いいお友達
「フフフ、ミリは元気そうだったわね」
『夜天光』のギルドハウスから南部西門に行く途中、サラは嬉しそうにエドワードに語りかける。
「あぁ、そうだな。周りもいい人そうだったし、安心して父さんと母さんに話が出来るよ」
ほっと安堵の息を吐き出すエドワード。
「そうね。フフ、いい人といえばカルマさんとミリは上手くいくかしら?」
「上手く…ね、可能性はあるんじゃないか?恋人と言ってはいたが、今はまだいいお友達って感じだったけど」
「2人とも分かりやすかったわよね。でも、ミリの方はまんざらでもない感じだったわね」
「そうだな、本人はまだ自分の気持ちを理解してない感じだったけど」
しょうがないな。というように首を横に振るエドワード。
「あの子は昔からそういうところがあったものね」
「まぁ、ミリはまだ若いからな、もう少し歳を重ねたら自分自身が理解出来るようになってくるさ」
「そうだといいのだけど……あら?」
話の途中で何かに気づいたサラは、言葉を切ってそちらに視線を向ける。
「どうした?」
そんなサラの視線を追うエドワード。
「あの人は…」
視線を追った先でエドワードはサラが何に気をとられたのかを理解する。
視線の先には見知った黒髪の少年が歩いていからだ。
「あそこに歩いてる方はモナルカさんよね?」
「あぁ、そうだな。―――モナルカさん!」
サラの確認の問いに頷くと、モナルカに声を掛けるエドワード。
「おや、エドワードさんとサラさんじゃないですか、珍しいところでお会いしましたね」
モナルカは振り返ると、2人に笑顔で挨拶する。
「お久しぶりです。まさか王都でモナルカさんにお会い出来るとは」
思わぬ再会に喜ぶエドワードとサラ。
「お2人ともお元気そうでなりよりです。今日は商売で?」
一瞬思わぬ再会に驚きはしたものの、相変わらずいつも通りのモナルカ。
「はい、それと妹に会いに」
「妹…というと、ミリさんですか?今は王都にいらっしゃるんで?」
「ええ、そうですわ。今ミリは王都でギルドに入ってまして」
ミリのことを思い出して、嬉しそうに答えるサラ。
「それは楽しみですね」
「いえ、もう会ってきたところでして、今は挨拶を済まして国に帰るところです」
「そうでしたか、その様子だとお元気だったようで」
「ええ、元気過ぎるぐらいでした」
ころころと笑うサラ。
「なるほど。しかし、奇遇ですね、私の方は兄ですが、私も家族に会いに来たところなんですよ」
「ご兄弟がいらしたのですね」
モナルカの言葉に軽く驚きを表すエドワード。
「ええ。といっても私の場合は兄が1人だけですけど」
エドワード達の兄弟の多さを思い出し、冗談めかした微笑を浮かべるモナルカ。
「その兄もここ王都でギルドに入ったらしく、そこにもう少ししたら訪ねる予定でして」
「おや、それは楽しみですね」
「ええ。しかし、つい長話をしてしまいました」
そう言って空を見上げるモナルカ。
晴れ渡った空に昇る太陽は、まだまだ中天には届かないけれど、人々が活発に動き出すには十分な高さに昇っていた。
「今から帰郷されるなら、これ以上は足止め出来ませんね」
残念そうに首を左右に振るモナルカ。
「また家に来てくださいよ、家族みんな会いたがってますから」
そう提案するエドワード。
「そうですね、では機会があれば」
その申し出にゆっくり頷くモナルカ。
その後、モナルカはエドワードとサラと簡単な別れの挨拶を交わすと、そのまま別れる。
「さて、まだ予定には時間がありますし、もう少し王都を調べてみますかね」
そう言うと、石畳を歩くモナルカの足音は無くなり、そんなモナルカに意識を向ける者も誰もいなくなるのだった。




