確かめる前の頁
「北では、私の作った明かりを使ってもらえたのね」
相談相手が席を離れた後、フルメアが言った。エノアは、仲間の声に顔を上げる。会議では連絡方法を北へ伝える協力を得られた。それでもフルメアは、話を終えたときとは違う表情で、自分の手を見ていた。
「何を作って、どう使ったかなら、説明できる。けれど、家の名になると、何を言えばいいのか分からなくなるわ」
エノアは彼女の隣へ視線を向けた。ラーメルトも聞いていた。北でフルメアが使った照明は、四人がその場で見ている。現在の仕事には、自分たちで確かめられることがある。家に昔下された判断には、同じように示せる答えがなかった。
「その判断が、何を根拠に下されたのかを知りたいの」
フルメアが顔を上げた。今度は、エノアではなく四人の間へ言葉を向けていた。
「知らないまま、今の仕事まで家の名から切り離して考えるのは……納得できないわ」
言い終えるまで、エノアは黙って聞いた。北で照明を使ったことは、昔の裁定を覆す証拠にはならない。フルメアも、その話をしているのではなかった。今の自分が何を作れるかを話せるのに、家の名を受け止めるところで言葉が止まる。その理由を確かめたいのだ。
ラーメルトが口を開いた。
「それなら、判断を残した記録に何が書かれているかを、まず確かめたいですね。どういう根拠で記されたのかも」
エノアは帳面を引き寄せた。会議のやり取りを書き直すためではない。フルメアが何を知りたいのかを、次に確かめる問いとして残すためだった。
過去の判断の根拠。それを記したものが残っているか、どこで読めるか。さらに、記載の出所をどう確かめるか。まだ答えのある相手も、読む紙も手元にはない。
「私は家のことを、知らないままにしたくない」
フルメアの短い言葉に、エノアは筆を止めた。記録を探すための問いは幾つかになる。けれど、先頭へ置く目的は一つだった。
レオンハイトは隣で、その行へ目を向けていた。何かを読みさえすれば解決する、という話を誰もしなかった。
エノアは帳面をフルメアの方へ向けた。北への説明を引き受けてもらった返事とは別の頁に、彼女の問いが残っている。次に確かめたいものが、四人の間で初めてはっきりした。




