1-29 6歳になった
なんか毎日、あわただしく過ぎて行って、5歳は品種改良とか農業とか、あ、品種改良も農業だったわ、んじゃ、ほとんど農業だけしてた気がする。品種改良は一瞬で結果が出るとはいえ、一品種に100回、下手するとそれ以上品種改良かけないとならないし、それなりに疲れるしね、一気にはできないんだもん。
それで、気が付けば、僕も6歳。
リサにお願いした新種野菜の数々は、どれもこれも一か月くらいで収穫でき、大豊作。とりあえず種類ごとに畑を分けて、栽培方法を研究してもらっている。
出来上がった野菜は、大豆とトウモロコシは乾燥させて、新たに作った貯蔵蔵へすべて貯蔵。アブラナは種を収穫して全量貯蔵蔵へ。後の野菜は、野菜農業が軌道に乗るまで適当に分配して食べてもらっている。ま、塩しか調味料が無いし、煮るか焼くか生のまま食べるかくらいがメインなんだけど。
あ、生と言えば漬物ができるようになったよ!
漬物石魔法がようやく本来の本領を発揮して、石の漬物樽と漬物石で、塩味の漬物。ナス、キュウリ、大根。これだけあれば、漬物としても充分だし、ご飯のお供に最高じゃない?
ただ、この世界じゃ今のままでは発酵しないから、味はさっぱりというか、物足りないんだけどね。乳酸菌でも居ればよかったのに。
新種野菜は、ジャガイモやカボチャは腹持ちが良くて柔らかくて美味しいと評判でね、特に年寄りは好きみたい。食べやすいもんね。
全世代通して、すべての公国民に大人気なのが、イチゴ。イチゴはね、取り合いになりそうな勢いなの。公国は共産社会だから、すべての食べ物、衣服から仕事、家まで全部すべて国からの支給なんだよね。だから、基本的に誰かのものを盗ったりはしないの。盗らなくても貰えるんだからね。
でも、イチゴは大人気過ぎて、常に品薄なの。公国民はみんな一身共同体だから、実際に盗みを働く人は居ないんだけど、それでも、あの人はこの前食べたよね?的な感じになるらしい……資本主義社会の始まりになったらどうしよう……収拾つかなくなっちゃうよ、ふう。とりあえず、イチゴで腹いっぱいにするのは体に良くないから、ほどほどに食べるようにお達しをだし、農業部はイチゴの大増産を喫緊の課題にしているみたい。
季節もなく年中栽培できて、年中採れるからね、そのうち落ち着いてくると思う。
それで、教会の建物も増やした。祭壇付きで。
食べ物が作られるようになってきたからね、みんなに女神様にもお供えしてもらっているの。女神様もきっと喜んでいるだろうと思う。
***
――女神はまだ昼寝を継続しているので、気づいてはいない
***
そろそろブドウを植えたいし、木の種も確認しないと。ついでに、ほったらかしのテンサイも……
ということで、
「坊ちゃーーん! 用意できたかのー?」
「うん、トム爺、いつもごめんね~ じゃ、今日もよろしくね」
「合点じゃ!」
「……って、もう着いた……そりゃそうだよね、僕が歩いても来れる場所だもん」
「カッカッカ! いくら歩けるゆうても、独りで外に行ったらダメじゃぞ! わしら建設部は常に一緒じゃからな!」
***
――ミチイル独り部署の建設部であったが、トムが「わしを除けものにするとはなんじゃ!」と言って、強制的に押しかけて来たのである
――なお、建設部の総人数は、ミチイル、トム、ドンの3名であるが、ドンは金工の魔法が使える南の村に常駐のため、ここには不在である
***
「ハハ そうだね……では、今日の建設部の業務を開始します! って、やばい、なにこれ」
「ん? どうしたんじゃ、坊ちゃん。おお、これはこれはまたまた、畑が植物でミッチリしとるの! カッカッカ!」
「さすがに何か月もほったらかしにしちゃったから、ある程度は覚悟してたけど、まさか、こんなに、テンサイだけがびっしり育っているなんて……」
「何か問題でもあるんかの? 坊ちゃん」
「いや、何もないっていうか、むしろ、喜ばしいっていうか……うん、いい事だよね! 雑草も生えず病気にもならず虫にも食われず、肥料も水も要らず何とも交配もせず、ただひたすら一種類の植物だけ、ほったらかしで出来ちゃうんだから……」
「よくわからんが、坊ちゃんが良いというなら、良いに決まっておるの! カッカッカ!」
「トム爺、とりあえずね、石で壺を……っていうか、石壺だと重いんだよねぇ……せめて瀬戸焼の甕くらいあればい」
***
――ピロン 甕魔法が使えるようになりました。土で甕が作れますが、土の成分によって仕上がりに差が生じます
***
「いんだけど、……トム爺、新しい魔法、教えるね! 石魔法系だから、トム爺にぴったり!」
「さすが坊ちゃん! わしのためにまた新しい魔法とは、話がわかるの! カッカッカ! して、どんな魔法なんじゃ?」
「うん、良く見てイメージしてね。 『甕!』 」 ピカッ ストンパコン
「おお! 石壺のようなもんができおったわい! 呪文は『カメ!』じゃの!……して、これは石壺と何がちがうんかの? 色と形はちいと変わっとるがの!」
「うん、石じゃなくてね、土で出来ているの。陶器って言うんだけどね、本当は粘土をこねて乾かして釉薬かけて高温で何日も焼いて作るんだけど、魔法だと一発だね……」
「カッカッカ! 何日もかかるもんが魔法で一発とはの、さすがわしの坊ちゃんじゃ!」
「それで、石壺と同じくらい強度はあると思うんだけど、軽いんだよ。女性でも持てるくらいに。蓋もついてるし、水も漏れないからね、食べ物とか水とかを貯蔵しておくのに便利なの」
「ほほー、石は重いからの! 女どもでも扱えるとは、便利じゃの! カッカッカ!」
「うん、トム爺も、急がなくていいからさ、これと同じような大きさで……20リットル入りくらいかな、甕をつくってもらえる? 見た目は変わっても違ってもいいからね、大きさとか厚みとかは同じにして欲しい~ そして後で、土木部で大量生産できるように手配しておいて~」
「合点じゃ!」
「さて、僕は先にテンサイを処理して、砂糖を作っちゃおう。そしてまたテンサイを植えなおさないとね」
***
数か月前に母上と一緒に作ったテンサイ実験農場は、100坪くらいの畑にテンサイが隙間なく育っていた。
枯れて種まで出来ているものや、聖護院大根サイズのもの、もっと小さい成長途中のもの、いろいろだね。種が飛んだんだと思うけど、畑以外の荒れ地の部分にもテンサイが広がってる。荒れ地のテンサイはラディッシュみたいな大きさなんだけどね……魔法で作った畑に植えたら、異常に育つってことなのかも知れない。
とりあえず、収穫しよう。 『収穫』 ピカッ
種と、葉っぱや茎と、根の部分に分かれたから、種は銅缶をつくって収納しとこう、あ、甕魔法で小さい甕をつくってもいいかな~ 後で考えよう。
テンサイの上部は美味しくないだろうし、全部まとめてコンポスト。とりあえず畑にそのままにしとく。
そんで、テンサイの根の部分は、ざっと……なんかトン単位になってそうなんだけど……仮に1tあるとして、品種改良したから糖度が20パーセントだとすると、単純に200kgの糖ができるでしょ、それで多めに考えて、そのうちの半分が廃糖蜜になるとしても、100kgの精製糖ができるね。
甕を増やして、5回くらいに分けて砂糖魔法を使う。
『砂糖』 ピカッ ドサッ トローリ 『砂糖』 ピカッ………………
***
「おお! 坊ちゃん! 畑の大根が無うなって、甕に何か入っとるの! さすが坊ちゃんじゃ!」
「うん、トム爺、甕はできた?」
「おお、ばっちりじゃ! ほれ、坊ちゃんの作ったのと同じじゃろ~ カッカッカ!」
「うん、すごく上手~ こんな短時間で2個も作れるなんて、トム爺すごーい!」
「カッカッカ! そうじゃろそうじゃろ~ 石の魔法でわしの右に出るもんなぞ、この公国にはおらんからの! カッカッカ!」
「うん~ この後ここに砂糖工場の建物ををつくるからさ~ 暇な時に来て、みんなで甕を作っておいてもらってもいい? 出来た甕はとりあえず砂糖工場の中にためておいて~」
「おう! わしに任せとけばええ! カッカッカ!」
「んじゃ、ちょっと待ってね……」
ピカッ ピカッ ピカ………………
「おお! いつみても坊ちゃんの魔法はバケモンじゃの! 教会が一瞬じゃもんな! カッカッカ!」
「ハハ これは教会と同じ建物だけど、さっきも言った砂糖工場なの。ここで砂糖を作ろうと思ってね。トム爺、さっき僕が作った甕が畑に10個並んでるでしょ? それをここに運んでもらえる? 重いから気をつけてね。 そしてトム爺が作ってくれた空の甕も、ここに入れておいて~」
「合点じゃ!」
「それじゃ、僕は畑を作り直して、採取した種を植えなおすね」
***
――こうして、アタシーノ星に調味料が増えようとしていた




