第10話
私とタケル君は、馬に跨がり野道を颯爽と駆け抜けている。
すごい速さである。今私の目には景色が流れるように写り込んでいる。
・・・いや速すぎはしないか? 軽く時速100㎞は出てるぞ。
車ならともかく、前からの風を遮るものがない乗馬は、顔面にもろ風を受けて目も開けられないし、落馬の危険がある。
───と私も思っていたのだが、そんな事はなかった。
ファンタジー的な不思議パワーなのだろうか、まずこの鞍に跨がった時点で違う。
まずバランスが崩れないのだ。体が横に傾こうとすると、透明なクッションに支えられるかのように体が元に戻され、落馬の危険が無いのだ。
そして顔に風を受けることもない。まるで見えない障壁があるように風が松風を避けていく。何故分かるのかは、実際に避けていく風の流れに飛んできた葉っぱが巻き込まれていたからだ。
これが車なら「スピード出しすぎたかな」と思うだろうが、これが馬だから恐ろしく感じる。
タケル君なんか目を白黒させて、ポカーンとしてたから面白かった。
──というわけで、私達は快適に目的地の山へと来ることが出来た。
山には村よりも強い瘴気に覆われており、麓の至るところから瘴気が流れ出ているのが見てとれた。
だが私の回りは相変わらず瘴気が浄化されており、逆に清らかな空気が漂ってる。
「さてタケル君、ここがその山なの?・・・・タケル君?」
「──ぅえっ!? あっ、はいっ!」
私に声をかけられて正気に戻ったタケル君は、顔を真っ赤にしてあたふたとし始めた。
今は私が抱えるような姿勢になってるから、騒ぐと危ないよと伝えると、「す、すみません! 降ります! 降ります!」と慌てて松風から飛び降りた。
もしかしてポカーンとした顔を見られたのが恥ずかしかったのかな? それとも男に抱えられるのが嫌だったならショックだな。
そう考えてると、タケル君は地面に着地した勢いて滑って転んでしまった。ほら言わんこっちゃない、膝を擦りむいちゃってる。
松風に屈んでもらい私も地面に降りると、タケル君のそばに寄り、膝の擦り傷に回復の術をかける。
術を施している間、タケル君は終始顔を赤くして私を見ており、私が顔を向けるとばつが悪そうに顔をそらしていた。そんな彼を見て私はクスリと笑う。
やはり恥ずかしい顔を気にしているのかな。大丈夫、口止めの話が切り出せそうになくても、私は誰にもばらさないよ。
「はい、これでよし」
タケル君の擦り傷が良くなったのを確認すると、私は立ち上がり山を見つめる。
「ありがとうタケル君。後は大丈夫」
「君には見えないけど強い瘴気がこの辺りに漂っているの。私が離れれば間違いなくここも瘴気に覆われる」
前は一人で帰ったらしいが、この瘴気の濃さからやはり心配に感じた私は、道具欄から二つの御守りを取り出した。
「これを持って私が帰ってくるまでここで待ってて。これは妖魔や瘴気を暫くの間寄せ付けないから」
私が渡した御守りは、ゲームでもあった物だ。一つは所謂エンカウト率低下である。いやむしろ低下より上の御守りで、一定時間は完全に遭遇しない。
もう一つはゲーム内でもあった瘴気や毒霧の中でも一定時間完全無効化できるこれまた上級御守りだ。本当、道具引き継ぎされてて良かった。
私から御守りを渡されたタケル君は、不安と心配が入り交じった表情で私を見てくる。
「そんな心配そうな顔をしなくても大丈夫。パパっと呪いを浄めてくるから、ここで待っててよ」
私は松風を巻物に戻すと、振り返りながら手を振り、山道の入り口へと歩いていく。
今の私の力なら簡単には終わらせられる。攻撃に関しては全く育ててないが、レベルが上がって自動的に成長した分もあり、チート級の装備で怖いものは無し。楽勝楽勝!
そんな満身的な考えが自分を追い詰めるとは、この時は思ってもいなかった。
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