9 1-9 観察
赤い羊視点です。
依頼人に指定した☆☆カフェには、前以てカメラを仕掛けておいた。
だからどの席に座られたとしても俺からは依頼人が確認出来る。
それでもこちらから席の指定をしたのは、依頼人がこちらからの指示をどれだけ全うするのかを確認する為だ。
9時30分、約束の右奥の席に1人の女が座った。
依頼人の刀川葵だ。
彼女は約束の時間よりも早く来るタイプのようだ。
俺はこの店には行かない。
行くのはこの間サラリーマンを脅して金を取っていたチンピラ手下だ。
俺が赤い羊だと名乗った上で、前金100万を受け取り、連絡用の携帯を渡してこいと指示しておいた。
時間は10時30分。
依頼人には10時を指定しておいたが、敢えて遅れる事で依頼人が外部……主に警察と連絡をとるかを確認する。
依頼人の様子を伺うと、大分不安そうに見える。
しかし、誰かに連絡をとろうとするような素振りはない。
完全に信用は出来ないが、現状の依頼人を見る限り警察との繋がりは無さそうだ。
店の外のカメラも確認しているが、警察らしき人物はいないからな。
指定した時間通りにチンピラ手下が依頼人と接触した。
持たせた盗聴器から、音も良好に聞こえる。
「依頼人さん? じゃ、まず100万出してもらおうか」
「あなたが赤い羊さん? なんか信用出来ないわね。あなたに100万も払う意味が分からないわ」
「はぁ? んだとてめぇ!」
このチンピラ手下、流石に短絡的過ぎたな……
依頼人もコイツを赤い羊だとは思わなかったようで、信用出来ないと言っている。
「なら依頼は受けねぇぞ!」
「それは困るわ。でも、本当にアイツを消してくれるかも分からない人にお金は払えない。だから消してくれてから払うわ」
これはまた、面倒な事を言い出したな……
仕方ないので手下に電話をかける。
♪♪♪♪♪
「おいっ! 話が違うじゃねぇかっ! 金は俺のなんだろっ?」
電話に出るや否やの大声。
うるさいな……
「落ち着いて下さい。とりあえず私が彼女と話しますから、この電話を渡して下さい」
「ん? あぁ、わかった……」
それにしても、コイツは本当に使えなかったな。
金を欲しがっていたから丁度いいかと思ったが、バカはやっぱりバカだ。
バカから電話を投げ渡され、不機嫌そうな依頼人。
彼女もこういうバカが嫌いなんだろう。
「はい、電話変わりましたけど?」
「初めまして、葵さん。私が赤い羊です」
少しおどおどした声で電話に出た依頼人に、とりあえず自己紹介をした。
何をするにしても、まず挨拶をするのが基本だからな。
読んでいただきありがとうございます(*^^*)