最終章 何があっても私たちは御頭ミステリー研究会!
(道人、みんな…。ボクは…。)
華凛は誰かの震える両手を眺めていた。その誰かの視点が華凛にも見えていて、その誰かの深い悲しみも同時に伝わって来た。
周りは色んな色が混ざった光が凄い勢いで後ろへと流れて行っていた。
(ボクのせいだ、ボクがもっとうまく動いていれば…!)
『君』『責任』『違う』
誰かの視線の先に子供が浮いていた。青と緑の髪色をした子供だった。
(…? キミ、は…?)
『君』『巻き込まれた』『自転』『逆回転』『望むなら』『やり直せる』
謎の子供は誰かを指差して来た。
(…やり、直せる…?本当に…?)
『けれども』『記憶』『完全』『持ち越せない』『途切れ途切れ』
(それでも構わない…!何、自力で完全に思い出せばいいだけだ…!あんな悲惨な出来事が変えられるのなら、ボクは…!)
『わかった』『ご武運』
華凛は自分が意識を共有している存在が誰なのかわかった。
「…ゴースト!」
華凛はベッドから上半身を急いで起こした。周りを確認するとそこは暗い自分の部屋だった。となりにはミストが寝ていた。時刻は朝五時半だった。
「…ゴースト…。」
華凛は机に置いてある何の反応もしなくなったデバイスを手に取って見た。
あのMr.シルバーとの最後の試練から二日は過ぎたが、ゴーストはまだ帰って来なかった。
華凛は寝直さずにそのまま洗顔、シャワー、髪のセット、外着の着替え、朝食と流れるようにしていった。
「華凛、最近元気ないけど…どうかした?」
朝食を一緒に食べている依唯子が華凛の事を心配して来た。
「えっ?ううん、何でもないよ?お母さん、今日の目玉焼き、おいしいね!」
華凛は依唯子に心配させないように元気に振る舞う事にし、ご飯を急いで食べ始めた。
「そう…。なら、いいんだけど。最近お姉ちゃんとも忙しくてなかなか会わないでしょう?」
確かに天音は仕事が忙しいのか、あまり会えていなかった。帰って来ても夜中なので姉妹で会う機会は減っていた。
「確かに会えてないけどさ…。大丈夫、また会えるよ、きっと…。」
華凛は天音の事だけでなく、ゴーストやMr.シルバー、ラゴウの事も思い含めて口にした。
華凛は自室に戻って荷物を取りに行く。
「ミスト、ごめん!まだお母さんたちにミストの事をどう説明したらいいか思いつかなくてさ。今日も私を送った後に家に帰って来たらまた隠れておいて?」
華凛は両手を合わせてベッドに座って足をぶらぶらしているミストに謝った。
「うん、いいよ。気にしないで。さぁさぁ、早く。学校行くんでしょ?」
「う、うん…。」
「私、先に待ってるね。」
ミストはそう言うと窓を開けて飛び降りた。ミストを待たせてはいけないので華凛は急いで玄関に向かう。
「それじゃあ、お母さん!いって来ます!」
「はい、いってらっしゃい。」
華凛は衣唯子に手を振った後、階段を駆け下りてミストと合流した。
ミストは周りを警戒している。
「ミスト、今日も…?」
「うん、何かいる…。」
華凛とミストは誰かに監視されていた。正体はわからない。ミストが言うに敵意はなく、どうやらこちらが何かをしないように見張っているようだった。
攻撃して撃退しようにも姿が見えないのでどうしようもない。
颯、素子、八雲にも監視は付いているようで同じく襲っては来なかった。
三人共、デュエル・デュラハンの実体化や式神で自衛手段は持っているのでいざとなれば逃げる事ができるはずだ。
「何なんだろうね、一体…?」
「さぁね…。とにかく、なるべく急いで学校に行こう。」
華凛はミストに賛成し、普段通りに通学路を歩いた。普段通りとは言ってもゴーストと会話をしながらではなくなったので普段通りと言ってもいいものなのか、と華凛は何度も思ってしまった。
しばらくすると学校の校門前に来た。
「それじゃあ、華凛。また後でね。」
「う、うん。またね。」
ミストは笑顔で手を振ってこの場から去って行った。
華凛は急いで教室へと向かう。
「おはよう、華凛ちゃん!」「おっす、華凛!」「おはようでしょうや、華凛さん。」
教室に入ると素子、颯、八雲が椅子に座って出迎えてくれた。
「おはよう、みんな。その…大丈夫だった?」
華凛は一応、謎の監視する存在の事を聞いてみたが三人とも何もされてないと答えた。
「華凛の方こそ、大丈夫なのか?その…。」
颯はゴーストがいなくなった事を心配して来た。
「大丈夫、きっと帰って来るからさ。きっとね。」
華凛はそう答えると自分の椅子に座り、机のフックに引っ掛けた。
「さて、私らは老紳士殿に認められて晴れて御頭ミステリー研究会をやって行ける事になったのだが…。」
「これから待ち受けている事を考えると慎重に行動しないといけないでしょうや…。」
後一カ月もすればバドスン・アータスが攻めて来る。それはわかっているが、誰かに伝える事は難しそうだった。
もしかしたら、監視している存在はそれを妨害するために見張っているのかもしれないと華凛は推測した。
「それでも私たちは活動あるのみでしょ!」
「ミ、ミスト?」
ミストが華凛が見た事のない私服を着て現れ、机に紙を置いた。
ミストは紺色のYシャツに赤いネクタイ、赤いチェックのスカートを履いていた。
「ミスト、どうして…?」
「さっき言ったでしょ?またねって。」
ミストは腕を組んで堂々としていた。
華凛たちは机に置かれた紙を一斉に見る。
「ぶ、部活の設立申請書?」
「そう、まずは御頭ミステリー研究会を正式に設立する事!それが私たちの新たなスタートよ!」
ミストは右手で華凛たちを指差した。
「せ、せやけど、部員が五人やないと…。」
「ふふん、そのための私よ♪」
「はぁ?小娘、お前ここの生徒じゃ…。」
颯が言おうとするとミストはまた新たな紙を颯の顔の目の前に出した。
「て、転入届けまで…。いつの間に…。」
「ふふん♪この巻物は結構便利なのよ。」
ミストは得意げにMr.シルバーから奪った巻物を開いて見せて来た。
「こ、この娘、もう完全に巻物を使いこなしているでしょうや…。」
「使いこなすって言うより悪用とちゃうん?偽造やん、これ…。大丈夫なん?」
八雲と素子は恐る恐るミストの持っている転入届けを見た。
「勉強も大丈夫。ね?」
ミストは自分の胸に右手を二回当てた。
「そっか、ミストの身体の作り的に体内に紙を入れれば勉強も問題なく…。」
「何かカンニングっぽくないか、それ?」
「この世の中を生きていくために自身の能力をフル活用しているだけよ。さぁ!」
ミストは部活申請書の一番下に『霧野ミスト』と書いた。
「これは偽名でしょうや…?」
「霧が二重に掛かっとるやん…。」
「センスないな、霧の字…。」
「黙らっしゃい!それとさりげなく変なあだ名付けるな!」
ミストは変なあだ名を付けた颯を指差した。
「ほら、五人揃ったのよ?チャンスを活かそうじゃない。ね?」
「ミスト…。」
「ま、年長者として私がミストちゃんを見張っておくでしょうや。」
八雲はペンを取り出し、ミストの名前の上に自分の名前を書いた。
「もう、どうなっても知らんよ?」
「まぁ、良いではないか、素子。それも何だか刺激的だ。妙な奴が一人部員にいるのもミステリーっぽいしな。」
八雲の名前の上に颯、続けて素子が名前を書いた。
「誰が妙な奴よ?さ、部長?あなたが最後ですよ?」
「ぶ、部長?私でいいの?」
華凛は自分を指差すと颯たちは一斉に頷いた。
「部員全員異論なし!さ、部長、ご記入を。」
「しょうがないな、もう…。」
メンバー欄の一番上に華凛が名前を書いた。
「よし、これで完成!それじゃあ、今から職員室に提出に行くわよ!」
「ノリノリなところ悪いんやけど、ミストちゃんはなるべく目立たんようにな!」
華凛たちは席から立ち上がり、職員室に行こうとする。
「ねぇ、みんな。部活が正式に認められたらさ、今度の休日にみんなで遊園地エリアに行こう!」
「えっ?華凛、でも…。」
Mr.シルバーに勝った後、華凛たちはデュラハン・パークの遊園地エリアで遊ぶはずだった。しかし、ゴーストがいなくなってしまったので結局行かなかった。
「せっかくのプレミアムチケットなのにさ、使わなきゃ勿体ないよ!設立祝いって事でさ、ね?」
「華凛がそう言うんなら…。」
「よし、決まり!さぁ、みんなで職員室に行こう!」
「「「お、おぉーっ!」」」「おーっ、でしょうや!」
華凛たちは一応鞄を背負って教室を出ようとすると深也とばったり会った。
「何だ?何か楽しそうだな、お前ら。」
「あっ…。」
Mr.シルバーに見せられた歴史が変わる前の映像。そこで道人が深也が死んだと言っていた事を華凛は思い出した。
「こ、これから私たち、部活の申請に行くんだ…。」
「へぇっ、部員五人揃ったのかよ?やるじゃん。ま、精々頑張りな。」
「…うん、頑張る!私、頑張るから…!」
これから起こる事に対して自分たちに何ができるかはわからない。けれども、どんなミステリーが起ころうとも立ち止まらずに突き進んでいく。
それが凄惨な未来を変えられるきっかけになると華凛は信じる事にした。
華凛たちは職員室の前に立った。
「あ、待って。ちょっと待って、みんな!」
華凛は近くにある椅子に座り、机に部活申請書を置いた。
「白いペン、白いペン…!」
華凛はミストの名前の下の余白部分にゴースト、ルフォーゼ、激!勇者丸、リスペクトゲールの名前も書いた。
「えぇい、こうなったら勝手に入部させちゃえ…!」
続けて華凛はMr.シルバーやラゴウの名前も書き、椅子から立ち上がった。
「よし、いざ職員室に出陣!」
華凛たちは担任の先生に部活申請書を渡した。ミストがあまり目立たないように振る舞うのに苦労したが、担任の先生は部活申請書を受け取ってくれた。
「よし、とりあえず通った!後は結果を待つのみ、だね!」
華凛は今後起こる出来事は悲しいものだけではない、明るい出来事だってきっとあるはずだ、と部活申請書を渡した際に同時に願う事にした。
華凛は期待感を維持したまま授業を受け、あっという間に放課後になった。
まだ気が早いが、プチ部活設立祝いで五人一緒に御頭商店街に行く事になった。
今は五人一緒に本屋にいる。
「…! この本…。」
華凛はある本を見つけた。それはゴーストがやり直される世界の前に拾った本『Solve the case』だった。
「ゴースト…。よし!」
華凛はその本を手に取ってレジへと向かった。自分へのお守りとして、いつかゴーストと再会した時に一緒に読むため、色んな想いに胸にその本を買った。
それからの華凛たちは十糸の森や、水縹星海岸など色んな場所に行った。中には事件に巻き込まれる事もあったが、Mr.シルバーが認めてくれた御頭ミステリー研究会の団結力で数々の困難を乗り越えて行った。
「はぁ、はぁ…!大丈夫、みんな…!?」
数か月後。邪悪で禍々しい紫の空の下、御頭街は人が少なくなり、ボロボロになっていた。
街にはたくさんの謎のデュラハンたちが暴れ回っている。
華凛たちは例え人が少なくても、その残った人たちを救助するために戦っていた。
「全く…!こいつら、一体何体いるんだろうな…!」
「さぁ、もう何体倒したか覚えてない!」
颯が激!勇者丸で、ミストがナイフで謎のデュラハンたちを次々と倒していく。
八雲は式神で、素子はリスペクトゲールと共に自分を守っていた。
「がんばって、ルフォーゼ!」
「お任せを!」
華凛もルフォーゼを実体化させてデュラハンたちと戦っていた。もうかなり長い時間戦っているような気がした。
「ぐっ…!」
華凛は走っている最中に眩暈がし、右膝を地面に付けてしゃがんだ。
「「華凛!」」「華凛ちゃん!」「華凛さんでしょうや!」
「…!?」
華凛が急いで後ろを振り向くと背後から槍を持った謎のデュラハンたちに襲い掛かられた。
「やられる…!?」
『やられるの…?』
「…えっ…?」
華凛はこのやり取りに身に覚えがあった。華凛の腰に付けているデバイスが急に光り出す。
華凛に襲い掛かって来た謎のデュラハンたちは瞬く間に一掃された。
華凛の目の前に見覚えのある後ろ姿が映った。
「…ゴースト…?」
「そうだよ?久しぶりだね、華凛。」
華凛は久しぶりに見たゴーストの姿を見て涙を流した。
「…も…もう、遅いよぉぉぉ~っ…!」
「ごめんごめん、華凛。大分遅くなっちゃったね…。ほら、泣かないで?あの異次元空間を脱出するのに大分時間が掛かっちゃってさ。彼が迎えに来てくれて助かったよ。」
「えっ…?」
華凛は涙を拭いて、ゴーストの視線の先にいる人物を見た。
長身の男で茶色い帽子とインバネスコートを着た男だった。
「何、人捜しや猫捜しには慣れていてね。」
「まさか、あなたは…?」
華凛が小説でしか見た事がない、憧れの存在が目の前にいた。
その者はデュラハンたちに突っ込み、バリツや銃で敵をなぎ倒していく。
「…ははっ、本当にこの街はミステリーに満ちてるや…!」
「でしょ?華凛なら驚くと思ったよ。ボクも驚いたもん。まさか実在するなんて、ってさ。」
「ゴーストちゃん!」
素子たちが急いで華凛の元へと駆け付けた。
「ゴースト、心配させおって…!」
「ごめんよ、みんな…。ボクが来たからにはもう大丈夫! …ではないかな?こんな事態になっては…。もうボクが知ってる未来とは全然違うや…。」
ゴーストはそう言うとボロボロになった御頭街を見た。
「でも、大丈夫!未来は暗い方向だけじゃなくて、明るい方向にも変わっているとボクは見た!諦める事なんて全くないね!」
ゴーストは遠くで起こっている爆発を見てそう断言してみせた。
「その通りだよ、ゴースト!よぉーし、もうひと踏ん張り、頑張って行こうか!」
華凛は立ち上がり、デバイスを構えた。
「ゴースト、久しぶりのヘッドチェンジだけど、問題ないよね?」
「もちろんだとも!ボクは変わらず、キミの知っているお節介な白霊さんさ!」
華凛はデバイスからカードを実体化し、左手に持った。
「さぁ、御頭ミステリー研究会!明るい未来のために!今後もミステリーを解いていくために!いざ、ゴー!スト!」
華凛たちは己が持ち得る力を全て使って群がるデュラハンたちに果敢に挑む。
思い掛けない増援がやって来るのはもうしばらく後の事。
その時が来るまで華凛たち、御頭ミステリー研究会は決して立ち止まる事はなく、その先にある希望を信じて立ち向かった。
「どんな事が起ころうとも、私たちがSolve the caseに導いてみせる!絶対に、ね!」
そして、ミステリアスはディサイドへと繋がる
〇ディサイド・デュラハン
https://ncode.syosetu.com/n3397ka/




