仲間とは、尊敬の上に築かれる関係のこと。――16
「……疲れた」
昼休み。俺は屋上のベンチに座り、げんなりしながら弁当をもそもそと食べていた。
俺が疲れている原因はもちろん、天原さんとの仲について朝から質問攻めに遭っていたからだ。
「本当に告白じゃないんだって! 人間として憧れてるって意味だから!」
何度となくそう説明したところ――
「じゃあ、誤解ってことにしておくね」
――とのかたちで収まった。
けど、「ことにしておく」じゃダメなんだよねえ。まだ疑ってるって意味だから、それ。
とりあえず、夜道を歩くときは気をつけよう。天原さんを崇拝するひとたちから尋常じゃないヘイトを稼いだことだろうし。
そう決意したところで、俺は左隣に目をやる。
「ところで、どうして普通にいるの? 天原さん」
そこには、購買で入手したサンドイッチを口にする天原さんがいた。
俺と天原さんは『関わり合いのないように振る舞う』約束をしている。実際、今朝の天原さんは、その約束を守ってくれていた。
それなのに、当たり前のように隣にいるのはどうしてなんだろう?
天原さんが口のなかのサンドイッチをのみ込んでから答える。
「わたしと勝地くんに関わりがあることはバレてしまいました。ですから、これ以上は隠しても無意味かと思いまして」
「ごもっともすぎてぐうの音も出ない」
たしかにもう誤魔化せないよね。無駄なあがきだよね。隣にいようといなかろうと、俺と天原さんが親しい間柄だって噂はどんどん広まっていっちゃうだろうね。
それでもですね? 女の子とふたりっきりで食事をとるのって、結構ドキドキしてしまうわけでして。
緊張のあまり、心の声が敬語になっている。
今朝の一件が尾を引いて、どうしても天原さんを意識してしまうのだ。
頬が熱を帯びるのを感じつつ、俺は玉子焼きを口にした。
「それに、憧れのひとの側にいたいと思うのは、おかしなことではないでしょう?」
「ぶふぅっ!」
直後、天原さんが破壊力抜群な一言を放った。
たまらず俺は、頬張っていた玉子焼きを噴き出す。
あああ天原さんってそういうとこあるよね! 普通は恥ずかしがるようなセリフを平然と口にするよね!
どうにも天原さんは魔性な気がする。自覚も悪気もないタイプの天然魔性だ。
そういうの、困るんだけどなあ。
ゲホゲホとむせていると、天原さんがハンカチを取り出し――
「口元についてますよ」
ナチュラルに俺の口元を拭ってきた。
そういうとこぉ! そういうとこなんだよ、天原さん!
本当にやめてほしい。お願いだから、思わせぶりな態度はやめてほしい。
じゃないと――
――完全に脈なしってことはないと思うなー。
――同感。告白したってのがあたしたちの早とちりって可能性はあるけれど、天原さんと勝地くんがふたりっきりでいたのは事実だし。
――それに、微塵も好意がないひとに、憧れなんて抱かないしねー。
もしかしたらって、期待しちゃうじゃないか。




