それぞれの想い②
翌日、バイクのシュバルに乗りブレストへ向かって、それほど時間をかけることなく到着した。
門番に通してもらって街の中に入ると、1人の犬耳と尻尾の生えた人とラパンが近づいて来た。
「長旅お疲れ様です。つかさ様」
犬っぽい人は聞いたことある声だが、誰か思い出せないので、軽く会釈をした。
「ラパンもなんか雰囲気変わったね」
シュバル同様、ラパンもおれの魔人化に伴って進化したらしい。
他の従魔の進化も気になってきたし、早く会いたい。
「先に女の子の変化を指摘してあげないとダメですよ。こちらはマチカです」
分かるわけないだろ。
シュバルもラパンも確かに変わったが、動物の原型が残っている。
マチカは犬から人になっていて、予想を超えすぎだ。
「すまん」
明らかにムスッとした表情のマチカに一言謝罪をしたが、怒っているのでその場を離れることにした。
少し街の中を歩いていると、太牙くんと女の子が一緒に歩いていた。
「つかさ!急にいなくなりやがって。バインフーとスーリのおかげでなんとか帰ってこれたけど」
ぶつぶつ言ってる太牙に「ごめんごめん」と平謝りしとく。
一緒にいる女の子は分かる。
頭の上にトンボを乗せていて、耳が虎耳だ。
「バインフーも人型になったんだな。ジェミニのこともありがと。」
おれはジェミニを回収した。
「つかさ様、サージュの所へ案内しますので、ついてきてもらえますか?」
バインフーの案内でサージュがいる場所へ向かうことになった。
案内された部屋では2人の男女が言い合いをしていて、片方が龍人なのは分かるが、もう1人は体の一部に鱗があるけど、言葉に訛りがない。
2人はおれが部屋に入るとすぐに頭を下げてきた。
「「おかえりなさい。つかさ様」」
2人の声が重なると、お互いを睨みつけ、今にも殴り合いそうな剣幕だ。
「2人とも今はそんな時じゃないでしょ。ビテスもクテクもそこどいて」
ビテスはそんな感じがしたけど、女の人はクテクだったか。
バインフーに言われて2人がずれると、ベッドの上で丸くなっているサージュがいる。
なにかぶつぶつ呟いているがよく聞き取れない。
「さっきまでは寝てたんですけど、起きるとこうなるんで交代で見張ってます。」
「ありがとう」
おれはベッドに座りサージュを抱きしめた。
サージュは涙を流しながら「ごめんなさい。ごめんなさい…」と謝り続けていた。
おれはサージュに軽く魔力を流しながら、落ち着かせた。
「サージュが謝ることは何もない。気にするな、店ならまたやり直せる。生きててくれてありがとう」
パトラは今回殺されてしまったからもういない。
でも、おれの従魔は誰一人欠けていない。
たかが店1つ無くなったぐらい、召喚獣達の命とは比較するまでもない。
「だってつかさ様のお店が!あの鳥みたいなやつに街が燃やされて、あたしじゃどうしようもできなくて…他のみんなみたいに進化してればなんとかできたかもしれないのに」
泣き顔でこっちに向かってきたかと思えばすぐに下を向いて落ち込んでしまった。
「無理して進化しなくても十分助かってる。力に自信がないなら他の仲間に頼ればいい。おれも強くなるから、な」
「サージュを見てすぐ、単身で人族領にかちこんだくせに誰が言っとるんか」
うるせえ。
ビテスが余計な口を挟んだので人睨みしてサージュに戻った。
「おれは今回の件で確かに腹が立ったし、別に許してもない。だけど今は、今までの生活を取り戻すことを最優先とする。何か意見があるか?」
そこにいた従魔達は各々肯定的な姿勢を見せた。
「サージュ、少し散歩に行こうか」
おれはサージュを外に連れ出し、シュバルに乗って塩田に行くことにした。
「なあサージュ。ここで塩を作ってくれてたんだろ?今作ってくれてるパンもそうだが、食事を作る上で必要不可欠な材料が塩なんだ。これをおれのために用意してくれて、お店まで任せて、すごく頼りにしている。戦闘面は確かに他に劣るけど、サージュの役割は代役がいない分、これからも力になってほしい。頼むよ」
おれはサージュを後ろに乗せて塩田と海を見ながら話した。
夕日が沈むのを眺めながら、きれいな景色を目に焼き付けていた。
日が沈み暗くなる前に帰ろうと振り返ると、10代後半ぐらいの女の子が座っていた。
耳と尻尾から猿の名残りを感じサージュなのは分かるが、唐突すぎてシュバルから落ちそうになった。
「サージュ!進化してるじゃないか!! 改めてこれからもよろしくな」
サージュは驚きながらも、進化による変化で、少し笑顔を取り戻しておれの手を握った。
帰り道領主のトモンと出会った。
「つかさか。はぁ。明日マモンのとこに行っといてくれ。話すのもめんどくさいわ。はぁ。」
今日は暗いし、サージュの進化をみんなに報告する必要があるし、一旦帰る。
そして翌日の朝、マモンの元へ行くと、トモンと四天王のプチ、アイラ、トラリア、メリアスがいた。




