エピローグ
「そう……ドイチュラントが降伏したのね」
「ええ、今日の正午にドイチュラントのラジオが報じました」
ミュンヘン城のとある一室。
女王ミリアは本を読みながら紅茶を飲んでいた。
かつて黄金に輝いていた髪は白く染まり、かつての面影も無い。
「それで……彼女、総統はどうなったのかしら?」
「自決したと、報じられています」
「そう……ようやく平穏が訪れたわね」
「はい、我々の勝利です」
「そんなに喜ぶべきことじゃないわ、勝利自体は。余りにも多くの人が死んだわ。略奪を禁じていなかった共和国同盟軍によって多数の民間人が嬲り殺しにされたとも聞くしね。」
「……ですが、今この時は素直に喜びましょう」
「そうね……エーミールを呼んできてくれるかしら」
「はい、今すぐにでも」
従者が部屋を出て宰相を呼びに行く。
そしてミリアは少しばかり紅茶を口にして、ふっと息をはいた。
共通暦943年5月7日、ドイチュラントは遂に無条件降伏した。ドイチュラント=ポーレン戦争及びドイチュラント=バイエルン戦争、後に世界大戦と呼ばれることになる戦いが終わったのだ。
こうして世界には再び平穏が訪れた。しかしその代償は余りにも大きなものであった。
双方合計しておよそ1300万人もの軍人が命を失い、市民も合わせると2000万人以上が命を落とすことになった。また共和国同盟の大陸領土やドイチュラント領土は戦火によって滅茶苦茶に破壊され、ドイチュラント首都ベルンに至っては同盟軍の略奪により多くの物が奪われ、壊された。勿論人間、特に婦女子もその対象であった。
しかし、平穏の訪れを人々は確かに喜んだ。戦勝国の各地では戦勝パーティーが行われ、敗戦国の人々は絶望の下にありながらも僅かな希望、そして喜びを感じていた。
共通暦945年、ある少女は旧SPRSS幹部を支援する地下団体を設立した。その名もODESSA、Organisation der ehemaligen SPRSS-Angehörigen(元SPRSS隊員の為の組織)の略称である。これを組織した少女については殆ど分かっていない。しかし、生涯誰にも本名を言わず、ミリアと名乗ったそうだ。そして生涯ある封筒を懐にしまっていたとも言われている。
共通暦947年、ドイチュラントの片田舎である夫婦が誕生した。新郎は元戦車兵のアウレール、そして新婦は元従軍看護婦のエミーリアであった。彼らの出会いは戦死したとあるエースが彼らの共通の友人であったことかららしい。彼らは2人の子を設け、亡くなるまで仲睦まじく暮らしたという。
共通暦952年、この年にミュンヘン条約が結ばれ、正式にドイチュラントの戦争は終結した。こうしてドイチュラントはバイエルン王国及び共和国同盟の占領統治から解放され、新たにドイチュラント共和国として歩み始める事となった。
またこの年、ドイチュラントである小さな貿易商が開業した。創業者である女性の名はエヴァ・ブラウンといい、元将官であった父の財産を元に始めたという。この商店は後にドイチュラントを代表する貿易会社となるのだが、それはまた別の話である。
そして共通暦961年、バイエルン王国女王ミリア1世が崩御する。享年71歳であった。彼女は前年に恋人である宰相エーミールを亡くしており、失意の中での死であったという。
国民は王国を築き、2度の戦争のから国民を愛し、守り続けた偉大なる女王の死を深く悲しんだ。また後継者のいない彼女の遺言によりバイエルン王国は共和制へと移行する事になり、2年後の共通暦963年にバイエルン共和国が成立した。
こうして長い平和が訪れた。
しかしそれはいつか終わってしまうのものなのだろう。
なぜなら、人は憎しみ合いを止める事が出来ない愚かな生き物だから。
今はただ、それが水面下で行われているだけなのだ。
ただ、私は今の平穏しか望まない。なぜならこれからの平和はこれからの者たちが守り抜くべきモノなのだ。
しかし、彼らにはこう伝えたい。
平和な時というものは、大切なのであると。
僅かな平和の時は永遠にも等しい混沌の時に勝るのだと。
この言葉で、この戦記を締めくくるとしよう。
共通暦 999年 ××××
ようやく処女作が完結しました……
内容がブレブレだったり、盛り上がりが無かったりするような出来となってしまい、まだまだ不満な箇所はあるものの、いったん完結させて頂きます。
ここまでお付き合い頂き有難う御座いました。
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