飲酒、そして試合
「この町はなんて町だ?」
「レリックの町です。いい所ですよ。」
「へ~。楽しみだね。」
ジュストの件から数日経ち、次の町にたどり着いた。このレリックの町は大陸で一番北にある町だ。
「なら危険じゃないのか?幹部に近いんだろ。」
「ある程度は危険ですけど、今の所たいした事は起きてないみたいです。」
「起きてからじゃ遅いんだぞ。」
「いや、私に言われても。」
町は活気に満ちている、訳でもなかった。が、元気が無い訳でもない。普通の町だった。
「よう!お前ら旅の者だろ。良かったら一緒に酒場に行かねえか?」
「あんた誰だよ。」
「俺はキリル。レリックで兵隊やってんだ。怪しいモンじゃねえよ。」
「確かにいい人そうだね~」
「お、譲ちゃん分かるか?」
「うん。ねえ時雨、行こうよ。」
「でも俺たちまだ、酒飲んじゃダメだぞ。」
「いいのいいの。何とかなるって。」
結局酒場へと連れて行かれ、酒を飲んだ。
「いい飲みっぷりだぜ、譲ちゃん。」
「イエ~イ。ノッてるよ!」
「おい木芽、飲みすぎだよ。もう止めろって。」
「あのね時雨、あんたね強いからって調子に乗っちゃダメだよ!」
「はあ?なに言ってんだよ。」
「これから幹部潰すんだから、気ぃ引き締めなさいよ!」
「おお!いい事言うね。よっしゃ、俺も負けてられねえな!」
その夜、木芽が酔いつぶれる前に、キリルが倒れた。時雨たちが、二人を宿へと連れて行った。
「はぁ、疲れました。」
「木芽がこんなに酒飲みだったとはな。」
「ホントですよ。キリルさんより飲んでましたね。」
「寝よう。疲れた。」
「そうしましょうか。お休みなさい。」
次の日、木芽に見事に二日酔いが襲った。
「う~ん。起きれないよ~。助けて時雨~」
「バカ。だから止めろって言ったんだよ。」
「もうお酒飲まない~。飲みたくない~」
「雪消さん、これ飲んでください。たぶん二日酔いに効きますから。」
「リリーちゃん、ありがと~」
隣の部屋から、キリルが来た。
「元気か譲ちゃん、って二日酔いか。ま、あんだけ飲めば流石にな。」
「キリル、どうしたんだ?」
「シグレとか言ったな。なあ、俺と勝負しないか?」
「何でだよ?めんどくさいな。」
「そう言わずに。お前剣士だろ。相当強そうだからさ。」
「!何で俺が剣士だと?」
「オーラっつうのかな、そんな感じがするんだよ。譲ちゃんは銃士、そっちのチビは魔道師だろ?」
「誰がチビですか!人並みの身長ありますよ!」
「すまんすまん。で、どうする?やるか?」
(オーラとか、そんなの分かるもんなのか?でも、本当なら強いぞ、コイツ。)
「いいぞ。やろう。」
「そう来なくっちゃ。」
宿の裏の空き地で試合が始まった。木刀を持ち、両者構える。
「お前も剣士なんだな。」
「おう。こう見えても町一番だぜ。」
「じゃあ、始めますよ。レディ、ファイト!」
「遠慮無く行くぜ!」
「来い。」
キリルは中々の速さで剣を振り上げた。
(速いな。だけど、問題なしだ。)
「秋風流抜刀術、燕返し!」
柄で弾き胴を薙いだ、つもりだったが、弾き切れなかった。
「くそ!パワーが桁違いだ!」
「このまま行くぜ!」
「ヤバ!」
間一髪で避けたが、パワーの差が明らかだ。時雨は構えなおした。
(やべえ、でも秋風流なめんなよ!)
「来いよ、キリル。次で終わらせる。」
「やってみろよ!」
キリルは剣を大上段に振り上げる。
「秋風流迎撃術、陽炎!」
振り下ろすまでの一瞬の間に、懐に入る。標的が狙った場所に居なくなったキリルは、懐の
時雨にあっけなく面をとられた。
「そこまでです!勝者、秋風さん!」
「いや~、強えなお前。完敗だよ。」
「そっちこそ、パワーは俺には無いからな。正直焦ったよ。」
二人は握手を交わし、剣士同士の絆を深めた。
読んでいただきありがとうございます。
今回は少し、強引でしたかね?キリルと時雨や木芽の友情が
後に響きます。
次話もおたのしみに。