8 1-8 接触
葵視点です。
赤い羊から次のメールが届いたのは、私がメールを送ってから3日後の夜だった。
刀川葵 様
ご依頼お受け致します。
つきましては、一度お会いして頂きたく思います。
明日、午前10時◇◇駅近くの☆☆カフェ、右奥の席でお待ちください。
都合が悪い場合はご連絡をよろしくお願い致します。
やっと私を調べ終わったのか……3日とはいえかなり長く感じた。
そもそも依頼を受けてもらえるかも分からなかったので、多少の不安もあった。
依頼を受けると書いてあるとはいえ、私はまだ赤い羊に信用された訳ではないはずだ。
つまりこの会うという約束も、赤い羊に直接会える訳ではないんだろう。
一体どういう仕掛けをしているのか……
まぁ何にしろ、行くしかないのだけれど。
翌日、約束の時間の30分前、9時30分に☆☆カフェについた。
この店は自由席の為、指定されていた右奥の席に座る。
その後、10時になっても誰も来る事はなかった。
赤い羊は時間を守るタイプでは無いみたいだ。
10時30分……
もう30分も遅刻してる……遅い。
遅れた場合の私の反応を確認しているだけ?
それとも、信じてもらえずに帰られた?
どうしようかと焦燥感に駆られ始めた頃、
カラン カラン
と、店に人が入ってきた。
そして私と同じテーブルの、対面に座ってきた。
屈強な、いかにも喧嘩ばかりしている荒くれものといった雰囲気の男だ。
「依頼人さん? じゃ、まず100万出してもらおうか」
「あなたが赤い羊さん? なんか信用出来ないわね。あなたに100万も払う意味が分からないわ」
「はぁ? んだとてめぇ!」
自分の思い通りじゃないからと大声で脅す、短絡的思考……
コイツは間違いなく赤い羊じゃない。
どこにでもいる雑魚チンピラ……
「なら依頼は受けねぇぞ!」
「それは困るわ。でも、本当にアイツを消してくれるかも分からない人にお金は払えない。だから消してくれてから払うわ」
♪♪♪♪♪
私が支払いの拒否をしていると、男の携帯が鳴った。
そして、私や周りの事なんて何も気に留めていない様子で男は電話に出た。
「おいっ! 話が違うじゃねぇかっ! 金は俺のなんだろっ?」
出るなり電話相手に向かっての大声。
うるさい、バカ、他人の迷惑を考えられない。
一緒の席に座ってるのが恥ずかしい……
「ん? あぁ、わかった……おめぇと話してぇらしい、ほらよ」
相手に何を言われたのか、急に私の方に無造作に携帯を投げて来た。
こういうタイプ、本当に嫌い。
でも今は我慢か。
「はい、電話変わりましたけど?」
「初めまして、葵さん。私が赤い羊です」
電話に出た相手は、とても優しそうな声で話す、落ち着いた印象の男性だった。
読んでいただきありがとうございます(*^^*)