出会いとは、いつも予測できないもの。――5
たっぷり焼き肉を堪能したあと、俺たちはデザートのアイスを食べていた。
食事を通してコミュニケーションをとったことで、俺はもう、ヴァルキュリアのメンバーに緊張しないようになっていた。
「さて。腹も膨れたし、今後の話をしようか」
アイスを食べ終えた焔村さんが口を開く。
「長い入院生活であたしたちはだいぶなまっている。まずは肩慣らしとして、Aランクダンジョンに挑戦してみようと思うんだが、どうだ?」
「異議なしよぉ」
「あたしもです」
「(ボソボソ)」
「『わたしも賛成です』って言ってます」
焔村さんの提案に、渡会さん、四条さん、篠崎さんが賛成する。
そんななか、天原さんが手を挙げた。
「すみません。勝地くんとの約束がありますので、もう少し待っていただけないでしょうか」
「約束?」
「はい。勝地くんと依頼をこなす約束です」
首を傾げる焔村さんに天原さんが答える。
俺は補足した。
「『アイテムショップ』から、『Aランクダンジョンで入手できる装備品を一〇個納品してほしい』って依頼が入ってるんですよ」
アイテムショップとは、ダンジョン出現後に登場した職種で、名前の通り、ダンジョンのアイテムを販売しているひと・店のことだ。俺はそのひとつ『装備品店』から依頼を受けている。
俺の説明を聞いた焔村さんが、「それなら」と代替案を出した。
「次にAランクダンジョンが出現したとき、あたしたちが真と白姫の探索に付き合うってのはどうだ? あたしたちの目的は肩慣らしだし報酬はいらない。真と白姫も探索を楽に進められて、一石二鳥じゃないか?」
焔村さんの代替案は、互いにプラスになるWin-Winなものだ。
それでも天原さんは「ですが……」と渋る。
そんな天原さんの反応に、焔村さんが首を捻った。
「これでも問題があるのか?」
「天原さんが渋っているのは、俺の事情を考えてのことなんです」
天原さんの代わりに俺が答える。
「俺は特殊な戦術を駆使していて、できればほかのひとに知られたくないんです。天原さんは、俺の秘密を守ろうとしてくれているんですよ」
「なるほど……」
焔村さんが腕組みした。
「真と白姫が嫌ならあたしたちは諦める。けど、真の秘密をバラすような真似はしないぞ。恩を仇で返すことになるからな」
まじめな顔で焔村さんが約束する。
渡会さん、四条さん、篠崎さんも、深く頷いた。
彼女たちのひととなりは今日知ることができた。いずれも変わっているが、いいひとだ。最弱ステータスの俺を見下すこともなかったし。
このひとたちは信用してもいいんじゃないだろうか? 俺の秘密を明かしてもいいんじゃないだろうか?
「うーん……」としばらく考えて、俺は決断する。
「わかりました」
「よろしいのですか?」
「うん。このひとたちなら、秘密を守ってくれるだろうし」
少しだけ心配そうな天原さんに頷きを返し、俺は焔村さんたちに頼んだ。
「俺たちと一緒にダンジョン探索をしてくれますか?」
「もちろんだ!」
焔村さんが胸を叩き、渡会さん、四条さん、篠崎さんが目を細める。
四人に笑みを返し、「ただし」と俺は付け加えた。
「報酬は山分けにしましょう。俺たちだけ得するなんてできません。美味しい焼き肉をご馳走になったことですしね」
「律儀なやつだなあ、真は。ますます気に入ったぞ」
焔村さんたちが、朗らかな笑みを浮かべた。




