーは中央のプラットフォームへと歩み出た
ルーンがコックピットを開けると、シェリーは落ち着かない様子で彼に声をかけた。
「よ、よくやった!」
ルーンは席から立ち上がり、フレームから出た。
彼がフレームから出てくると、シェリーはルーンのもとへ歩み寄り、両手を使って彼の腕を何度も叩いた。彼女は何に対してか、かなり怒っているようだ。
「こらーっ、武器をそんなに乱暴に扱わないでよ!」
ルーンは一瞬きょとんとしたが、やがて彼女が何の話をしているのかに気づいた。
彼は、どこか後ろめたいような様子で、シェリーから視線をそらした。
「あぁ……すまない」
それからシェリーは、先ほどルーンが投げた壊れた盾の方へと指を向けた。
「今後、私の武器をもっと大切に扱ってよ!」
ルーンは90度に体を曲げ、シェリーに謝りました。
「はい、ごめんなさい!」
シェリーはルーンの突然の仕草に動揺し、どう反応してよいのか分からなかった。
「そ、そんなに堅苦しくしなくていいよ!」
それから彼女は端末の方を指し、ルーンにもついてくるよう合図した。
「とにかく、アオに対する次なる作戦について話し合おうよ」
シェリーとルーンの2人は、フレームの前に置かれた端末へと歩み寄った。
「アオさんの戦いを記録しておいたんだが、君のことだから、どうせ目を通しもしないだろう。だから、この話はこれでおしまいにしておくよ」
ルーンは応えた。
「よく知っているね」
2人は今、端末の前に立っている。
シェリーは端末を起動し、残っているものをルーンに見せた。
ルーンは身を乗り出し、顎に手を当てた。
「すごい!全然に何にもない!」
ルーンの隣にいたシェリーは、すかさず彼の肩を叩いた。
「誰のせいだと思うよ?」
彼女は目を閉じ、不平を言い始めた。
彼女の脳裏に、ルーンへの対応について「頑張れ」と声をかける人々の姿が次々と浮かんだ。
「以前のエンジニアたちがみんな、私に『幸運を』と言い残していった理由がよくわかりましたよ」
彼女はぶつぶつと不平を言い続けた。
「あなたは勝手し」
矢がルーンの胸に突き刺さった。
「武器は1つしか使えないし」
2本目の矢が、ルーンの胸に突き刺さった。
「それに、君の戦い方は無謀だよ」
そして、3本目の矢がルーンの胸に突き刺さった。
ルーンはシェリーを落ち着かせようとした。
「まあ、まあ」
「少なくとも、やることはそれほど多くないでしょ」
シェリーは怒りに目を大きく見開き、ルーンに詰め寄った。
「だからこそ、嫌なんだよ!」
「あなたといると、私たちエンジニアは全く評価されていないように感じてしまいますよ!」
彼女は怒りを帯びた、しかし非常に柔らかな声でそう言った。
ルーンは呆気にとられた。シェリーが怒る姿など、めったに見られるものではないからだ。何か答えようとしたものの、言葉に詰まってしまった。
「あ……あ……」
シェリーはため息をつき、話を続けた。
「今のところ、エンジニアである私にできるのは、ルーンさんが使っている武器を改良することだけだよ」
するとルーンの顔がパッと明るくなり、彼はすぐにシェリーの両手を掴むと、熱っぽく語りかけた。
「ほら!シェリーさんは全然、役に立たないなんてことないよ――」
シェリーは即座にルーンの主張を封じ込めた。彼女は非常に抑揚のない声で話した。
「何? 剣をアップグレードするだけよ?」
それから、彼女は少し声を大きくした。
「私が何のために工学を学んできたと思ってるんだよ?!」
今、ルーンにできるのはただ微笑むことだけだった。彼女が言ったことは、すべて真実だったからだ。
彼の戦闘スタイルの性質上、エンジニアたちにできることはあまりない。
彼は今、必死になって話題を変えようとしている。
「えーっと……予備の盾って、あったりするかな?」
シェリーは、まるでがっかりしたかのように、即座に額を端末に押し当てた。
「ない…」
彼女はそれから端末から身を離し、画面をいじった。
「私にあるのは、この小さな盾だけだ。腕を覆うには、かろうじて十分といったところだがよ」
「小さいですが、非常に丈夫なはずですよ」
するとルーンは、即座にまたシェリーの手を掴んだ。
「ほらね!?シェリー、最高だ!」
それを聞いて、シェリーは背筋に奇妙な感覚が走るのを感じた。彼女は即座に腕を上下に振り、ルーンに手を離させようとした。
「て、手を離してよ!」
シェリーは、ルーンに掴まれていた手をなんとか振りほどいた。
「と、とにかく……」
彼女は、再び端末をいじった。
「たった小さな盾1つでそんなに喜ぶなんて。私が他にどんなものを用意したか、見たらきっと驚くはずよ」
ルーンは即座に両手を大きく広げ、シェリーを抱きしめようとした。
「さすがだな!私のエンジニアは最高だから!」
ルーンがぐっと手を握りしめると、シェリーは即座に膝をつき、ルーンの抱擁をかわした。
彼女は右側に立ち、それから端末のボタンを押した。
続いて、機械アームがフレームの両端刃を取り上げた。アームは刃の両側を分解し、新しいものへと交換した。
今回の刃の色は、アオやリードの剣と似ている。形状こそ異なるものの、同種の刃であるようだ。
ルーンは、自身の新しい武器の姿を見つめた。
「見ただけで、それが非常に鋭く、耐久性に優れた武器であることがわかる」
シェリーはそれからルーンを突き放し、端末のところへ戻った。
「リードと俺で、あの刃を一緒に開発したんだよ」
ルーンは応えた。
「ということは……」
シェリーは応えた。
「ええ、彼らは同じ種類の武器を使うのではないかと思うよ」
「だから…」
ルーンはシェリーの方へと視線を向けた。
「だから?」
シェリーは端末を操作し、その画面上にコアを出現させた。続いて彼女は、それをフレームに組み込むためのボタンを押した。
「私も、自分なりに何かを作っているんですよ」
機械アームがフレームの上半分を解体し、そのコアを取り出した。続いて別のコアが取り出されたが、今度のコアは縁がほのかに赤く光っていた。
「新しいコア…」
2人は、フレームに取り付けられつつある新しいコアの方に目を向けた。
「君の戦闘スタイルを分析した結果……このコアは、純粋に力を高めるためのコアだよ」
コアの設置が完了すると、ルーンは一歩前へ出て、そのフレームをじっくりと観察した。
「だからこそ、君は最高のエンジニアなんだ」
「何としてでも勝つ」
シェリーは心配そうな表情でルーンを見つめた。彼女は、ルーンを落ち着かせようとするかのように、彼の方へそっと腕を伸ばした。
「い、いや……私の武器だけは壊さないでくれよ…」




