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勇気とは、絶対に逃げないと決意すること。――5

『行くぞ!』

「はい!」


 外側にいるパーティーメンバーのひとりと、通信石版で連絡をとりながら、俺は天原さんに合図(あいず)を送る。


「天原さん、いまだ!」

「はい」


 大盾を構えた天原さんが体を沈めて力を(たくわ)え、ドンッ! と地面を蹴り、門の左側に突進した。


 天原さんの大盾が門に叩き込まれ、爆弾が炸裂(さくれつ)したのかと思うほどの轟音(ごうおん)が鳴り響く。


 同時、門の右側からも衝撃音がした。外側にいるひとたちが、天原さんと同じタイミングで門を攻撃したのだ。


 俺たちとともに参加した五組のパーティーはいずれもSランク。つまり、いまのはSランク探索者の同時攻撃。


 だというのに、門には傷ひとつついていない。それどころか一ミリも動かなかった。


『ダメか……』

「みたいですね」


 俺と通話相手は落胆(らくたん)の息を吐く。二〇回は同時攻撃をしかけたのに、門が動く気配がちっともないのだからしかたない。


「門を開けるのは無理そうですね」

『ああ。力になれなくてすまない』

「いえ。充分(じゅうぶん)ですよ」


 そう答えながらも、俺は落ち込まずにはいられなかった。もちろん、外側にいるひとたちを残念がっているからではない。何度もトライしたのに、現状を打破(だは)できなかったからだ。


 もう、覚悟を決めるほかにないのかもしれないね。


 (なげ)いていてもしかたがない。ここから脱出するには、行動を起こすほかにないのだ。


 息を(あら)らげる天原さんに、俺は意見を伝える。


「これだけ攻撃しても開かないなら、ダンジョンを進む以外に手はないんじゃないかな」

「たしかに……そうですね」


 俺の意見に同意しながらも、天原さんは複雑そうな様子だった。顔色も(すぐ)れない。


 当然だろう。


 どれだけ門の外側を探しても、ドラゴンエンペラーは見つからなかった。そうなると、門の内側にいるとしか考えられない。この先に進むなら、ドラゴンエンペラーと遭遇する可能性が非常に高い。


 天原さんにとって、ドラゴンエンペラーの存在はトラウマなのだ。遭遇する可能性があるとしたら、気持ちが沈むのも無理はない。


 心苦しいけど、天原さんには勇気を出してもらうしかない。SSランクダンジョンの探索を、俺ひとりでこなせるはずがないのだから。


 とはいえ、ドラゴンエンペラーに遭遇せず、門の内側(ここ)から脱出できる可能性は(ぜろ)じゃない。探索すれば、門の外側に戻る道が見つかるかもしれない。


 天原さんもそれらをわかっているのか、キュッと唇を引き結んで俺に頷きを見せた。


 俺は頷きを返し、通話相手に自分たちの方針をしらせる。


「ひとまず、俺と天原さんは、ここを抜け出せる道がないか探してみます」

『わかった。俺たちも俺たちで探してみる。無茶(むちゃ)だけはするなよ』

「はい」


 通話を終え、通信石版をストレージにしまう。


 俺と天原さんは顔を合わた。


「行こう」

「はい」


 俺たちは歩き出す。


 無茶としかいえない挑戦が――たったふたりでのSSランクダンジョン探索が、はじまった。

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