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ユメトイアウ  作者: はねのこ
夢ルール編
9/10

第九話: 否定の利用

彩が静かに言った。

「否定を利用してみれば?」


俺と響は同時に顔を上げた。

「否定を……利用?」

「どういうこと?」


彩は淡々と例を挙げる。

「例えば、盾の中に一枚、木の板でも隠しておけばいい。相手に“盾は壊れる”と否定されても、木の板は盾じゃないから残る。その板が攻撃を防いでくれるでしょ?」


俺と響は顔を見合わせた。

「……あっ!」

「確かに、それ盲点だった!」


今まで俺たちは、盾=絶対的な防御と考えていた。だから壊されたら終わりだと思い込んでいた。

でも、理想を重ねて複数仕込んでおけば――片方を否定されても、もう片方が残る。


「なるほどな……理想を多層的に組み合わせれば、簡単には破られない」俺は感心して呟いた。



彩は小さく頷く。

「そう。理想は脆い。でも工夫すれば、矛盾を利用できる」


俺たちは思わず笑みを浮かべた。

まるで迷路の出口を見つけたみたいな感覚。


「よし……試してみよう!」

俺はすぐに理想を思い描いた。

目の前に大きな盾を造り出し、その内側に木の板を一枚仕込む。

外からは見えないが、確かにそこに“二重の守り”が存在していた。


「響、ちょっと殴ってみてくれ」


「おう!」

響が勢いよく拳を叩きつける。


――バキンッ!


盾は粉々に砕け散った。

だが、その奥から木の板が姿を現し、攻撃を受け止めていた。


「おおっ!残ってる!」

響が目を輝かせた。


俺も思わず声を上げた。

「本当に防げた……!」


彩は少しだけ口角を上げたように見えた。

「言ったでしょ。否定を利用すれば、可能性はいくらでも広がる」


響は拳を振りながら笑った。

「これなら、あの謎の男にだって対抗できるかもしれない!」


俺は頷いた。

まだ道のりは長い。でも――

ようやく“勝ち筋”を掴んだ気がした。

響が手を打った。

「じゃあさ、炎の玉の中に石を仕込んだらどうだ?炎が消されても、石は残って相手にぶつかる」


俺は目を見開いた。

「それ……めちゃくちゃ分かりやすい!」


響は得意げにニヤッと笑うと、掌に赤い炎を灯した。炎の中心には小さな石が潜んでいる。

「よし、夢路。否定してみろ!」


「わかった」


火球が一直線に飛んでくる。俺は集中して心の中で強く念じた。

――炎は消える!


――ボウッ!

炎は音もなくかき消えた。だが、その奥から石が弾丸のように飛び出し、俺の盾に直撃する。


ゴンッ!


「うわっ!」思わず後ろにのけぞった。

「よっしゃ!」響が拳を突き上げる。


俺は驚きながらも、思わず笑みを浮かべた。

「すげえ……本当に通った!」

「でしょ?これなら“否定されても攻撃を残せる”ってことだ」


彩は腕を組んだまま、淡々と口を開く。

「悪くない発想ね。」


「でも、これで俺たちにも戦える手が見えてきたな」

「うん!」響も力強く頷いた。


交差点の風が吹き抜ける。

今までただ無力に怯えるしかなかった俺たちに、ようやく反撃の可能性が見えてきた。


――次にあの男が現れた時こそ、俺たちは負けない。

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