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45ページ目「語られた真実。」

ヴィンセントの形を成したそれは、未だに安定せずぐじゅぐじゅとうごめいている。

「あまり時間がないのでな……」

ヴァームは即座にヴィンセントに向かって駆け出した。

短期決着を狙うつもりらしい。

しかしヴィンセントは、ヴァームが近付いたことに気づいているハズなのにピクリとも動こうとしない。

ビュッ!

ヴァームの鋭い拳がヴィンセントに目がけて放たれる。

ゴッ!

その一撃は思いの外たやすく直撃した。

だが、拳から伝わる違和感がヴァームに勝利への確信をもたらさなかった。

確かに拳は顔面に直撃している……

ヴァームは思い切り殴ったつもりだった。

しかし、ヴィンセントはピクリとも動かない。

その上、ヴァームの拳は徐々にヴィンセントの顔に呑み込まれていくではないか。

「ッ!!」

ヴァームはすぐに拳をヴィンセントから引き抜いた。

「ヴァァァァァァァッッ!!」

ヴィンセントは突然奇声を発すると、ヴァームに飛びかかった。

ヴァームは素早く反応すると、ヴィンセントの腹部に思い切に右拳を突き出した。

ドゴォッ!

確かに直撃はしている、だがヴィンセントは仰け反る様子もなくヴァームの腕を両腕で掴む。

「な………ッ!?」

引きずり込まれている。

ヴァームの身体は徐々にヴィンセントの中へ引きずり込まれていくのだ。

ゴッ!

ヴィンセントの腕に左腕でアッパーを喰らわせる。

今のヴァームの力なら腕などたやすく折ることができる。

だが、ヴィンセントはやはり反応を示さない。

「兄さん、ヴィンセントと1つになるのよ……。大好きな彼と大好きな兄さん。これで2人とも同時に傍にいられるわ」

狂っている。

今の死霊使いの目は何も見えていない。

完全におかしくなってしまっている。

「このままではまずいな……私も、リーナも……!!」

「ヴィンセント……。兄さん……」

まるで天国にいるかのような表情である。

「聞けェッ!!リーナッ!!この男は…………ッッ!!!!」

ヴィンセントに抵抗しながらヴァームが必至に語りかけるが、死霊使いはまるで聞こえていないかのようだった。

「この男は……!!元々人間じゃないッッ!!」

「ッ!」

今まで何の反応も示さなかった死霊使いがやっと反応を示した。

「コイツは最初から霊化していた……!元々死人だったんだよッ!!」

「………」

死霊使いはしばらく沈黙すると、ニヤリと笑った。

「知ってたわよ。そんなことくらい」

「な……ッ」

「そんなヴィンセントと恋仲にあった私を心配して彼を徐霊した。そんなところでしょう?」

「知ってて何故……ッ!?霊化した存在は何をしでかすかわからない…!今のお前ならわかるハズだ…!!」

不意にピタリと、ヴィンセントの動きが止まる。

「だって仕方ないじゃない……」

ホロリと、死霊使いの頬を涙が伝う。

「好きだったんだから……霊とか、そんなの関係なかった……」

ヴィンセントの姿が消え、その場に死霊使いがドサリと崩れる。

「わかってた……私が間違っていたことも、兄さんが私のためにしてくれたことも……」

泣き崩れる死霊使いに、ヴァームはよろよろと歩み寄り、抱き締めた。

「すまなかった……」

ヴァームがそう呟いたその瞬間だった。

ゴポッ!

ヴァームの口から大量の血が流れる。

「兄さん!?」

ドーピングを使い過ぎたみたいだ……。これは副作用だ」

徐々にヴァームの意識が遠のく。

「しばらく…休……」

「兄さんッ!!」

ドサリと、音を立ててヴァームはその場に倒れた。





英輔達が扉を開けると、その先は螺旋らせん階段であった。

見る限り相当な長さだろう。

「この上か……」

「恐らく次が最後の部屋だろう」

そう言うとすぐに階段を上り始めた。

「あ、おい待てよ!」

先へと進んでいくリンカを、英輔は急いで追いかけた。

しばしの沈黙。

英輔達は黙々と階段を上った。

ほんの数分の沈黙だったのだが、英輔には非常に長く感じられた。

自分の前を淡々と進む少女。

あの日、あの時出会ってからどれだけの時間が過ぎただろう。

もう見慣れたハズの彼女の背中。

そしてこれからも何度でも見られるハズの彼女の背中が……

何故か妙にはかなく見えた。

「な……」

「英輔」

沈黙に耐えきれず、話かけようとした英輔より少しだけ早く、リンカは英輔の名を呼んだ。

「な、何だよ」

「恐らく、コレが最後の戦いになる」

「……そうだな」

「この戦いが終われば、私はあちらに帰ることになる」

「……え」

ピタリと、英輔の足が止まる。

それを察するかのように、リンカの足も止まった。

「元々私の目的は星屑の壊滅だ。それさえ完了出来ればこちらに居続ける理由はない」

正論である。

「リンカ………」

「もし……もしもだぞ……」

リンカがこちらを向き、真っ直ぐに英輔と向き合う。

「もし、この戦いが終わるまでに私に覚悟が出来たら……その時は…」

「おま、おま……お前に……」

「リンカ……?」

うつむき、くりくりと髪の毛をいじるリンカ。

「お、お前に……お前に少しだけ話があるから覚悟しておくがいいっ!!」

「……は、はい」

そしてすぐにリンカは英輔に背を向けた。

「帰らなければならないとわかっていてもだ…。私は、私はお前に帰る前に伝えなければならないことがある…」

「……」

英輔は軽く微笑むと、一歩だけリンカより前に出た。

「ああ、わかってる。その時はちゃんと話を聞くよ。だから…」

そして今度は英輔が振り返り、リンカと真っ直ぐに向きある。

「この戦い、絶対に勝とうな」

英輔の言葉に、リンカは顔を真っ赤にしながらうつむいた。

「わ、わかっている……。お前なんかに…言われなくてもな……」

「そうだよな」

そう言って英輔はニッと笑い、リンカに背を向け、前へ進んだ。



それから進むこと数分。

英輔達は1つの扉の前にいた。

中に入る前から伝わる威圧感。

この先に、最後の戦いがあることを英輔達は本能的に理解した。

「行くぞ」

「ああ……!」

リンカは、ゆっくりと扉を開けた。



To Be Continued

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