準備が整った
オルレアンに帰還した次の日。
鬼頭のトレーニングは朝から始まる。
今日から龍族のたぎつも参加することになった。
ペッシュがたぎつ専用の刀を準備するらしく、それまでの素振り用で大剣を渡してあげた。
この大剣はネフルと世直し中に拝借したものであり、一応神器だ。
所持者が存在しない場合は、誰でも触れることができるらしい。
素振りが終わり、朝食。
日中のトレーニングも無事終わり、昼食。
午後の模擬戦を終えて、夕食。
宴でたくさん盛り上がって、就寝。
そんな日常が何日か続いた頃、ようやくその日が来た。
「つかさ、待たせたな。」
パトラがシュバルに乗って迎えに来た。
(自分の馬使えよ)
「建物を用意した。アイラとサージュが中の準備をしてくれている。帰るぞ」
パトラはシュバルから降りることなく、ペッシュにお礼だけ伝えて出発しようとした。
パトラとペッシュにスーリの分身を預けて、シュバルを取られたおれは、バインフーに乗って他の召喚獣は送還した。
「つかさ、何かあったらスーリさんで連絡してくれ。」
エルメスさんや鬼族に見送られて、おれ達はオルレアンを出発した。
魔王城のあるシャティロンまで、休まず一気に駆け抜ける。
到着してシュバルとバインフーが、疲労を見せながら全身で呼吸をしている。
太牙くんは姿が消えている。
まあ放っておいてもそのうち戻ってくるだろう。
一応、ネフルからたくさん食べさせられた、思い出の疲労回復団子をマチカの首にかけて、リックと一緒に捜索をお願いした。
城に着いた時にはもう暗くなっていたから、ミルクをのんで今日は寝る。
翌日準備してもらった建物を見に行くことにした。
今朝のトレーニングは訓練場に行かずに、魔王の部屋で筋トレをした。
あそこに行くと、ほぼ確定でデカブツがくるからだ。
無事静かにトレーニングを終え、おれは現場に向かった。
現場には小屋が建っていた。
お店というには少し小さい気がする。
「早速入ってみましょうか。」
外で待っていた、パトラとサージュと一緒に中に入った。
最初はこのメンバーすら入らないと思っていたが、扉を開けると中は想像よりも広かった。
中にはアイラもいた。
「よお、道具一式は準備してやったぞ」
ありがとうございます!!
小屋の中には頼んでおいた機械達が揃っている。
オーブン、ミキサー、発酵機、冷蔵冷凍庫。
これだけあればパンが作れる。
おれは一通り機械の使い方を説明してもらって、試運転をしてみた。
基本的には起動するときに魔力を流す魔道具らしい。
停止させるときは、逆に魔力を抜いてあげるといいらしい。
それがかなり難しい。というか今のおれではできない。
魔族にはドレインという技でできるらしいけど、人族には無属性適正を持つ一部の者にしか使えない、レア魔法らしい。
なので当面の間はサージュにやってもらう。
「2しゅうかんご、たべてもらうからまたきてほしい」
そう伝えると、パトラとアイラは建物を出た。
おれは熊の商人エルメスに頼んであるものがある。
スーリ伝えでシャティロンの建物がある場所を説明して、商品を送ってもらった。
明日ぐらいに届くそうなので、小麦を製粉したり、塩を取りに行ったりした。
サージュはシャティロンにいる時が召喚状態で、送還するとブレストに行くらしいから、実際に塩を取りに行ったのはサージュである。
翌日、おれの小屋と同じぐらいの大きさの袋が空から降ってきた。
袋を追うように人も降ってくる。
「やっぴーー!」
龍人のたぎつだった。
「エルメスに頼んだら配達にくるからね~! 神器のお礼で代金は不要だってよ!」
龍が配達に来るのか。すごい世界観だし、トラブル少なそうで安心だ。
それよりたぎつはあの感じで飛べるんだな。
「またよろしくね」
「ばいび~!」
たぎつは高く飛んで帰っていった。
エルメスは仕事が早いし頼りになる。
今後の付き合いにも高い満足感が期待できる。
おれは袋の中を確認した。
頼んだのは干ぶどう。
密閉容器にこの干ぶどうと水を入れて1週間ほど放置する。
天然の酵母菌を作ってパンにする。
余った干ぶどうはカード化して本に収めておく。
後は数日の試作で調整をして約束の2週間が経った。




