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異世界と12の召喚獣  作者: ドンサン
おれと鬼と時々魔獣
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ただいまと言わせてくれ

魔神マーノアの力で、おれ達は祠の目の前の街ケルンに来ていた。


「神の力でも多種族を連れてあの山越えはできんのよ。人族と鬼族、そして魔物。おまえ達の中に魔族いないからな。」


マーノアはおれを魔王城があるシャティロンに連れて帰るのが目的でここまで迎えに来たらしい。

マーノア曰く

「パトラが心配してるから早く帰ってやれ」

とのこと。


先日のモンシューの話では2ヶ月後に迎えが来るから、それまで帰ってくるなって言われていたはずなんだけど…


「おまえなぁ、この鬼と一緒にいることも伝えてないんだろ?他所の土地で子どもが1人で心配しない親はいないぞ?」


それを言われておれは前世のことを思い出した。

前世では2人の子どもがいた。

長男がもうすぐ5歳だったが、確かに心配で1人で外出すらさせてなかった。

おれはこの世界に来てまだ1年も経ってないし、この体は2歳にも満たない程度だ。

パトラが心配してくれる理由も確かに納得できる。


そんなわけで、祠の目の前の街であるケルンまで連れてきてもらった。


「おれはもう戻るからな。早く帰ってやれよ」


マーノアは消えてしまった。


「ところで、なんでたいがくんもいるの?」


「おれが知るわけないだろー!」


黒い虎こと、太牙くんも何故か一緒にいた。

マーノアが勝手に連れてきたのだろうか。

かといって、このままこの街に置いておく訳にもいかないので、とりあえず一緒にきてもらう。


そしておれ達一行は人族領にある祠の中に来た。


「すっげぇなここ。」


太牙くんがきょろきょろしながら、魔物の優れた感覚で空間内を確認していた。

するとやっと感じたようだ。


「めちゃくちゃ強い魔物がいるぞ」


そして他のみんなは知っている。

唯一何も知らない太牙くんだけが血相を変えて焦っている。

その時、急に濃い霧が発生した。


「うるさいぞ」


霧が晴れると大きくて、青い龍がとぐろを巻いていた。

初めて龍を見た様子の太牙くんはとても警戒している。


「喋る魔物。まだ獣人化できないタイプか…」


青い龍であり、四神獣の一体であるセイロンが、ため息と共に呟いた。


「おまえのとこの龍が大きくなったら見せに来いよ」


「おおきくなったらね」


どのぐらい大きくなるのか想像もつかない。

ただ、気にかけてくれてるなら、たまには連れてきていいだろう。


おれ達はセイロンの後ろで待機しているがいこつカロンの舟に乗った。

今回の舟は、前回来たときよりも少し大きな舟だった。

太牙くんは終始セイロンを警戒しながら舟に乗り込んだ。


「カロカロカロ」


がいこつカロンがヘドバンしながら舟を漕ぎ進めた。

その時には太牙くんもセイロンの事はどうでもよくなったようで、必死に舟にしがみついて、自分の身を案じていた。


無事バッコが待つ魔族領の入り口に着いた。

後は祠を通れば魔族領に到着できるわけだが、今回もバッコとその子どもらしき白虎がいた。

子供の虎が何か言いたそうにこちらを見ていたが、バッコの尻尾にくるまれて黙っている。

バッコも特に何も言うことなく、通してくれた。

2匹とも、ただ静かに黒い虎の太牙くんを見ていた。



魔族領に着くとネフルが人神からもらった神器を起動させていた。


「おれはこの神器の動作確認のために、鬼の村へ戻る。またな」


神器を発動させて、ネフルは消えた。


おれはマチカに乗せてもらい、シャティロンへ向かう。

3匹の召喚獣達と太牙くんで荒野を走っていると、大きな影が見える。


その影の前で止まったが、そこにいたのは赤い目をした大きな白蛇だった。

白蛇の腹部辺りには、小さなドラゴンと、もふもふだけどの立派な角を生やした牛のような生き物がいた。

3体の魔物は、共通して目が赤かった。


「ただいま!」


みんなの出迎えがうれしくておれは、クテク、ビテス、アステリオの元へ走って駆け寄った。


もうすぐ成長したクテクに着くはずだったおれの小さな体は、宙に浮いていた。


ドーーン、という大きな音がしたので不思議に下を見ると、大きな岩が粉々になっている。

浮いているおれを羊のイルコスが柔らかい毛で受け止めてくれた。


(なんで?)


疑問に思っている暇も無く、アステリオが逃げているイルコスに突進してきた。

リックがアステリオに体当たりをして退けるが、すぐにビテスの火属性魔法がリックへ飛んでいく。

回避が間に合わないリックを、おれの所へ再召喚していなす。


クテクが大きな尻尾でなぎ払い、おれ達は森の方へ飛ばされた。

再びマチカに乗って森の中を駆け抜ける。

ちょくちょく足元を白いネズミが通る。

うちのスーリなのだろうが、念話を送って返事がないし、複数いるのではないかと思うほどたくさん通る。


森の中で何かがキラリと光ったように見えた。

走っているコース上に、馬の上に乗ったペンギンがいる。


「シュバル。のせて!」


おれはシュバルに飛び移るように、マチカから飛んだ。

だが、おれがシュバルに乗れることはなかった。

それを阻んだのはモンシューとよく見たらアモーラも乗っていた。


「何しに来たのかしら?この子達を裏切っていながら。」


人族領に行っていた事だろう。

思ったより旅行感なく帰ってきてしまったから、こっちとしても少し心残りなんだけどな。


「マーノアがはやくかえれっていったから、もどってきたよ」


その言葉を聞いたアモーラは激怒した。


「この子達の事を考えて、他人に言われるよりも先に戻ってきなさいよ!」


召喚に応じなかったのも、2ヶ月の期限を決めたのもそっちじゃん。

とは言えず、おれは黙った。


まだ進化をしてないこっちの3匹と、太牙くんではまともに戦って勝機はない。

すぐにシャティロンへ向かうため、おれは太牙くんに乗った。


リックの土魔法で飛ばしてもらい、シュバルの上を越えた。

マチカ、イルコス、リックを残して森を走る。


森を抜けるまで残りわずかとなった所で何かが飛び出してきた。

バインフーだ。


黒い虎と白い虎が、睨み合っている。

バインフーの後ろには、遠いけどシャティロンが見えそうだ。


睨み合ったまま少し時間が経った時、バインフーの後ろからすごい衝撃と音が来た。

音の内容は、

『そいつより速く帰ってこい』

という風に聞こえた。


太牙くんが走り出すと、バインフーもスタートをきった。

距離はそんなに長くない。あっという間にゴールが見える所まで来た。

ゴールではラパンとサージュと魔王が待っている。


太牙くんは魔王に向かって一直線に走った。

何も障害や妨害は無く、普通に走り終わった。

もっと言うと、バインフーはゴールよりも少し手前で止まっている。


「おまえがいない間に、こいつらは強くなった。次はおまえの番だ。明日から覚悟しておけよ」


パトラはそれだけおれに伝えて、城に戻った。


「主様、おかえりなさい。」


サージュがそう言って、ラパンも少し頭を下げた。


「ただいま」


おれはこの言葉と、そのやり取りに安心感をすごく感じた。

今のおれには待っててくれる者達がいる。

その安心感からどっと疲れがこみ上げてきたので、魔王城に戻って大人しく眠った。


その日おれは夢を見た。

転生前の家族との思い出だ。

あの時に感じたものを今日は感じた。

子ども達は元気だろうか。

どういう風に成長したのだろうか。

気になることはたくさんあるが、確認することができない。

転生後こんな夢を見たのは初めてだ。


なぜ今日こんな夢を見たのかは分からないが、今になって少し寂しくなった。

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