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三日鷺~ミカサギ~  作者: 帝 真
第10章 変化
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変化・3

 春明の動揺に、雄二が目を細めた。


 ――やっぱり春明さんも、どっかでアイツを疑ってる


 「……あの人が言った通りだ」


 雄二は小さく呟いた。


 「春明さん。俺は、あんたを恨んでる訳じゃねぇし、敵対したい訳でもねぇ。ただ、斗真が信用ならねぇ。そんな奴の三日鷺にされてる灯乃をそのままになんかしておけねぇんだ。それに――あんただって」

 「雄二君……」

 「春明さんだって、奴にどんな命令をされるか分かんねぇだろ? 既に操られてるかもしれねぇし」

 「……それは、ないわ」

 「確認できねぇだろ?」


 二人の真剣な目がかち合う。

 互いに一歩も引かない様子で、けれど春明の方が僅かに揺らぎを覚え、雄二が追い込む。


 「春明さん、俺たちに協力してくれねぇか? 灯乃を返して欲しい」


 決して冗談ではなく発せられた雄二の言葉。

 どういう訳か彼の方が有利な立場になっているようで、春明は苦笑する。

 

 ――本当に痛い所を突いてくる。あたしを煽って、取り込もうとしてくる。でも……


 春明は思った。

 斗真が誰かを操ろうとするなら、きっとそれは灯乃を守る為だろうと。

 そして、自身の欲の為に操ろうとすることは、絶対にないと。


 ――だってそれが彼なのだから。それだけは絶対に変わらない

 

 「……悪いけど、あなたたちに協力する気はないわ」

 「何で?」

 「言っとくけど――あなたたちが思ってる程、あたしと斗真君は浅い仲じゃないの。あたしを取り込めると思わないで」


 春明の様子が変わり、迷いない言葉が彼を奮い立たせた。

 けれど、それが分かっていたように、雄二はやっぱりと呟く。


 「……そうか。あんたには少なからず感謝はしてたんだけどな」


 仕方がないとばかりに雄二は春明を睨み付けると、次の瞬間、それが合図であるかのように、突然ダダダッと慌ただしい足音が迫ってきて、バンッと勢いよく襖が開いた。


 「春明ちゃんっ、逃げて!」

 「え……っ!?」


 そこから酷く慌てた様子の亜樹が飛び込んできて、しかし春明が驚く間もなくすぐに倒れ込んだ。

 それでやっと春明は異変に気づく。

 今まで従ってくれていた筈の使用人達が、雄二側につくように亜樹を気絶させて捕らえ、春明の四方を囲み刃を向けてくる。

 まるで春明の方が、敵地にいるかのよう。


 「これは、どういうこと!?」

 「私の指示だ」


 すると、そこへ樹仁が入ってきて彼の前に立つ。

 

 「叔父様……あなたが何故?」

 「春明。お前を捕らえるのには少々骨が折れる。斗真がいない今が丁度良い機会と思ってな」

 「あたしを捕らえる? どういうことです!?」

 「我らにとって、おそらく一番厄介であろうからな」

 「我らって……!?」


 何がどうなっているのか分からず、春明は戸惑いながらも、とにかくここを離れるべきと思うが、それも読まれていたのか雄二が自分の首にクナイを向ける。


 「逃げられねぇよ。俺がいるんだから」

 「っ……!」


 *


 その頃、灯乃とみつりは学校に着き、更衣室で着替えて体育館にいた。

 しかしあの女子達の姿が見えない。

 もちろん雄二も。


 「今日、お休み?」

 「……」


 首を傾げる灯乃を他所に、みつりはハァとため息を吐いた。

 どうせ春明の仕業だろう。

 みつりはそう思って、特に気にせず仕事に取りかかったが、しかし。


 「あれ……誰も来ない?」


 準備を終えても、雄二達はおろか他の部員も来ない。

 やって来たのは楓だけで、結局時間が過ぎても体育館は静まり返ったまま、まるで灯乃達だけが取り残されたようだった。

 不審に思い、皆で顔を見合わせる。


 「今日、朝練なかったっけ?」

 「そんな訳ないでしょ、大会前なんだから」

 「おかしいですね。仲間の姿もないなんて」


 楓と同じように、部員として入り込んでいた者達もやっては来ず、顔を顰めていると、その時。



 「――今日の朝練は、お休みですよ」



 「「「……え?」」」


 突然どこからか声がして、急にロープ状のものが楓を縛り上げた。

 何かの罠だろうか、なかなか引きちぎることができないようで、彼はその場に倒れる。

 すると――そんな楓の背後から知っている顔が姿を見せた。


 ――あれは……!


 「そんな……どうして……!?」


 まるで幽霊を見るかのように、灯乃は硬直する。

 そこに現れたのは――朱飛。

 そして、


 「ぐっ……!」


 彼女に気を取られているうちに、別の黒い影がみつりの腹へ一撃食らわせて気絶させた。

 その影はみつりの体を寝かせると、灯乃の方を振り向く。

 その顔には――般若の面。


 「何で朱飛と一緒に……!?」


 しかし、灯乃が困惑して後退るも、般若面の女がその乱暴的な行動とは打って変わり、灯乃に対しては穏やかな口調で優しく話しかけてきた。

 まるで、親しい者と話すように。


 「慌てないで。あなたには何もしないから」

 「え?」


 妙な馴れ馴れしさを感じて灯乃はキョトンとすると、般若面の女は周りの緊迫を解くように、ゆっくりと面を外した。

 現れたその素顔に、灯乃は衝撃を覚える。


 「お……お姉ちゃん……!?」

 「灯乃。助けに来たの、一緒に来て」


 般若面の下には、灯乃の姉である陽子の顔があった。


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