61章 崩壊し始める結界
『アルウスが相手となるとこの五体じゃあっという間にやられちゃうな…。よし、五位一体だ!』
謎の子供がそう言うと白い首無し鎧武者たちは高く飛び跳ねた。
ミストの糸に操られていた首無し鎧武者も他の首無し鎧武者たちによって糸を引き千切られて問題なく跳んだ。
「何っ!?」
華凛が驚きながら上空を見ると五体の白い首無し鎧武者たちは変形を開始した。
四体が両腕、両足に変形して残った一体の新たな両手足となった。
「おぉっ!?合体した!?何かかっこいい…!」
「颯ちゃん、感動しとる場合やないやろ!」
目を輝かせる颯に対して素子はツッコミを入れる。
合体した鎧武者は一回り大きくなり、地面に着地した。
「ふん、図体が大きくなって操り甲斐がありそう!」
ミストはそう言うと両手から糸を飛ばしたが、合体鎧武者は五本の槍を一本に束ねて回転させ、向かって来た糸を切った。
「見てくれは派手だが!」
「その分、弱点もわかりやすい!」
Mr.シルバーと華凛がそう言うとクローブーメランラゴウとキャンドルゴーストも二人の意図を察した。
クローブーメランラゴウは両手に付いたブーメランを着脱して投げた。
合体鎧武者は向かって来た二つのクローブーメランを回転する槍で弾いてみせた。
「ブーメランはお断り?そう言わずに!」
ミストはそう言うと弾かれた二つのクローブーメランに糸を巻き付け、即興のストリングスブーメランを作って合体鎧武者に叩きつけた。
「援護するでしょうや!」
八雲も両手に持ったたくさんの葉っぱで式神を作り、合体鎧武者の頭と胸の顔面に向かわせた。
葉っぱで合体鎧武者の視界を奪う策のようだ。
「行くよ、颯!」
「うむ!」
キャンドルゴーストは霊体である事を活かして合体鎧武者の背後に即座に移動した。
颯も上がった身体能力を活かして激!勇者丸を両手で持って跳んだ。
「そう、四体のまとめ役となっている胴体役が弱点だ!」
葉っぱが舞う中、キャンドルゴーストはキャンドルホルダーブレードを、颯は激!勇者丸で挟み撃ちする形で合体鎧武者に斬撃を仕掛けた。
合体鎧武者は前後から身体を縦に斬り裂かれた。
ミストは糸に繋いだクローブーメランをラゴウに返してあげた。
『あ〜あ、ボディ役が頑丈な極亞たちなら問題ないんだけど…量産型兵士じゃ装甲面に難ありだな。けど…。』
謎の子供がそう言って右手の指を鳴らすと新たな弓矢を持った白い首無し鎧武者が地面から一体現れた。
四体の白い首無し鎧武者は破損した一体から分離した。
「なっ…!?」
キャンドルゴーストと地面に着地した颯は新たに現れた首無し鎧武者の元に飛んでいく四体の首無し鎧武者を目で追った。
『数的有利で再合体が可能なのが良いところかな?』
新たに現れた首無し鎧武者を起点として四体の首無し鎧武者はまた両手両足になって合体し、新たな合体鎧武者となって地面に着地した。
「くっ、これじゃキリがない…!」
謎の子供が後何体首無し鎧武者を従えているかわからないが、数によっては向こうは持久戦ができる。
ヘッドチェンジに限りがあるこちらは不利となってしまう。
合体鎧武者は弓矢で槍を矢にして颯に向かって射出して来た。
「颯!」
キャンドルゴーストは急いで颯の前に移動し、槍をキャンドルホルダーブレードで弾いた。
「すまん、ゴースト!」
「また来るよ!」
合体鎧武者はまた弓矢で槍を放って来た。
颯はバク転を繰り返して向かって来た槍を避け、華凛たちの元に戻って来た。
キャンドルゴーストも華凛たちの近くに浮遊する。
「華凛君、すまない…!これは完全に私の不手際だ…!まさか、あんな珍客が現れるとは…!」
Mr.シルバーも華凛たちの近くまで跳んで来て謝罪して来た。
「仕方ないよ、これも私たちがこれから研究会を続けて行く上での、立ち塞がる困難だと思っとく!」
「ふっ、頼もしい限りだな…!何とか君たちをこの場から逃したいところだが…!」
このまま持久戦に絡れ込むとこちらが不利になる。撤退を視野に入れるというMr.シルバーの意見には異論はなかった。
『さて、このまま持久戦をやるのは見ていて楽しいものではない…。どれ、これを試してみようかな?』
謎の子供はそう言うと木から立ち上がり、玉のような物を取り出した。
「何だ?何をするつもりだ…?」
『こうするつもりさ!』
謎の子供は玉を放り投げ、合体鎧武者の頭上に浮遊させた。
玉は周囲の物を引き寄せ始める。
「ちょっ、やばっ!?」
「…!? ミスト!」
ミストは玉に吸い寄せられそうになったのでクローブーメランラゴウが抱えて華凛たちの近くに着地した。
「あ、ありがとう…。」
クローブーメランラゴウは頷いてミストを地面に下ろした。
合体鎧武者は周りの木や葉っぱ、地面などを吸収し始める。
「こ、これは…!?」
合体鎧武者は周りの自然を取り込んで更に大きくなり、まるで巨大なゴーレムのような姿になった。
『あ、ちょっと想定外。この玉はまだ調整不足だな…。際限なく吸収し過ぎだ。ここに長居はできないかも。』
「何っ…!?私の結界が…!?」
Mr.シルバーがそう言うと華凛たちは周りを見た。
青空が暗くなって空にはヒビが入り始めた。
地面にも亀裂が入り始め、花々は枯れ始めた。
『ま、いっか。元々この結界は邪魔だから消すつもりだったし。手間が省けていいや。』
「くっ、何を呑気な…!」
謎の子供は呑気そうに木にまた座った。
Mr.シルバーは謎の子供を睨んで見せた。
「老紳士殿、結界が崩壊したらどうなるんだ?」
「そのまま元の世界に戻るんとちゃうの…?」
颯と素子は焦っているMr.シルバーを見て不安に感じたのか質問を投げた。
「私は地上世界の地面の中に結界を作っている…!上空を目指せば元の世界に戻れるが…!」
Mr.シルバーがそう言うとヒビが入った地面が割れ始めた。
地面の下には真っ赤な空間が広がっていた。
「下に落ちると出口を見つけない限りは永遠に次元の狭間を彷徨う事になる…!」
「な、何ぃっ!?」
華凛たちが驚くと同時にどんどん地面はバラバラになって浮遊し始める。
「みんな、あそこや!あの地面が一番大きいで!」
華凛たちは素子が指差した方を一斉に見た。
「よし、ひとまずあそこに!」
華凛たちは何とか浮遊する地面を飛び跳ねながら目的の地面に着地した。
クローブーメランラゴウやミストが素子たちが下に落ちないようにサポートしてくれた。
「とりあえず、やっぱり撤退が最優先な訳だけど…!」
華凛はそう言うとボロボロになった青空を眺めた。
「どうやって上空に上がって元の世界に戻れるかだ…!」
この中で飛行能力を持っているのはゴーストのみ。
華凛は何とかこの結界から脱出する方法を考える。
「あれの相手もしないとね…!」
ミストがそう言うと華凛は巨大ゴーレムの方を見た。
巨大ゴーレムは何本も植物のツルをうねうねとし出した。
「…大丈夫だ、私に良い考えがある…。」
「Mr.シルバー…?」
華凛はMr.シルバーの背中を見た。
「こうなったのも私の責任だ…。君たちを必ず元の世界に帰してみせると約束しよう…!」
Mr.シルバーはそう言うとデバイスを構え、隣にクローブーメランラゴウが立った。
『さて、この結界が完全に消えるまでまだまだ楽しませてもらおう。第二ステージ開演だ。』
焦る華凛たちを見ながら謎の子供は宙に浮かぶ木に座りながら笑みを浮かべた。




