勇気とは、絶対に逃げないと決意すること。――3
この牛頭人身のモンスターは、ブラッディーミノタウルスという名前らしい。
俺の知らないモンスターだが、余程のことでは動じない天原さんが困惑しているのだから、相当な強敵なのだろう。
ブラッディーミノタウルスの詳細が気になるが、いまは尋ねている場合じゃない。真っ先にするべきは、ブラッディーミノタウルスを倒すこと。
天原さんを苦しませるほどのモンスターが相手なら、英雄願望のトナカイでは心許ない! 少し時間がかかっちゃうけど、スパークリングキャットでいくべきだ!
一秒もかけずに決断して、俺は二〇枚のカードを実体化させた。
「スパークリングキャット、召喚!」
まずはクリーチャーであるスパークリングキャットを喚び出す。
「力の加護、守りの加護、叡智の加護、精神の加護、疾風の加護、匠の加護、発動!」
次はバフだ。攻撃力、防御力、魔法力、魔法耐性、敏捷性、精密性を少しだけ上げるカードを、三枚ずつ使用した。
赤、黄色、青、緑、水色、オレンジのオーラが三回ずつスパークリングキャットを包み、そのたびに、ステータスが上昇する。
俺が選んだのは、『加護シリーズ×溢れ出す真価×スパークリングキャット』の、超強力クリーチャー爆誕コンボだ。
俺がスパークリングキャットにバフをかけているあいだも、ブラッディーミノタウルスの猛攻が続き、天原さんは顔中を汗まみれにして耐えていた。
もう少し! もう少しだから頑張って、天原さん!
全速力でバフをかけていき、俺はスパークリングキャットに命じる。
「スパークリングキャット、臨界点突破を発動させて!」
スパークリングキャットの体から赤い電流が迸り、俺の手元に残った最後のカードが、輝きを放った。
臨界点突破は、スパークリングキャットを対象とするカードの消費MPを、0にできるスキルだ。だが、臨界点突破を発動させるには、スパークリングキャットを対象にして15枚以上のカードを使用しておく必要がある。
俺はその条件を、消費MPが少ない、加護シリーズを連発することで満たしたのだ。
そして最後に使うのは――
「溢れ出す真価、発動!」
300ものMPを必要とする代わりに、対象にしたクリーチャーが強化されていた分だけ効果が上昇する、超強力な強化カード。
計一八回強化されていたスパークリングキャットのステータスが、溢れ出す真価によってさらに跳ね上がる。
ステータスの上昇を表すようにスパークリングキャットが巨大化し、象をも超える大きさになった。
俺は叫ぶように指示を出す。
「天原さんを助けるんだ、スパークリングキャット!」
『ミャアァアアアアアアアアアア!』
スパークリングキャットの体から稲光が迸り、横殴りの雨のごとくブラッディーミノタウルスに襲いかかった。
ゴオォオオンッ!!
ゴオォオオンッ!!
ゴオォオオンッ!!
ゴオォオオンッ!!
連続する紫電の爆撃。
大鐘を突き鳴らすような雷轟が、何度となくダンジョンに響き渡る。
高電圧によりオゾン臭が発生し、衝撃波が砂煙を舞い上がらせた。
尋常ならざる破壊力。並のモンスターならひとたまりもないだろう。
しかし――
『ブモオォオオオオオオオオッ!!』
ブラッディーミノタウルスは倒れなかった。怒りの雄叫びを上げ、天原さんへの攻撃を再開する。
俺は絶句した。
あ、あれを耐えるの!? Aランクダンジョンに生息していたグリーントロールでさえ一撃で消し飛んだのに! あんなバケモノが、どうしてこのダンジョンに――Cランクダンジョンにいるんだ!?
混乱に陥りそうになり、慌てて俺は、ブンブンと頭を振る。
「いまは驚いている場合じゃない! ブラッディーミノタウルスを倒さないと!」
気持ちを切り替えて、俺は再度、スパークリングキャットに攻撃を命じた。
ブラッディーミノタウルスとの戦闘は熾烈を極め、倒すまでに二〇分もの時間を要した。




