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――迫る、血を滴らせる大きな顎――
―――――――――なめるなッ!!!
――「【色彩・火球・狙・爆・朱】」!!!
――彩る・赫々たる火の天球よ・狙い・爆ぜよ・朱く
喰われて失われた右腕の先から朱色に輝く火球が放たれる。
火球は緩やかな弧を描いて、狙い通りに怪獣の頭部に命中して爆ぜた。
高性能爆弾のような激しい閃光と爆発音と、大きな悲鳴と巨体が転倒する音が立て続けに連続する。
「ハハハッ、ざまあみろ…。そう簡単に死んでたまるかって…。」
ガアアァァッ!!!
笑っている最中に怪獣がムクリと起き上がり、激怒の咆哮を上げた。
顔面の右側の皴だらけの汚い表皮と小さな眼球が焼け爛れている。しかし、あれだけの火力をまともに受けても致命傷には程遠いように見えた。
「おいおい、なんで火傷程度なんだよ。硬すぎるだろう。ただの動物じゃなくて、ファンタジーなモンスターなのか? いきなり火を噴いてこないだろうな。」
「チュートリアルなんだから一発で沈んどけよ。ったく。」
対して、こちらは右腕の欠損と、出血多量の満身創痍。未だ、絶体絶命の窮地。
「だが、その様子じゃあ片目を潰すことはできたみたいだな。こっちは、あと五、六発は撃てるぞ。次はそのでかい口の中にぶちかましてやる。」
――「【定言・治癒・塞・疾】」
――断じる・慈悲の癒しの手よ・塞げ・疾く
治癒の魔法を唱える。右腕の出血が急速に止まり、真新しい表皮によって塞がれていく。他の手足の小さな傷も数秒で無傷の状態に戻り、痛みが収まった。
しかし、肘から先の前腕は失われたままだった。
「ハハハ、流石に食われた腕は戻らないか。いいや、出血を止められたら十分だ。」
「一度じゃ駄目なら、何度でもだ。力尽きるまでそのどでかい頭に喰らわせてやる。ああ、馬鹿でかい口の中を燃やしてやるのも面白そうだな。」
こんなに口汚く悪態を付くのは学生の頃以来だ。タガが外れている。俺は今、途轍もなく興奮している。
『現世に絶望してる独りぼっちのあなたに、とびっきりのエンターテイメントを提供してあげる。』
『このまま生きていたら決して手に入れられない極上の娯楽と刺激よ。』
『欲しいでしょう?』
乗ってやる、悪魔め!
年甲斐もなく、ああ、最高に――
「――とんでもなく、刺激的だなあっ!!!」
「ヒヒッ、ヒハッ…!!!」
自分のものではないような哄笑が響く。
幾度となく弾けた火球の熱気と、肉の焼ける臭いが充満している。
今この場で横たわっているのは、仰向けで倒れている汗まみれの自分と、この廃墟で暮らしていたであろう住民たちの遺体と、両目と口内が燃え尽きた一体の怪獣。
「ざまあっ、ギリギリで、勝った、ぞ…」
「ハハハハハッ、ガハッ、げほっ、カハッ、ハ、…み、みず…」
――【形象・清水・滴・冷】
――象る・清らかなる竜水よ・滴れ・冷たく
「ガボッ!? ガフッ…。何だ、頭の中で組み立てるだけでいいのかよ。呪文を唱えなくても使えるんじゃないか…」
「必殺技みたいに、何度も魔法を叫んじまっただろ…。カッコ悪い…」
「ふう…。……。」
…熱い。
体が、熱い。無性に、むしゃくしゃする。
くそっ、全身が燃えるように熱い。
あの怪物の、むせるような匂いのせいか?
生まれて初めて、命がけで戦ったからか?
あの悪魔への怒りのせいか?
手足を振り回して暴れ出したくて仕方がない。強い酒が欲しい。浴びるように酒を飲みたい。今すぐに。でなければ…
おぉおおお
ぉおおー
「っ…!!!」
不気味な合唱に驚いて跳び起きると、死に絶えた怪獣の周囲で倒れ伏していた死体たちがうめき声を震わせながら起き上がり始めていた。まるで、はじめから用意されていた演劇の一場面のように。
は?
もう一度よく見る。
死に絶えた怪獣の周囲で倒れ伏していた死体たちが、うめき声を震わせながら起き上がり始めていた。
同じだった。
は、ははっ…。
ハハハハッ!
「…そういうことか。そういうつもりってわけか。怪獣の次は、ゾンビか。道理で、これ見よがしに死体がばら撒かれていたわけだ。」
「生憎、こっちはとうに金欠だよ。支払いは命でってか? ったく…」
当分、魔法は使えそうにない。それが分かる。
先程までの死闘で、魔力にせよ精神力にせよ、この肉体から奇跡的な要素が一時的に全て失われてしまったらしい。
もういい、とも思う。楽にしてくれてもいいと思ってしまう。
けれど、ここまで来て諦めることも、できるわけがない。
腰の鞘に一振りの剣が収められていたことを思い出し、震える手を伸ばした。
――【定言・浄化・永・霊・宿・薙・貫・却・滅・灼・灼・灼・灼・昊】
――断じる・死の頂の浄き祈りよ・永く・霊く・宿り・薙ぎ・貫き・却け・滅ぼせ・灼に・灼に・灼に・灼に・昊へと
――【十二乖・餞ノ剣】
剣の柄に触れた瞬間、頭の中に浮かんだ言葉がそれだった。。
そして、疑いもなく実在すると確信できる、言葉通りの、いや言葉以上の力。
この剣を使えば――
しかし、相手は怪獣でもモンスターでもなく――
思考がまとまらない。混乱している間も、動く死体たちは群れを成して徐々に近づいてきている。
「くそが! 誰のせいだ!! あの悪魔か!!!
どうしてこうなった! ウイルスに感染したのか!? そういう呪いのせいか!? どういうファンタジーの理屈でそうなった!」
老若男女、問わず。
額から生えた角や、手足の鱗等、見たことのない特徴を持った人間たちもいる。しかし今は死体で、生前もそうだったのかは判断がつかない。
「殺していいのか!? 殺すしかないのか!?」
子どももいる。可愛らしかったはずの、人間の小さな動く死体が。
「本当にもう死んでいるのか!!? 蘇ることはできないのか!!?」
その叫びに反応したのだろうか、先頭の死体の男が突然勢いよく手を伸ばしてきた。
感情的になりながらも、俺はちゃんとそれを見ていた。心の一部分では冷静に、目の前の出来事を見ることができていた。視認し、無抵抗のままならばその青黒い手に肩を掴まれるだろうということを予測していた。理解していた。
結局は、死にたくない、という本能が勝った。
助けを求めるように伸ばされる手がこちらに届く前に、俺は強く握ったままの剣を思い切り振りかざし、男を突き飛ばすように剣の切っ先で相手の胸元を狙っていた。
恐怖もあった。片腕がなくなり、体のバランスが狂っていたこともあった。だから、力任せに振るわれた刃は見当違いの方に突き出され、男の肩口を僅かに掠っただけだった。
今度こそ死を覚悟する。あっけなかったな、と、まだどこか冷静に考えていた。
しかし、最期の瞬間を待っている間に、男は全身が塵になって消えていた。
なんの抵抗もなく消滅した。
生気のない顔が、感情を浮かべないまま消えてなくなった。
「当てるだけでいい…?
もう、死んでいるから…?」
刃が当たれば敵を無力化できるということは予測できていた。理解できていた。
そして今、本当に正しく理解した。
続けて、おおおおお、とゆっくり迫る二体目に、緩慢な動作で刃を浴びせて消滅させた。
それから、激しさを増していく呼吸と動悸を整えようと努力しながら、冷静に周りを見渡した。
「もう、生きてはいない…。お前たちは…。」
この集落の全ての死体が一斉に動き出したのだろう。視界に移るだけでも、いつの間にか数十体まで数を増やし、前後左右を包囲していた。
その後方から、まだまだ数が増えていく。
逃げ場はない。光を失った瞳の全てがこちらを注視している。だから剣を振った。片腕で、無様に、逃げながら。決して掴まれないように退路を確保しながら、近い者から順に、効率よく斬っていった。
死体だと分かっている。これは殺人ではないと。
しかし殺しているのは俺だとも思っている。明らかに、取り返しのつかない状態なのに。矛盾している。人間の姿をしているだけで。
これは、殺人ではない!
ゼエ、ゼエ、と自分は息を切らしていた。これは誰だ? 俺だ。…本当に? この俺が俺である証拠はどこにある?
焦りと恐怖で指先が震える。足がふらつく。目が回る。
…しかし、知ったことか。苦しめられているのは俺だ。どこの誰だろうが関係ない。俺は俺で。こいつらはもう、化物だ。
「もう…。」
二、三度、危ない瞬間があった。背後から急に肩を掴まれ、引き倒されそうになった時は背筋が凍った。
それでも、剣を出鱈目に振り続けることだけはできていた。
それができなければ、あるいは化物死体の動きがもう少し機敏だったなら、死体化物の仲間入りをしていただろう。
「そうだ。そのまま、…そのまま、ゆっくり…」
最後の方は意識が朦朧としていた。なにしろ、相手はここの住民全員だ。手に余る人数。息が切れる。
無我夢中で、全員消えるまで下手な踊りを披露していた。
もしかしたらあのモンスターに喰われた人間もいるかもしれない。しかし、あれは彼らの死とは無関係だとも思う。
恐竜とゾンビは、似つかわしくない。恐竜は人間をゾンビにしない。ゾンビは恐竜と仲間にならない。
ああ、くそ。狂っている。
空が青い。
それがとんでもないような奇跡に思える。
ヒュー、ヒューと音が鳴る。風と呼吸の音だ。自分の外側と内側の震え。どちらが醜いかは、言うまでもない。
呼吸が死ぬほど辛い。死ぬほど辛い。でも生きている。
クソが。辛い。クソが。痛い。
青空の雲が緩やかに動き、流れていく。
自分も緩やかに動き、起き上がった。
体を緩慢に動かし、歩き出した。
「体が、熱い…。」
頭が痺れる。
「ムシャクシャする…。」
イラついて仕方がない。
「クソが……、くそがくそがくそがっ…。」
ああ、気が狂いそうだ。もう、狂っていた。
「クソッ…」
フラフラと歩き続ける。
足は自然と、廃墟の中で唯一原形を留めていた、教会のような建物へと向いていた。
崩れかけた階段を上がり、ひび割れた正門を潜る。
幾筋もの細い陽の光が、天井の明かり窓から斜めに差し込んでいる。
その光の幕の先に、あの悪魔がいた。
清らかな空気の中で、あの悪魔があの笑顔を浮かべていた。
奥に置かれた厳かな台座の上に腰かけ、細い足を裸足はだしで投げ出していた。
染み一つない、滑らかな白い肌。山吹色に近い、きめ細かな金色の髪。触れれば壊れてしまいそうな華奢な体躯。深く、鮮やかな碧い瞳。
「………………………お、おおっ」
デイルと名乗った、人間の少女の形をした、美しい悪魔は何も言わず。
俺を見詰めて、ただ、さらに笑みを深くした。
悪魔は笑っていた。笑っていたのだ。
「おぉっ……!!!」
自分の中の何かが壊れた。箍が外れるどころではなく、脳が破裂するような感覚すらした。
それから先のことは、よく覚えていない。
煮え滾る衝動のままに、湧き上がる欲望のままに――右腕を失っていたことを思い出し、仕方なく左手で――力任せに目の前のモノを引き摺り倒した。
それは確かだ。自分がしたことだ。そして――
――臭いと、怒りと、生命の歓び――そう、歓喜だ。生き延びたことの安堵と、途方もない達成感が弾けた。
悪魔は、笑っていた。俺は確かにそれを見た。
一切、抵抗らしい抵抗をせずに。
それどころか、時折、片腕のたどたどしい動きに合わせて妙に優しく手足を絡めてきたり、体勢を変えたりするのが無性に腹立たしかった。
そして俺は。この時の俺は。四十余年を生きてきて、最も強烈な――を味わった俺は――
ずっと、歯を食いしばっていただろうか――
「悪魔め。」
日が昇る。夜の帳に隠された淫靡な霊堂が次第に露わになっていく。
「とてもよかったでしょう?」
罵倒になり切らない、再会して最初のまともな言葉を聞き、汚れた悪魔が満足げに応える。
「命がけの戦いと、沸騰した血肉の交歓。
絶対的な死の恐怖を味わい、全力で抗い、勝利を得た後の、力任せの交わり。」
汚れた俺は無言でその言葉を受け止める。
「生まれて初めての、とびっきりのエンターテイメントだったでしょう?
別に答えなくても分かるわ。日が暮れても、月が昇っても、尽きることのない精を受けたもの。
ふふっ、一晩ぐっすり眠れるくらい、本当に楽しめたみたいね。」
「…ああ、よかったさ。とびっきりな。」
答えなくても、と言われ、反抗するように肯定した。
こんなに熟睡できたのは久しぶりだ、とまでは白状しなかった。
「ふふっ、喜んでくれてよかった。」
そんな返答を聞き、悪魔は嬉しそうにした。
「古来、屈強で精悍な男たちがこうして生の喜びを得ていたものよ。あなたがいた国は、平和になり過ぎたの。」
「知っているさ。身に染みてる。ずっと、その平和を享受してきたんだ。それでも…」
「それでも?」
「そんな簡単に、言ってくれるな。」
俺が吐いた愚痴を聞き、悪魔は美しく笑った。
「あなたは悪魔の試練に打ち勝ち、生き残ることができた。」
悪魔は告げる。
「ここで短い冒険を切り上げて、極上の経験を脳裏に刻んだままあの平和な国に帰ることもできる。
あっちの体は無事なままだから、何の支障もなく普段の生活に戻れるわ。」
「そうか…。…なあ、ここは、現実か?
ここは…」
「ここも、現実よ。あなたが生まれた世界の、隣の宇宙。そしてこの場所は、邪悪な魔法使いに襲われて全滅した哀れな人間たちの小さな王国。
私が来た時にはもうああなっていたから、あなたが誘いを受けなくても結果は変わらなかったわ。」
「…そうか。」
「それで、どうする?」
返答は、しなかった。
渇いた草原を貫いていた道は、滅びたこの小国が終点だった。
だから、道の反対方向を目指すことにした。
空は快晴。こんな世界でも青空が広がっていることに、改めて不思議な思いを抱いた。
「どうしてついてくるんだ?」
「あら酷い。」
何も言わずに出立した俺に、何も言わずに同行した悪魔は微笑んだ。可憐に。
「いいでしょう? お互いに得をする…、そう、ウィンウィンの関係なんだから。」
まるで、人間の少女のように。不思議と、その時に悪魔らしさは微塵も感じなかった。
「いつでも、好きなように抱いていいのよ? いつか、死んでしまうまでね。」
「言っておくが、俺はそんなに小さくて細い体には欲情できない。昨日のことは、例外中の例外だ。」
「まあ!
押し倒した女の子に向かって、言うに事欠いて!
酷い人…。でも、血肉湧き踊ったら、また獣になっちゃうんでしょう?」
「…俺のことはどうでもいい。お前みたいな見てくれのいい女子が野外をほっつき歩いていたら碌な目に遭わないんじゃないか?
この世界の人間の性癖と倫理感がどの程度のものかは知らないが。」
「ふふっ、心配してくれるのね。優しいオジサマ。」
「優しい? こんな人間が? あんなことをした俺がか?」
「ええ。だって、している時に殴ったり首を絞めたりしてこなかったでしょう?
十分に優しいわ。」
「……。」
目の前の悪魔は、屈託なくニコリと笑った。笑ってみせた、のだろうか。
短くない時間が過ぎ、少なくない風が吹き、どこかの道なき道で。
「悪魔の奸計だとしても、遊びが過ぎる。
つまり、お前にとって、これは単なる余興なんだろう? 違うか?」
「そ。こう見えて、私は勤勉なのよ。でも、悪魔としては問題になるくらい貯金が溜まり過ぎちゃって。
それで、休暇中の丁度いい遊び相……、パートナーを探してたの。
ほら、言うでしょ。旅は道連れ世は情けって。」
「お眼鏡にかなった、と。光栄なことだ。」
「ええ。判断力も精神力も、性格も文句なし。
アンニュイな抑うつ加減も、捻くれたジェントルマンな所も、すごく私好みよ。オジサマ。」
「減らない口だ。…腹が空いたな。」
「はい、どうぞ!」
「リンゴか。…ありがとう。」
「どういたしまして。あんなに悪しざまに言っていてもお礼が言えるなんて。やっぱりあなたはいい人ね。」
「待て。どこから出した。服の中をまさぐっていたようには見えなかった。」
「ふふ、目ざといわね。便利でしょ。体の関係だけじゃ申し訳ないから、荷物持ちもしてあげる。」
「…バッグがいらないのなら、確かに便利だな。それも魔法か。」
「特上のね。でも、生身の体じゃ今のオジサマよりも弱いから、ちゃんと守ってね。
この新品の体を作るのに貯金をたくさん使っちゃったから、死んじゃったらそこで休暇はおしまい。また悪魔の仕事に戻らないと。」
「結局、足手まといの賑やかしなんじゃないか。…道中、言うことを聞いてくれるならな。」
「分かったわ。今後ともよろしくね、ご主人様。」
「押しが強すぎだろう。」
「ふふっ。できるだけ長く楽しみましょ。たくさん、長生きしてね?」
「…ところで、このやけに生白い体のことなんだが。」
「あら、やっと気づいた? はい鏡。」
「…なんだこの造形は。モンスターか?」
「こっちじゃ割とメジャーな白豚族。」
「白豚…。」
「愛嬌があって私は好きよ。タフだし、性欲旺盛だし。」
「……。」
「ちなみに、今の私は不老長寿の麗人族。この体形で成人だから、優しく可愛がってね。」
「……。」
また、いつかの夕暮れに。
「片腕のままだとどうしても不便だな。どうにかできる魔法はないのか?」
「もちろん。それなら魔導義手か、再生の魔法ね。どっちも『楽園』で手に入るはずよ。」
「楽園、か…。こんな世界で楽園と呼ばれるなら、さぞ楽しいところなんだろうな。」
「それはもう。この『魔界』で、絶滅寸前の人間の唯一の大都市だもの。業と狂気の坩堝よ。人間と魔法で可能なことの全てが集まってる。そして、奇跡も。」
「そうか。」
「とはいっても、私も実はそんなにこっちのことは詳しくないの。生まれ故郷ではあるけど、ずっとあっちでお仕事をしてたから。」
「…いや、そのくらいの解説でいい。未知が残されているのは、楽しみだ。」
「そう。ふふっ、ご主人様が楽しそうでよかった。」
「じゃあ、その楽園まで、案内を頼む。デイル。」
「喜んで。ご主人様。」
赤い地平の一点を目指して落ちる夕日に向かって、俺達は進み続けた。
異世界は確かな形を持ち、豊かに色づいていた。
望んでいた全てがあった。全てが――
まだ連載途中ですが、感想と評価をお待ちしています。