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49.邂逅

「ここが総統官邸か、立派な建物だが……」

官邸の周りには爆撃で壊れた建造物がちらほらと見られる。

「……終わりも近いな」

「ヴォルクマン中尉、何をしているんですか。早く来て下さい」

案内の若い女性兵士が困惑した顔で言う。

「わ、分かってますから……はぁ」

エルンストは緊張した面持ちで中へと歩き出すのだった。



共通暦942年7月25日、エルンスト=ヴォルクマンはドイチュラント首都ベルンにいた。彼はティチンの戦いの功績により総統より直々に勲章を授与されることとなったのだ。今までに彼は何度もSPR党本部へ呼び出され勲章を授与されたことはあるものの、総統と直接会うのは初めてだったのだ。

彼はやや緊張しつつも、感情を何とかコントロールして官邸内の廊下を歩いていた。

「まずはこちらの部屋へお入りください、ボディチェックを行います」

「了解っと」

案内に従って部屋に入る。

するとそこには複数の女性兵士が待機していた。

「ではこれよりボディチェックを行います」

「えっと……君たちがするのかい?」

「……そうですが?」

彼女らは不思議な顔できょとんと首を傾げる。

「この兵士たちは総統より直々に警護を命じられた者たちです。安心してください」

「いや、そういう問題じゃ……仕方ないか」

エルンストは邪な感情を抑えつつチェックに臨んだ。



「ふぅ……やはり女性にべたべたと触られるのは苦手だな」

汗を少したらしつつ、エルンストはなんとか立っていた。

「では間もなく総統がいらしますので椅子に座ってお待ちください」

「えっと……立った方がいいですよね」

「いいえ、総統は来客者を疲れさせることなどお望みではありません。ですので座ってお待ちください」

「分かりました」

「では私たちは退室します。総統は……いえ何でもありません。では」

「えっ、ちょっと……」

エルンストの声は無慈悲に締まる扉の音に掻き消された。



何分程待っただろうか……いや実際は一分も経っていないのかもしれないが、エルンストはあまりの緊張故にまだかまだかと感じていた。

「本当に総統が来られるのだろうか……これは罠では無いのか」

「何がだい?」

エルンストが思わず呟いた瞬間、後ろから女の声がした。

思わず振り向く。


そこにいたのは。


美しい金髪を靡かせながらも。

唇は乾き青色になり。


目元の皴は深く刻まれ。


顔を土気色に染めた。


やつれ切った顔の。


総統ミリア、その人であった。


「初めまして、ヴォルクマン中尉。よく来てくれたわね」

彼女は弱々しく微笑んだ。



「紅茶をどうぞ」

「そ、総統……ありがとうございます」

「そこまで緊張しなくていいじゃないの、ね?ミリアって呼んでいいのよ?」

「いえいえ……私なんかには恐れ多い」

「ここに来る人は誰もがそう言うわね……まあ仕方無いのだけれども」


ミリアは一口紅茶を飲む。

「貴方の噂はずっと前から聞いていたわ、戦車殺しさん」

「光栄でありますっ!」

「ほらほらそんなに固くならない、で今日はそんなあなたにプレゼントよ。ほら」

そういうとミリアは手元のケースを開く。そこには鈍い光を放つ十字があった。

「ええと、柏葉剣付騎士鉄十字勲章……だったかしら。貴方に授与するわ」

「えっと……」


呆然とするエルンストの胸元にミリアは勲章を付ける。

「これで勲章の授与は終わりね……こんな形でごめんね?」

「いえ……光栄です」

「じゃあ、少しばかり私のお話に付き合ってくれない?折角だから」

「えっ……私がでありますか?」

「そうよ、それに君にも聞きたいことは沢山あるもの」

「わ、私でよければ……」

「そう、それは良かったわ」


エルンストは断る訳にもいかず、ミリアの話を聞くことにしたのだった。


久しぶりの総統ミリア

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