お手伝い
「これで、確認されている大型は最後でしたよね?」
目の前で灰になる大型の魔物を見つめながら、モナルカはティトルに問いかける。
「はい、その後の報告でも新しい魔物の群れはいくつか発見されていますが、大型の魔物は確認されていません」
「そうですか。それで、ノーア荒野に到達した魔物の群れはどれぐらいですか?」
「そうですね…」
頬に人差し指を添えて、魔物との戦闘前に受けた報告を思い出そうとするティトル。
「大分到達しているみたいですね。順調に到達した魔物は魔力に還元されてますが、それでもまだ足りてないようです。まぁ、このままいけば予定より少し多くなりそうですが」
ギルド本部のメンバー達は何をやっているのやらと言いたげに肩をすくめると、首を横に振るティトル。
「そうですか…予定通りに大型は倒しましたし、後はこちらの好きなように動きましょうか」
どこか遠くへと視線を向けて呟くモナルカ。
「モナルカ様の御随意に。わたしはどこまでもモナルカ様について行くだけですから」
恭しく礼をするティトル。
「ありがとうございます。それでは、魔物の数を調整しやすいように、ノーア荒野近くまで移動しましょうか」
「かしこまりました」
そう言うと、モナルカはノーア荒野方面に向けて歩き出す。ティトルもその後に続く。
「魔物の総数は後どれぐらいなのでしょうね」
空へと視線を向けたまま、独り言のようにモナルカは呟く。
「…正確な数字は、わたしにも分かりません。ただ、前の世界の時の数と、今までの経験から考えますと、現在確認されている魔物のおよそ倍程の数が残っているかと」
隣を歩くティトルは、視線だけをモナルカに向ける。
「そうですか、今の魔物を殲滅した後に、同じ事をもう一回と……私達は大丈夫ですが、ギルドの方々には無理そうですね」
「はい、既に限界が近いようですから」
「……ギルドの方々には退いてもらって、ノーア荒野で私達が迎え撃つしかないですかね?」
視線を空からティトルに向けるモナルカ。
「それが一番手っ取り早い方法ですが、魔物との戦闘で要らぬ消耗をしては、世界を消滅させる者との戦闘に影響が出るかも知れません。それ以前に、ギルド本部側が大人しく退くとは到底思えません…」
小さく首を横に振るティトル。
「ま、そうですね。それなら、剣にも働いてもらった方がいいですね。後はお手伝いを創りましょうか」
「お手伝い、ですか?」
「ええ、分身というか、土から人形を創ろうかと」
地面に視線を移すモナルカ。
「………はぁ、モナルカ様はそんな事も出来るのですか、まるで神のような能力ですね」
呆れた顔でモナルカを見るティトル。
「神かどうかは分かりませんが、こういう人手を増やす力ってのは使い勝手が良いのでね、習得する為の努力はしましたね」
何でもない事のように、あっけらかんと言い放つモナルカ。
「はぁ。…では、その作戦でいきましょう」
「それじゃ、始めましょうか」
そう言うと、モナルカは地面に手をついて、人形を創りはじめるのだった。




