それぞれの想い①
シュバルに乗って魔族領を駆け抜け、シャティロンに着いた。
ボロボロになった街や城。
おれは目を当てることができず、そのまま通り過ぎてもらった。
所々で休憩を入れながら、鬼の村オルレアンの近くでアンポンタンと遭遇した。
「つかさ、大丈夫?」
「一緒にご飯食べようよ」
「シュバルかっこいい」
鬼達と一緒にご飯を食べる気分じゃないから、軽く手を上げて小鬼3人を通りすぎた。
オルレアンを通りすぎる時門に立っていたポワールに声をかけられたが、それも無視してシュバルを走らせた。
シュバルは寂しそうな顔をしていたが、その表情におれは気づけていなかった。
突如、正面からモンスターが飛んできた。
シュバルがジャンプして避けると、モンスターの次に飛んできた人に蹴り飛ばされた。
「つかさー!!久しぶりじゃん!今日さ、鳥狩ってきたから食べようよ!」
無防備でアカリに蹴り飛ばされたおれは、丈夫な体を持ってしても、無事ではなかった。
シュバルが追いかけておれを再び乗せてくれようとするが、駆け寄ってきたアンポンタンがそれを止めた。
「村に連れていくよ!」
「頭に報告だ!」
「づかさだいじょーぶ?」
アンポンタンたちが腰に着けてた巻物を広げて、即席のタンカとして運んだ。
「モーー!」
シュバルが激昂して、アカリに魔法を撃ち込んで戦闘が始まったが、意識が朦朧としているおれが止めることはできない。
アカリは「ごめんって」と言いながらシュバルの攻撃をいなしている。
おれはアンポンタン達に運ばれて、鬼頭の部屋に来た。
「傷の回復は済んでるはずだぞ。ついてこい。鬼神のマルージュ様が呼んでいる」
おれは仰向けで天井を見上げたまま返事をしなかった。
するとペッシュはため息をつきながらおれを抱えて、七神刀のある祠につれてきた。
ペッシュがおれの手を七神刀に当てると、おれだけ真っ白な空間に移動した。
「やっと来たかボーイ!何をそんなにしょげてんだよー。ヘイヘーイ。元気出せよ!魔王が殺されて悲しいのか?所詮他人だろ、そこまで気病むことないじゃないか」
おれは鬼神マルージュを睨んだ。
今は冷静に物事を判断できる状態ではなく、行き場の無い怒りをぶつけるため殴りかかったが、何も起きない。
自分の非力さに余計腹が立ち、刀を抜こうとするが無くなっている。
「これは没収だ。おまえはまだこれを持つには未熟すぎる。あの時は武器の無いおまえが魔族領で生きるために授けたが、覚えているか?こいつの名前を。」
「おまえになにが分かるんだよ。確かにパトラはおれの親じゃない。でも、転生したおれを拾ってくれて今まで面倒を見てくれた。刀だってリクドウだろ。忘れてるわけがない。全てかけがえのない思い出だ!」
鬼神マルージュはおれが話し終わると、リクドウを抜いて鞘を落とした。
その鞘に向かってリクドウを投げ、地面に突き刺すと、おれの後ろから「うっ」と声が聞こえた。
「4つの大陸を導く者としてリクドウの名を授けたこの刀。魔人化は別に構わないが、今のおまえは、とても導く者の器ではない。こいつが欲しければ出直してこい。」
おれの後ろにいた青年のリクドウが、鬼神の足元に刺さった刀の上に移動した。
刀リクドウの柄の頭から4本の鎖が地面に突き刺さると、連動して青年リクドウの手足と地面が鎖で繋がれた。
「確かにおれ達神に、おまえ達の死に対する気持ちは理解してやれない。だがな、おまえが散々足にしている馬の顔見たか?他のペット達がどういう想いで待ってるか。パトラが最後に何を伝えたか。誰も頼んでないのに勝手に怒り散らかして、人族に乗り込んだかと思えば、魂が抜けて帰ってくる始末。おまえの行動は迷惑しかかけてない。パトラを忘れろとは言わんが、生きてる仲間達に目を向けて、自分の生きる目的を見失うな。少し頭を冷やして反省しろ」
説教が終わるとおれは元の場所へ戻された。
「これからおれの話し相手を頼むな!」
「そんな理由でここまですんなよ、じじい」
「物事形が大事なんだよ!どうせおまえなら、この程度自力で抜け出せるだろ」
「はぁ」
白の世界で鬼神と1本の刀の間に行われたやり取りを、つかさが知ることはない。
元の場所に戻ったおれは、シュバルに一言謝罪をした。
改めて見るとシュバルは白と紫でかっこよく、凛々しい馬になっていた。
「シュバル、こんなにかっこよくなってたんだな。進化したのか?」
「モー!旦那少し戻ったんですね。これは旦那の進化が影響してると思うんすよ。」
おれが進化?
よく分からずキョトンとしていると、シュバルが頭を指したのでさわってみると、角が生えていた。
「なんじゃこりゃーー!!」
そういえば鬼神が魔人化とか言ってた気がしなくもなくなってきた。
「とりあえず飯食うぞ」
ペッシュ指示のもと、オルレアンでは宴が開かれた。
久しぶりにまともな食事をとったし、大人数でこんなに盛り上がると少し気分が晴れた。




